仁比聡平議員(共産)質疑後半 2024年4月25日参議院法務委員会
前半の続きです
仁比議員
2011年の改正というのは極めて不十分、中途半端なものでした。後に削除されましたけど、当時子の利益のためと言いながら、懲戒権の規定は削除されませんでした。依然として子どもを親の付属物のように捉えるという、そういう認識がこの2010年以降の時期にもですよ、この基本法の改正を阻んだわけでしょう。
実務では、その後の時期に家庭裁判所において原則面会交流と呼ばれる、そういう取り組み、運用が行われて、この今回の法案に対しても、多くの方々から、この裁判所の実務によって、運用によって傷ついた、傷つけられているという声が寄せられているわけですね。その上に立って今回の改正案を提出されているわけです。
にも拘わらず、子の利益とは何かと何度聞かれても、今のいろんな場合があるという答弁しかできないのかと。逆に大臣聞きますけども、改正案の趣旨として何回もおっしゃっているでしょ。
「適切な形で子の養育に関わる。そのことで子の利益を確保する」って言うじゃないですか。適切な形でって何も言ってないのと同じでしょ。
不適切な形で関与しちゃダメなのは当たり前じゃないですか。
子の利益を実現するために、何が適切なのかを語らなければ意味がないじゃないですか。極めて抽象的な規範を新たに作って、極めて厳しい指摘がされている。
裁判の運用で合意をしていなくても共同親権を定め得るということにしてしまったら、そうしたら新たな危険が起こるじゃないかと、不安が広がるの当たり前じゃないですか。
適切な形の関与っていうのは、これ一体何のことを言っているんですか?
小泉法務大臣
子どもの利益でありますけども、これは漠然としているというご批判はありますけども、しかし、あらゆる場合に子どもの利益、様々な場面で様々な形で考えられる子どもの利益を、我々は勘案しなければいけない。
そして多様な家族の形にもできる限り沿ったような形をとりたい。
そういう考え方で法律を構成しているわけであります。
ですから子どもの利益というのは法律用語ではないんですけど、子どもの幸せです。子どもの困難を少しでも減らすこと、子どもの幸せを少しでも増やすこと。これはみんな親になった方々は、子に対して同じ思いを当然持ってらっしゃると我々は思うわけであります。子どもの利益が何かわからない親はいないと思うんです。
そういう意味で法律用語にはできませんけども、子どものそれを子どもの利益という言葉で表しているわけであります。
仁比議員
子どもの利益がわからない親はいますよ。だから虐待が大問題になっているんでしょ。
本会議でも申し上げたけど、大臣の家族間はそれはそれでいいですけども、それで法律を作ることはできないじゃないですか。(小泉法務大臣の場外発言有:よく聞き取れない)
え?そうおっしゃるから聞きますけど、子どもの利益をわからない親はいない。先ほどのその答弁、撤回されますか。
小泉法務大臣
一般的に申し上げてます。もちろん一人もいないということではない。
仁比議員
一般的な話を申し上げているって、大臣が責任をもって今提出して議論しているのは、一般的な法律でしょ。全ての国民に適用される基本法じゃないですか。その基本法を作るにあたって、子の利益とは何かという問いにね、きちんと法制審以来議論されてきた確立した答弁メモがないのはわかりますよ。だから答弁しづらいのはわかる。
けれども、大臣の思いとして子どもの利益がわからない親はいないなんていうことを立法趣旨として残すわけにいかないじゃないですか。
民主局長、子どもの利益がわからない親はいない。それが適切な関与が子の利益と。そういう趣旨ですか。
法務省民事局長
何が子にとっての利益であるかということは、その子の置かれた状況、あるいは生育環境等によると思われますので、一概にお答えすることはなかなか困難ではございます。
すみません、繰り返しになってしまって恐縮ですが、一般論といたしましては、その子の人格が尊重され、その子の年齢及び発達の程度に配慮されて養育され、心身の健全な発達が図られることが子の利益であると考えているところでございます。
仁比議員
だから学会から、現在の司法は科学的実証的な視点を軽視していると批判されてしまうのではありませんか。
