長い「あと一点」への道程
私がバレーボールをしていた中学時代、
全日本の試合をテレビで観るのが恒例になっていた。
父も私も妹も伯父もバレーボールをやっていたから、
なじみ深く、唯一自分が携わったスポーツだったからだ。
その時代その時代のスター選手がうまれては消えていく。
日本国内では強くても、海外では全く歯がたたなかった。
福澤さん、加藤陽一さんなど、海外に挑戦した選手もいた。
それでも男子の結果は出てこない。
オリンピックにも長く出られなく、
やっと北京オリンピックに出場できた時は、
監督がつっぷしてしまうほどぎりぎりで。
オリンピックでは確か一勝もできなかったんだよな。
そんな中、一人のスターがまた現れた。
今のキャプテン石川選手。
彼は、それまでのスターとはちょっと違っていた。
細い体ながら圧倒的な攻撃力。
さらには守備も堅い。
ザ・体育会系でもなさそう(笑)
涼しい顔して結果出す、みたいな印象だった。
そこから男子バレー界に少しずつだけど流れがき始めた。
石川選手の少し上に柳田選手、
も少し上に清水選手と福澤選手。
将来有望な2m級ミドルが3人。
その頃はまだ不安定な時もあったけど硬派なセッター。
それから少し下に
石川選手に憧れた西田・高橋選手。
さらには会長に川合俊一さん。
中垣内さんが自ら監督に立ち、招集依頼を続けたのがブランコーチ。
役者と環境が揃った。
こんなこと今までにはなかったことだった。
何年か前に誰かコメンテーターが言っていた。
「石川選手がバスケでもなく、野球でもなく
バレーを選んでくれたことが奇跡。
多分、どのスポーツをしても頭角を現した人だと思う。」
石川選手がバレーボール選手になったことが
日本バレー界を変えたと言っても
多分、そんなに過言じゃないと思う。
すごい選手が出てくる→そのスポーツの結果がでる
→メディアが取り上げる→子供たちがやりたいという
その子供たちの中に原石がいる。
そうしてその種目は強くなっていくのだと思うけど
石川選手はまさに、そのとっかかりだったのだろう。
今回のパリオリンピック、私もどこまでいくのか楽しみにしていた。
30年弱みてきて、こんなに期待したことはなかったと思う。
長く長く、親世代から
メダルをとることもなく、さらにはオリンピックに出ることすら
長くできなかった。
長い日々だった。
一個の競技がこんなに復活するまでにかかるのだと。
メダルはどうだろう、とは思っていたけど
昨日のイタリア戦、2セット目とったところで
4強に入る力は十分にあると感じた。
セット終盤で2点差以上を詰める力があった。
全員がこのオリンピックの中で一番力を出せていたように思う。
そして一番は、石川選手が復調していたことだった。
だけど3セット目の最後、取り切れなかった。
仕事があるのでそこでテレビを消して寝たのだけど、
今朝明け方結果だけ、と思ってみたら
まさかのフルセットで敗北・・・
しかも全セットデュース・・・
私のような凡人だったら心も体も折れるような結果。
選手たちの悔しさは計り知れないものがあると思う。
ぼろ負けよりも「クる」だろう。
案の定、試合後の選手たちの言葉は
明るいものは少なかった。
スラムダンクで言えば、(バレーをバスケで例えるのも変だけど)
湘北のような状態だった今回の日本代表の皆さん。
最高のメンバーだったからこそ
あの一点。セットポイントの一点。
心から取りたかっただろう。
イタリアも全力だった、と言うが
私は力負けするような風にはみえなかった。
だけどとれなかった。
何が敗因だったのだろう。
私は、「よく頑張った!!感動をありがとう!!」と
言いたいし思ってはいるのだけど
選手たちにとってその言葉が適切かどうかがわからない。
勝ちたかっただろうなぁ。
きっと、本当に勝ちにいってたと思うし。
だから3セット以降全部接戦だったんだろう。
3セット目で心折れて終わってたら、
4・5セットデュースまでもっていけないだろう。
ブランさんが退任する。
これからの男子バレーがどうなるのか。
今は観客もわからない状態だけど
私はこれで終わらないのではと思っている。
この一点を取り切る、それが明確な課題になり
また選手の行動が変わるように思うから。
体操の岡選手が20歳でメダル4個とっていた。
若いので順風満帆だったのかと思ったら
大けがからの大手術で大きな挫折を若いながら味わっている。
しない苦労はしないほうがいいけど、
今回の「あと一点」を一個の挫折とするのであれば
強くなるチームは
絶対に糧にするだろうと思う。
満身創痍の中、本当にお疲れ様でした。
だけど、ここからもう一個超えていきたい。
人生と同じように、心折れる事があった時に
ひととき前に進めなくなるけど
人ってそんなに弱くないから。
やはり、立ち上がるしかないのだと思う。
最後に、一人の石川祐希ファンとして。
かつてないほどの重責を負って
長く歩いてきたと思います。
今回の敗戦は、自分を責めることもあるだろうけど、
あなたがバレーを選ばなければ
絶対に全日本男子の飛躍はなかった。
新・男子バレーの礎を築き、
パイオニアとして皆を率い、
打って守って鼓舞して
功績は計り知れません。
お疲れ様でした。