笹正宗酒造 特別純米 ささまさむね 濁り酒
商品名:特別純米 ささまさむね 濁り酒
蔵元:笹正宗酒造
代表者:岩田悠二郎氏
原料米:喜多方産夢の香
酵母:福島県夢酵母及び協会18号
精米歩合:60%
度数:15度
日本酒度:-1酸度
はい、再び喜多方市。そして、個人的に大好きな笹正宗酒造さん。必ず酒屋で見かけたら買ってます。期待を裏切らないですね。今回も、酒蔵の社長の姿に迫っていきたいと思います。というのも、酒蔵の場合、社長の考え方1つでほぼ経営が決まるので、酒蔵を理解しようと思うのなら、ずばり、社長(杜氏)がどんな人なのか理解すれば良い、と考えています。高木酒造の十四代はもはや説明不要で十四代そのものがブランドです。しかしながら、その他多くの酒蔵は十四代レベルのブランド力はなく、何となくお店で飲んで美味しい、とかそんなレベルになるわけです。もちろん、飲んで美味しい、という感想だけで十分なんですが、その酒がどのように生まれたのか知ることができればまた味わいも深いものになるのではないか、と考えている次第です。
笹正宗の社長も非常に興味深い人でした。代表の岩田悠二郎氏は8代目。8代目ってだけですごいのですが、経歴的には酒蔵を継ぐ意思をあまり感じません。高校卒業後、武蔵大学経済学部に進学し、卒業後はなぜかコンビニエンスストアに就職しています。セブンかファミマかローソンのいずれかでしょう。そこで大卒の場合、FCの管理などを任せられるケースが多く、そのような業務に従事していたのではないか、と考えます。岩田氏はインタビューにて、会社経営は数字が重要。コンビニであれば日々の経営の数字に強くなり、将来酒蔵を継ぐ上で役に立つ、と考えたそうです。
そもそもの話、岩田氏は酒蔵を継ぐことを想定しておらず、お兄さんがいらっしゃるようで、その兄が酒蔵を継ぐものと思っていたようです。しかし、お兄さんが酒蔵を継がないということを決断し、弟である岩田氏が「俺がやろう」ということで、8代目になることを決心したそうです。
私も次男なので岩田氏の気持ちがよくわかります。基本、長男は家を継いで、次男は家を出る、のが仕来り。でも、長男が家を継がない、ことが決まった場合は弟にチャンスがくるわけです。一方、長男が家を継ぐと決断すれば弟の意思に関わらず長男が家を継ぐことになるのが普通です。おそらく、岩田氏は子供の頃から酒蔵を継ぎたいという気持ちがあったのではないか、と考えます。しかしながらお兄さんの存在もあり、8代目になれるのかどうか、大学進学時点ではわからなかったのではないか、と想像します。
8代目である岩田氏のすごいところは、笹正宗酒造の経営を立て直したこと、にあります。これって、簡単なことのようで本当に難しい話です。同じく8代目で、徳川吉宗という偉人がいますが、彼は享保の改革で有名です。徳川というエリートの家計ですら、たまにボンクラ殿様が出現してお家を困らせます。ゆえに、弱った体制を立て直す、ということは非常にエネルギーが必要だし、意欲はもちろんのこと、緻密な戦略がないと難しいです。
もし、岩田氏が長男として事業を継承できる立場にあるなら、おそらくは東京農業大学で醸造を学んだ可能性が高い、と感じます。ただ、それが不確定の状態にあり経済学部に進んだのでは、と推察します。ただ、何を学ぼうが、結局は「情熱」がものをいうので、紆余曲折あっても、信念があれば困難も乗り越えていくことができる、ということだと思います。
最後に、笹正宗酒造の特徴について。一番の特徴は地元産の酒米に拘っている酒蔵です。ほぼ喜多方産の酒米を使用しています。安い酒米が他県にあっても、それに手を出すことなく地元の酒米を育てている方です。そして、笹正宗酒造の日本酒はけっこう安く買えます。一升瓶で3000円しないと思います。こんなに美味しいのになぜ安い価格で設定しているのか?疑問です。ただ、昨今一升瓶4000円前後が主流になっていくなかで、3000円以下で買える美味しい日本酒は減ってきております。笹正宗酒造は我々居酒屋にとっても貴重な存在です。なお、笹正宗酒造としては日本酒を安く卸しているわけですから、販売店に関しては厳しくチェックしているようです。その選定を適切にすることで良い状態の日本酒がお客様の元に届けられる、という考え方です。素晴らしい!の一言ですね。
以上
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