先ほどこども家庭庁にご答弁いただいた児童福祉法に基づくさまざまな取組と、さまざまな実践現場があって、支援すべき子どもたちがいて、だから先ほどのようなご答弁が積み重なってくるわけじゃないですか。
これまでの離婚の単独親権を共同親権に変えると。
しかも父母間に合意がない場合に、裁判所が定め得るという法案を提出しておられるわけです。ならば、それがなぜ子どもの利益になるのかということを誰にも説得できる形で、そうだと胸に落ちる形で、それは逆に言えば、そういう場合以外は裁判所は定められないんだな、ということが分かる形で答弁し、条文を作らなきゃダメじゃないですか。
それは分からないんですか、大臣。
私はちょっとまず確認しておきたいと思いますけれども、この法案でいう子どもの利益、つまりこれは改正されればですよ、家族法という基本法に、子の利益という言葉がたくさん出てくることになります。
そして、子の利益に反するのか害するのか、あるいは子の利益に沿うのかというのが、親子関係のあらゆる場面、あるいは親権者を定める場面などでこれが規範になるわけですよね。
その規範というのは、私は先ほどご答弁いただいた児童福祉法の2条の理念だったり、あるいは子どもの権利条約、そして子どもの権利条約も踏まえて我が国でも作られた子どもの基本法、こども基本法ですね。今日も3条3項という議論が与党からもありましたけど。
そうしたものと共通するものと考えなかったら、一国の法制度として成り立たないと。だから児童福祉法やこども基本法、そのベースにある子どもの権利条約の指導理念と同様だと思いますが、いかがですか。
小泉法務大臣
概括的に申し上げれば、今おっしゃった民法を含めたご指摘の法律等の規制における子の利益、あるいは児童の利益というものについては、この民法で我々が定める子の利益とはそれぞれ異なる内容のものではない。
異なる内容のものとして定められたわけではないと理解をしております。
仁比議員
定めようとするものでもないということだと思うんですよ。
現行法は定められたものじゃないし、これから定めると提案しておられる改正案も、児童福祉法やこども基本法や子どもの権利条約と合致しているもんだと、共通するもんだと、子の利益っていうのは、つまりこの親権を考えるときの目的だということだと思うんですね。あれこれの要素の一つではありませんよねそういう意味で。
例えば子の意見表明についてですね、大臣は「裁判所が判断をするときの重要な考慮要素の一つ」っていう言葉を使っておられるじゃないですか。
重要な考慮要素の一つっていうのは、あれこれの一つなんですよ。
重要であろうかどうであろうか、子の意思や心情を把握してそれをどういうふうに生かすのか、その場面についてお答えになっているんだろうと思うけれども、子の利益を全うするんだと、これはあれこれの一つじゃなくて、取組全体の、あるいは法そのものの目的ですよね。
小泉法務大臣
子どもの利益を図るということが、この法律の一番の目的であります。
仁比議員
その上でですね、非合意型の共同親権を導入することが子の利益に必要だとする立法事実を示してください、と私は問いました。
これに対して本会議でおそらく初めてご答弁されたようにも思っているんですけれども、次のように答えられました。
「例えば親権者変更や親権の停止、または喪失に至らない事案においても、同居親と子どもの関係が必ずしも良好ではないケース、同居親による子の養育に不安があるために、同居親の関与があった方が子の利益にかなうケースがあり得る」という、この同居親の養育に問題がありそうな時という、こういうケースを挙げられたんですよね。
ちょっとそこでまずこども家庭庁に先に聞きますけど、親と子どもの関係が良好ではないとか、養育に不安があるとかっていう場合は、行政によってどのような支援が取り組まれるか。
虐待が疑われる場合はその調査や評価、一時保護などの取り組みがもっぱら児童相談所において行われると思うんですが、いかがですか。
こども家庭庁審議官
