生存率1%の子を授かった姉と、その姉と子を捨てた男の話
こんばんは。ナオと申します。
普段は台湾に住んでいるのですが、今は埼玉の実家に帰ってきています。
姉がもうすぐ赤ちゃんを出産するので、サポートをしようと帰ってきました。
本日は出産に向き合う姉の姿と、その姉を妊娠8ヶ月の時に弁護士を立てて姉との連絡を断ち切った男の話をします。
たった一人で赤ちゃんの死に向き合う姉の力強い姿を伝えたいと思い、今回記事を作りました。少し長くなるかも知れないですが、お付き合い頂ければ幸いです。
妊娠10ヶ月 赤ちゃんの死を迎える準備を始める
一般的に妊娠10ヶ月ともなれば、家族もお祝いムードになり、生まれてくる赤ちゃんの為にベッドを買ったり、おむつを買ったりと、色んな買い物をすると思われます。
でも、僕たちはそういったものは準備をしていません。
代わりに、赤ちゃんの棺桶を探しています。
今、姉の胎児はポッター症候群という病を患っています。
生まれつき腎臓の機能が無い為、お腹の中で排尿ができません。
排尿が出来ないと羊水は溜まらず、どんどん減っていきます。
今、姉の中に羊水はもう存在しません。
赤ちゃんは羊水を飲んで肺などの内蔵を作るのですが、お腹の中の赤ちゃんは飲む羊水がないため、肺が育たずに生まれてきます。
そして、赤ちゃんは生まれた後に呼吸ができず、99%死に至ります。
これがポッター症候群という病気です。
実際の医師から説明を受けた書類がこちら
※個人情報はモザイクで隠しています。
当院4例 1例も生存例無し
泣いて反応があれば、治療介入の余地があり
人工呼吸器→死
正直、弟である僕でもこの文字を見ると、心が苦しくなります。
肺がなければ、産声を上げることも出来ません。
医師からは、赤ちゃんが産声を上げようとした時に肺が破裂してしまう危険性があるとまで言われています。
今、僕たち家族は、赤ちゃんの死を迎える準備をしています。
産婦人科に行くことをためらう日々
産婦人科には多くの妊婦さんがいます。
その多くは、旦那さんが付き添っていたり、健康な赤ちゃんを持つ母親です。
姉は車の中で「なんで私だけがこんなんなのかね。」と僕に言います。
姉が愚痴をこぼすことは滅多にありません。
普段は仕事がどんなに大変でも文句を言わない忍耐強い姉です。
今回ばかりは、周りの幸せが苦しくさせてしまっているようです。
お腹の中で元気に動き回る赤ちゃん
一方で、赤ちゃんは姉のお腹の中で元気に動き回っています。
実際の姉のお腹の写真
「ナオー今触ってみ」と言われ、恐る恐る触ると、たしかにお腹でグニグニ動いている事がわかります。
医師によると、出産時には3,000gを越えそうな勢いだとのこと。
将来は大きな子に育つ可能性を秘めた子です。羨ましい(´・ω・`)
この記事を書いている今でも、姉のお腹の中で赤ちゃんはすくすくと育っています。
この子がもし生きることが出来たとしたら、おじさんとして何を買ってあげようかと、考えるだけでワクワクします。
未来への不安
姉の出産後の予定はなにも決まっていません。
姉は相手の所に行く覚悟をもって、仕事を辞めました。
姉は美容師です。
なので、今のコロナという状況を考えても、元の職場にすぐ復帰できるかどうかも分かりません。
もちろん、パートナーもいません。
相手の所に行く選択肢は恐らく無いでしょう。
もしも今後パートナーができたとしても、姉が以前と同じ様に男性に向き合えるかどうかも分かりません。
赤ちゃんも姉の元から離れていきます。
もしも将来また妊娠出来たとしても、ポッター症候群かどうかの検査は、妊娠後数ヶ月を越えた段階でしか分かりません。
人は何か一つでも拠り所があれば強く生きられると思いますが、仕事も、子供も、パートナーも失った姉には拠り所がありません。
僕の中で、姉の明るい未来はまだ見えていないのが現状です。
目の前に向き合う姉
僕の姉は、忍耐力があります。
この1年、多くのことが姉の身に降りかかりました。
人生に一度あるかないかの大厄年だと言っても良いかも知れません。
それでも姉は普段通りの表情で僕に接します。
僕に何かお願い事をする時も「ナオこれちょっとやってくんない?悪いね」と言い、僕が接している時の姉は昔から変わらない姉の姿です。
弁護士との文書のやりとりも、基本は僕が文章を書いて姉の意見を聞いているのですが、姉は淡々と、こういうことを書きたい。と僕に言います。
姉は強い人間だと僕は思います。
でも、母親から聞きました。
姉は僕のいない所でよく泣いているそうです。
どんなに弟の前で強くいようとしても、やはり辛いんです。
お腹の中の赤ちゃんが元気であればあるほど、悲しいんです。
妊婦生活がどんなに辛くても、お腹の中にいてほしいと願ってしまうんです。
それでも弟の前では絶対に弱さを見せません。
姉ちゃんって、強いんです。
赤ちゃんと妊婦が無事に出産を終えるという奇跡
命を授かる事は、奇跡です。今は妊活という言葉もあるほどです。
授かった命が無事に生まれてくることは、もっと奇跡です。
今の僕はちゃんと赤ちゃんをこの目で確認するまでは、安心できません。
それは妊婦さんに対しても同様です。
昔は出産で命を落とすという女性も沢山いたようです。
鼻からスイカを出す痛みと言いますが、鼻からスイカを出そうとしたら、鼻の穴を切り裂かないと不可能です。出血多量で間違いなく死にます。
出産するまでの過程の中でも、危険は多いです。
大きいお腹でつまずいて倒れるだけで、命の危険が迫ります。
流産の可能性もあります。
妊婦も赤ちゃんも無事でいることは、多くの危険を無事に乗り越えた証です。
最近あやなんが2人目を出産しましたね。
無事出産できたことは本当におめでたいです。
投稿を見た時に感動してしまうほど、心から良かったと感じました。
それだけの奇跡をあやなんは掴めたんだと。そう思います。
僕たちは運悪くこの奇跡を掴み取ることはできませんでしたが、せめて姉だけでも無事でいてくれることを心から願います。
最後に、姉の相手について思うこと
率直に表現をすると、見ている方の心を痛めてしまう可能性があるので、ここでの表現は控えます。
姉の相手は、妊娠8ヶ月の段階で、弁護士を立てて連絡を断ち切りました。
今は姉も胎児のことも忘れて、仕事をしていると思います。
一社会人として思うこととしては、問題から目をそらしても、問題の火種は消えないということ。
それどころか、火種は徐々に大きくなり、気付けば取り返しのつかないほどの大火になっているということ。
それだけは書き残しておきたいと思います。
明日は姉の出産予定日です。
長文のお付き合い頂き、有難うございました。
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