こどもの言いまつがい、かわいすぎわろた
こんにちは、言語聴覚士のななと申します。
先日、Twitterで、また唐突に絡んでしまいました。
と、まあ。ほんと、絡みかた…(すみません)
ことばの言いまちがいかわいいね
実際、ことばの世界に飛び込んでまもない幼児のみなさんは、さまざまな言いまちがいをします。
しわわせ(しあわせ)/かくらんぼ(さくらんぼ)/えばまめ(えだまめ)/パコカー(パトカー)
…などなど。(全国のお父さんお母さん、まだまだあるいいまちがい、たくさん寄せてください。集めて掲載したい。)
さて、この言いまちがいに共通するのはなんでしょう?その謎は、ローマ字表記をすると氷解します。(*1)
しあわせ/ siawase / → しわわせ [ siwawase ]
さくらんぼ/ sakuranbo / → かくらんぼ [ kakuranbo ]
えだまめ / edamame / → えばまめ [ebamame]
パトカー/ patoka: / → パコカー[ pakoka: ]
ヒントは、まちがってる音の次の音!
……どうでしょう、気が付きましたか?
まちがっている音はすべて、次に来る音の子音になっているんです(「かくらんぼ」であれば、「くku」の音と同じk音に変わっている)。いい誤りの多くは、こうした音の先取りによって生じます。
もう少し複雑な例では、こんなものも。
テレビ/ terebi / → てべり[ teberi ]
ヘリコプター/ herikoputa: / → ヘリポクター[ heripokuta: ]
この例では、2つの子音同士の交換が起こっています。母音は入れ替わっていないので、1拍の音同士の完全なひっくり返しではありません。
さらには、
とうもろこし/ toumorokoshi / → とうもころし [ toumokororoshi ]
エレベーター/ erebe:ta: / → エベレーター [ ebere:ta: ]
じゃがいも / jyagaimo / → がじゃいも [ gajyaimo ]
これは完全なひっくり返し(転置)…と思いきや、隣り合う母音同士が共通しているので( -o-oや-e-e )交換されているのは子音部分です。
ほかにも、おさかな→おかさな、マスク→マクス、がんばれ→ばんがれなどなど(ローマ字音表記に疲れたので省略)。だいたいこのパタンですね。
なんで「おたざうけ」?
さて、話を戻します。
おかたづけ/ okatadzuke / → おたざうけ [ otazauke ]
これははたして、どんないいまちがいなのか(わくわく)。
「か/ka/」の音は、直後の「た/ta/」を借り、その位置に「づ」の子音/dz/が移動してきています(実は、ヅはザ行の仲間の子音ですね)。移動したあと、「づ」は子音を無くし、ただの「う」に。
つまり、「か」が消えたあと、子音がひとつずつ前方に移動しています。
口は、一歩前から音を予期している
東西線日本橋駅です。
英文字表記のほう、よーく見てください。
気が付いたでしょうか。
そう、Nihonbash (「ん」がN)ではなく、 Nihombashi(「ん」が M)になっています。
これは、次にくる「ば/ ba /」の音を口が予期している証拠です。
なぜなら、ばの音は上下の唇を閉じて開けることで発音する音ですね。直前の「ん」の音は、最短の運動ルートを通るために、NではなくMの音を自動的に選んでいるのです。
口は(発話の運動指令を出す脳は)、並びの次に来る音を把握し、好効率な運動のプログラムを組み立て実行しているのです。
こどもの言いまちがいを科学する
最近、音を正しく並べてお喋りするためには、頭のなかで音韻意識というのが仕事しているんだよ、というnoteを書きました。
健常とか障害とか、そういう社会の線引きとはいったん無縁のところで、純粋な知的興味からお子さんの言いまちがいを探求してもらえたら、言語聴覚士冥利につきるといったところです。ことばの世界はおもしろい。
ではでは。
補足)
*1 ローマ字表記について
実際の学術研究ではIPA(国際音声字母)という国際統一規格の表記を用います。いわゆる発音記号ですね。今回は簡単に説明したかったので、ローマ字を用いています。
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