ご指摘のような事例、つまり家庭における養育などに不安が大きい場合を含めまして、保護者による養育を支援する必要がある場合においては、市町村における子ども家庭センター、これは令和4年の児童福祉法改正の施行で制度に位置付けられたものでこの4月から施行が始まって、センター全国展開を目指して各市町村に設置を進めていただこうとしているところではございますけれども、この家庭センターで個々の家庭の状況に応じたサポートプランを作成して、そのプランに基づいて家庭支援事業などによる支援を行っていくと考えております。
子どもへの虐待を疑われる場合の家庭に対する調査でございますけれども、もっぱらと児童相談所のみということではなくて、市町村においても行われるものではございますけれども、結果として親子分離が必要と考えられるような場合には、児童相談所において一時保護でございますとか、施設入所などの措置を行うと、そういった流れになってまいります。
仁比議員
ありがとうございます。
で、民事局長、という取り組みが制度上、あるいは実際に行われている中で、この親権者変更や親権の停止、また喪失に至らない事案において、同居親の関与があった方が子の利益に適うケースというのがどんなケースなのか、というのが私ちょっとよくわからないんですけれど、どういう場合を言うんですか。
法務省民事局長
本改正案では、裁判所は離婚後の親権者について、親子の関係、父母の関係、その他一切の事情を考慮して実質的総合的に判断すべきこととしておりまして、父母の合意がないことのみをもって父母双方を親権者とすることを一律に許さないものとはしておりません。
そして、父母の合意がないにも拘わらず、共同親権とすることが子の利益にかなう場合があるか否かにつきまして、法制審議会家族法制部会における調査審議の過程では、同居親と子どもとの関係が必ずしも良好ではないケース、同居親による子の養育に不安があるために別居親の関与があった方が子の利益にかなうケースがあり得る名の指摘がされたところでございます。
これらのケースがどのようなものかというお尋ねでございますが、例えば、同居親と子との関係が必ずしも良好でないために別居親が親権者としてその養育に関与することによって、子の精神的な安定等が図られるケースや、同居親の養育の状況等に不安があるが、児童相談所の一時保護の対象になるとまでは言えないようなケースについても、これに当たり得ると考えております。
仁比議員
今のご答弁だとあれですか?児童福祉法上の取り組みにはあたらないような場合、見守っておきましょうみたいな、そんな場合に、父母間で合意がないのに、裁判所が同居親の養育についてこれではダメだとか、良好ではないとかっていうような評価をして、別居親との共同親権を定めるみたいな、そんなことになるんですか?
なんだか、具体的にどんな場合がどんな評価、アセスメントに基づいてされるのかということが、なおなお分からないんですね。
例えば、様々な状況で傷ついている子ども、児童を診療している精神科のドクターの皆さんいらっしゃいます。
先ほどの学会の声明もそういう積み重ねで出てきていると思いますけれども、先日、院内集会での私どもの発言を受けてメールが寄せられまして、診断書で「加害親から子どもを守っていただきたい」という意見書を裁判所に提出しても、それが役に立つという実感もありませんという言葉なんですよ。
ある同僚の児童精神科医師からは、法の領域に入ってしまうと守ってあげられないという話を聞いたり、また別の医師からは、診断書に記載したのに今も結局加害親との関係性を続けるように裁判所からの指示が出ているという話を聞いたり、カンファレンスでは別の担当者の児童が加害親との面会交流を継続することを裁判所から指示され続けていて、児童の具合が悪くなっているという症例が報告されたことがある。
何に基づいて、裁判官あるいは調停委員会が、父母も合意をしてもいないのに共同親権、別居親の親権者としての関与がふさわしい、子どもの利益になるというふうに判断するのか、そこがおかしいじゃないかという指摘が数々吹き上がっているんですね。その点を今回の法案提出においてどう検討されたんですか、あるいは検討していないんですか。
今の裁判所に対するこうした批判を、民事局長はどう受け止めるんですか。
法務省民事局長
