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3ヶ月で改善!滑舌が悪い大人向け・言語聴覚士が教えるトレーニング

 こんにちは、はじめまして。言語聴覚士(げんごちょうかくし)の、ななさんと申します。

 言語聴覚士は、ことばときこえの専門職です。一般知名度が全然ありませんが、実は国家資格です。日頃、ことばの発達やことばの喪失(失語症など)についての相談に乗ったり、リハビリ/セラピーをしています。

 このたび、Twitterを経由しお問い合わせをいただくことが増えた「発音の障害/機能性構音障害」について、お話させてください。

 もし、あなたが、あるいはあなたのお子さんが、発音が悪いこと――たとえば、カ行とかサ行とか、特定の音が出せず、別の音に変わってしまっている、何度言い直しても言えない――でお困りでしたら、それはことばの症状です。そして言語聴覚士が治せます

 多くは、サ行がシャ、シュ、ショになってしまう、カ行がタ、チ、ツ、テ、トになってしまう、あるいはラ行がダ行、ツがチュになってしまう、などのパターンです。

 すこし変わったケースでは、イ段(キ、シ、チ、ヒ...etc)の音が空気の潰れたように濁った響きになる「側音化構音」というものがあります。(界隈では、側音化構音をキッチリ治せることが言語聴覚士の腕の見せ所、という説もあります)

 これに限らず、マ行が言えない、エ段が言えないなど、一般的にはなかなか想像がつきづらい音の誤りを示すケースにもお会いすることがあります。奥が深い…。

滑舌の問題とは違う

 「滑舌が悪いんですか?」ご相談にいらした方は皆、そう尋ねられます。いいえ、滑舌の問題ではありません。

 我々の業界ではれっきとした障害名もあって、「機能性構音障害」と呼ばれております。機能性とは原因が特に見当たらないこと(舌が短いとか口蓋裂があるとか難聴であるとかの器質的な異常が無い)、構音とは業界用語で発音のことなのですが、それはどうでもよくって、なにはともあれ、治療が可能です。

吃音とも違う

 よく誤解されますが、吃音とも異なります。どちらもことばのお悩みであり、言語聴覚士が相談に乗っていることには変わりはありません。

吃音(きつおん)、いわゆる吃り(どもり)では、音を繰り返す、引き伸ばす、詰まるといった中核症状が現れます。発音の障害とは治療方法と経過が異なります(吃音は治療により治らないことも多くあります)。吃音について、ここで詳細は割愛します。

どんな治療をするのか?

 ことばを話すために使用する声帯・口唇・舌・鼻腔などを全部まとめて、発声発語器官と呼びますが、それら器官のそれぞれを音声学の知見に基づき正しく協調的に動かせるようはたらきかける…と、まあ、ややこしいことを抜きにすれば、誤って覚えてしまったお箸の持ちかたを矯正するようなイメージです。

 たとえば、舌で出す音を治したいのであれば、舌の構え(ポジション)を正しい位置にセットし、正しい動きを反復する、次第に日常会話にも修正が行き渡るように促す(汎化)。そうして正しい発音を獲得することができます。

どのくらいの期間で治るのか?

 個人差がありますが、平均して3~4か月かかります。長くて1年~。早い人では、初回のセラピーでほぼ治ってしまうこともあります。

セラピーは何歳ぐらいから?

 めやすとして、年長学年〜小学1年生頃開始することが望ましいです。練習を開始するには、少なくとも4歳になっている必要があります。それよりも幼いと、まだ口腔器官と運動能力、言語機能(とくに音韻能力)が未完成であるためですね。また、自覚も乏しいので練習へのモチベーションがありません。さらには、3歳代では自然に獲得する見込みもあります。

 お喋りが不明瞭で本人や周囲が困っていたり、周りからからかわれたり…といったタイミングで言語聴覚士に相談するとよいです(*1)。

20歳過ぎても治る?

 これはもうほんとうに、声を大にして言いたいのですが、治ります。悪くて少し残存するばあいもありますが、現状より確実に改善します。

 発音を指導してくれる機関の情報を得られなかったせいで、どうすることもできず、いままで発音のコンプレックスを抱えてこられた方のお話を聞きます。あまりにも悲しすぎる・・・。言えない音のことばを咄嗟に言い換える習慣が付いたとか、授業で当てられてサ行変格活用を答えるのが嫌で嫌でしょうがなかったとか・・・(泣)

 治らない病気や症状や特性で悲しい思いをすることも、もちろん許せませんが、そもそも充分な情報にアクセスできず、適切な治療を受けることができず、悩みを抱えている人がいることに、これはなんとかせねばと思い至ったわけです。我々専門職の職務怠慢・・・は言いすぎですが、必要な人に必要な治療・セラピーが行き渡る世の中でなさすぎるのでは?と責任を感じています。

というわけで

 あなたの発音の悩みは、解決するかもしれません。一度、お近くの言語聴覚士(私とか)にご相談してください。

 大人や中高生が発音を指導してもらえる相談先がほんとに国内に無いらしく、それはさすがにやばいわ・・・と思い、不定期開室のことばの相談窓口を立ち上げました。

(※ 2020年4月にホームページをオープンしたので、リンクを差し替えました)

さいごに

 この記事は、「発音がちょっと違うけれど、毎日楽しく暮らしていて特に困っていないわ」、という方に治療を強要する意図はありません。発音の誤りがあっても社会でご活躍されている方は大勢います。また、器質的な理由から完全な治癒が難しいスピーチの障害について、否定するつもりはもちろんありません。というか、そっちもなんとかしたい。


注*1 4歳を越えていないけれども、「ものすごく不明瞭すぎて会話が成り立たない」という状況の場合、SLI(特異的言語発達遅滞)や軽度知的障害のケースがあります。気になることがあれば、お近くの言語聴覚士までご相談ください。


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寺田奈々(なな先生)
いただいたサポートは、ことばの相談室ことりの教材・教具の購入に充てさせていただきます。