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「『声優志望だったんだな』と見てる人に気付かれないようにセリフを喋ってみてください」

大変おこがましいことに、ここ2年はオーディションで自劇団の出演者を決めさせていただいている。
最近はわりとすぐ野球の紅白戦をランナーコーチ付きでやれちゃうくらいの人数が集まってくださったりしており(わかりづらい)、恐縮する限りである。

基本的に「告白してくれた人は皆好きになる」みたいなところがあるし、
そもそも「家の中か野外」でしか公演をやらない謎の集団である我々を面白がってくれて応募いただいた段階で是非是非、って感じではあるので、比較的合格のハードルが低めな劇団ではあるが、それでもキャストのバランスだったりお芝居の相性的なところでご縁がない場合もある。

オーディションなんて一人につき1時間も見れないような時間で、
イイ感じにできそうかどうかを判断する必要があるので、
何回かやった段階で、見る点を下記2点に絞っている。
(今年のキャストは決まってて、しばらくオーディション無いし細かく書いちゃうぞ)

①「情報量」が多いか
②「セリフを大声で棒読み」ができそうか

①については演技における音声と身体の使い方以外でも「たたずまい」だとか「雰囲気」みたいなとこも入ってくるので、先天的な部分もあるが、要は「その人が在る」という状態が、どれだけ観てる人及び一緒に演じてる人の想像力と創造性を生むか、というところ。

空間なり存在が持ってる情報量が大きければ大きいほど、物語も会話も広がっていくと思っていて、空間の方は「リビング」という具象の究極みたいな家公演、最低限の幕のみ青天井で生活と完全にシームレスな野外公演と、共に情報の洪水みたいな場所でやるので、役者もそれに負けないようにいてほしい。

ここまでの書き方だとだいぶニュアンスで難しい気がするかもだが、「普通」でいてくれたら十分だ。「普通」にさえいてくれたら観てる人も舞台上の他の役者も勝手に色んなことを考えて意味づける。「周囲による勝手な意味付け」で役者は成立すると思っているので、起きていることに素直に直面してくれれば自ずと「情報量」は増えていく。

だから実技の前に僕らが劇団や次の公演の紹介をしている時の相づちの打ち方、みたいなところから見えることもあって、「あー色々咀嚼して受け取ってくれてるのかな」という人と「「聞いている」をやっちゃってるな」という人がはっきり分かれたりする。後者は「記号」を見せてるだけなので情報量としては平面的で少ない。
演技になるとそれがさらにはっきりするが、
演技だと急に身体性を獲得して「情報」が豊かになる人は凄い面白いし、その逆もいたりするので、オーディションはそれを見るのが凄い楽しい。

②についてはほんとそのままで、僕は

「ただ大きな声で棒読みして意味が伝わる」人が最強だと思っている。

①で言ってることとほとんど一緒なんだが、
「意味が伝わる」という状態は、受け手がきちんと考えることで初めて生まれる。
発した言葉を受け取って咀嚼してもらうためには、
大きく棒読みをしてくれるのが一番いい。
そして、①ができてる人は、その前の出来事や対象に対する感情や体の状態が、その棒読みに乗っかるので、勝手にきちんと「演技」に昇華させることができる。

今まで出てくれた人は、①②共にしっかりと見えた人たちだが、
特に本番でそれが見えた人達で言うと、2年前の野外公演「おと鳴り」の高橋奏、本田みのり、昨年の家公演「金星」の木村美月森谷美月、野外公演「イントロダクション」の庄司悠希川村玲於奈Produce公演亀井理沙、殿村雄大あたり(敬称略/見たことない人は急にごめんさい名前だけ覚えて帰ってください。)

しかしセリフの声色や強弱だけで自身の状態を頑張って表そうとすると、それはまた「記号」になり、受け手がそれ以上の情報がつかめなくなる。そして記号化したセリフが共に在るはずの身体と一致せず、ちぐはぐな印象を受け、台本に書いてある言葉の半分も伝わらなくなってしまう。

そしてここでようやく意味ありげなタイトルの話になるが、
僕がオーディションの場で、文面の通り声優の専門学校に言っていた経験があったり、お芝居を始めたきっかけがその方面だったりする参加者の方に対して思う時があって、一回台本読みをしてもらった後にたまにオーダーすることである。
※もちろん「声優志望のヤツが半端に芝居すんな」みたいな不毛な話ではないので先に断っておきます。声は良いほうが良いに決まってるんだから基本的にはアドバンテージに決まってる。

そういう時には、「声で表現している」という状態ではなく、あなたが「ただ在る」とき、どういう体をしていてどういう音が出て、それを観てどういう気持ちに僕らがなるのか、というところを観たいなと思っている。

大抵皆さんいい感じでやってくれるが、たまに「あ…どんな時でもその素敵な声になるのね…?」という時があり、そういう場合は本人にオーダー前/オーダー後の感覚の違いを聞くが、いまいち飲み込めてなかったりする。
そういうときには、今の僕が演出することに不安を感じて不合格にさせていただくことがある。

上記のような書き方にしたのは、今まで書いた全てが、あくまで僕との相性の話なので、こういう人=良くないではないので。

(別にいないと思うけど)めちゃくちゃウチに出たい!とかで無い方は別に深く考えてもらわなくてもいいけども、こういうふうに考えて、演出家は役者さんを見てたりするよ、という一例の話でした。

※ものすごく記録映像なんですが、参考までに過去家公演「金星」と、野外公演「イントロダクション」の動画を挙げておきます。

「初見だし時間もない!手っ取り早く見どころの演出はどこみればいいか教えろ!」という方は、家公演は③の22分0秒辺りから「家とは…?」みたいな派手な仕掛けがあるのと、野外の方は最初の僕の前説と1時間6分5秒くらいからのラストを観てもらえたらいいと思います。


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