裁判所は、離婚後の親権者につきまして、親子の関係、父母の関係、その他一切の事情を考慮して実質的・総合的に判断すべきこととしておりまして、家庭裁判所において必要に応じて家庭裁判所調査官を利用して、子の意見意向や生活状況等を把握することも含め、適正な審理がされた上で判断がされるものと承知をしているところでございます。
仁比議員
引き続き議論していかなきゃいけません。
時間が参ろうとしているので、文科省に一問お尋ねをしておきます。
今日も高校授業料無償化の支援に関わって様々なご議論がありました。
先ほど公明党の伊藤議員からご質問があった件は、私もよく咀嚼してみたいと思っているんですけれども、そもそもお尋ねしたいんですけれどもね、私の本会議に対する答弁では、「親権者が2名の場合であっても、一方がドメスティック・バイオレンスや児童虐待等により就学に要する経費の負担を求めることが困難である場合には1名で判定を行うという、それは共同親権となった場合でも同じだ」という答弁をされているじゃないですか、大臣が。大臣は基本一貫してそう答えているわけですよ。
ということは、離婚後共同親権になる場合に、DVやあるいは虐待によって大変になる場合があるんだと、そんな説明を法務省から受けてきたんですか。
文部科学省大臣官房文部科学戦略官
今般の民法改正案におきまして、裁判所が必ず父母の一方を親権者と定めなければならない場合の例として、虐待等の恐れがあると認められるときと、DV被害を受ける恐れのある等の事情を考慮して父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるときを挙げており、子への虐待への恐れやDV被害を受ける恐れがある場合には、父母双方が親権者と定められることはないと想定されると認識しております。
ご指摘の答弁につきましては、現行制度において親権者の一方の収入により判定を行う収額に要する経費の負担を求めることが困難である場合の例として、ドメスティック・バイオレンスや児童虐待等を挙げたものでございます。
仁比議員
つまり、現行婚姻中は共同親権なわけですよ。
その婚姻中の今の家族が、DVや虐待によってそうした状態に陥るということがあるわけで、そのときにはそういう対応をしています、ということだけだと。
ということはですね、離婚後共同親権という新たな関係を創設しようとしておられるにも拘わらず、そのときの家族の問題状況というのがどんな状況になるのか、前回の質問のときにも申し上げましたけど、私そうした葛藤状態にある、例えば中学校3年生の受験生がですよ。自分は高校に行けるんだろうか、とか、受業料免除、無償化ということを聞くけど、自分は受けられるんだろうかと思っても相談するのはなかなか大変なことだと思いますよ。
あるいは学校の先生がこれだけ多忙を極めている中で、全ての子どものそうした状況に気づいて相談に乗ってあげるような余裕が果たしてあるのかと、それは文科省の現場の問題として大きな課題だと思うんですよ。
ところがそうした中身の、つまり子どもをちゃんと中心にした協議は行われてないってことじゃないですか。
そしてこの高校受業料無償化の問題のみならず、様々な支援策、少なくとも給付に関して28件ある。それから、親の同意や関与というのが規定されている法令というのはもっとたくさんある。それらについて今のような議論しかできていないで、法案提出しているんじゃないか、と、私は厳しく指摘をしているわけです。
これをすべて法務省の責任において、あるいは政府全体の責任において、この委員会に提出してもらって、それぞれの運用基準や課題が何なのかということを、ちゃんとこの法務委員会として協議すべきだ、というふうに思います。
これは取り図らっていただきたいと思いますが、委員長いかがでしょうか。
参・法務委員長
ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議いたします。
仁比議員
今日は終わります。
質疑を重ねるにつれ、思った以上に小泉法務大臣の家族に対する迷言が
飛び出してきてカオス。。
きっと幸せなご家庭にお育ちになったんでしょうねえ。
文字起こしは以上です。
誤字脱字がありましたらすみません。
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