弱っている心に向き合わないで、身体を整え、暮らしをやろう
弱っている人は、自分の心を高い解像度で眺めてしまう。それは危険だ。注意が散漫になり、活動がおろそかになり、気が付くと日曜日が終わってしまう。なんとかしなければと焦るばかりに、いきなり自分自身に向き合ってしまう。これは貴方だけではなく、心が危険信号の人に限って陥りがちな罠だ。落ち着いて、いったん風呂に入るか散歩にでも行こう。
なにから始めてもいい
先日、「自己肯定感貯金」を貯めるという記事で、食事という行為を通して自分に小さな肯定をコツコツ与えていこうと書いた。実際に、わたしが20代前半の頃、真剣に取り組んだ自己流プログラムだ。お金も体力も習慣も無かったわたしが、唯一できたのは手を動かすことだったから料理を選んだ。大学卒業まで実家住まいだったので料理は初心者だったが、いまではそれなりの腕だ(自画自賛)。
見事、完食できたらあなたはスゴイ。達成したいと心から願った課題を達成することができた。その課題を達成したいとすこし過去の自分は思っていたし、栄養とエネルギーを摂取したから、すこし未来の自分に感謝される。さらに、課題に向かって集中力を高める経験を積めた。とても満足だ(満足を感じよう)。実際、食事は生命維持活動そのものなので、かなり強い強化子としてはたらいてくれる。自分の素直な欲求やしたいことを否定しがちな人も、自分の欲求(うまそう、食べたい)に対し、肯定を与えることができた。――――――――「自己肯定感貯金」を貯める | なな(言語聴覚士)
このメソッドは、食事や料理に前向きな人におススメできるが、なかには料理が苦手だったり食事制限があったり多忙だったり、生活に取り入れづらい人も居るだろう。補足したいのだが、べつに食事や料理じゃなくてもいい。たとえば掃除、たとえばペットの世話、たとえば散歩。肝心なのは、心と直接向き合わないことだ。
生物心理社会/バイオ・サイコ・ソーシャルモデル
生物心理社会モデルというものがある。これはアメリカの精神科医Engelという人が1977年に提唱した。従来の医療モデル(病気に対して治療を与えるモデル)に対し、より広く包括的に人をとらえようという概念モデルである。WHOのICF(国際生活機能分類)など知っている人には感覚的に理解しやすいだろう。図を作成してみたので、しばらく眺めてほしい。
※Biopsychosocial Model - Physiopedia を参考に作成
個人の状態を決定するファクターを、生物・心理・社会に分けて考える。
● 生物・・・遺伝的、生化学的な素因
● 心理・・・気分、気質、ふるまい
● 社会・・・文化、家庭など周囲の人々、社会経済的資源、医療資源
これらは、別個に存在しているのではなく、それぞれが互いに関係・影響しあう全体的なシステムである。
図の中央、「メンタルヘルス(心の健康)」は、生物としての自己・社会的な存在としての自己・心理(精神)をつかさどる主体としての自己のちょうど重なり合う領域にある。
身体が健康なら心も軽いし、社会的な不健康は心身にも及ぶ
心理学のモデルとかはけっこう面白いんですが、話を戻す。要するに。身体の問題は心と関係があるし、心が不全だと体調も崩しがちだ。金銭面やソーシャル面で社会的に苦しいと、精神的にキツイし、メンタルバランスが悪いと対人関係にも支障を来たしがちだ。
生物⇔心理 心理⇔社会 生物⇔社会
心の不調をどうしたらいいか
どうしたらよいのか。もちろん、無理に自己治療をせず心の専門家に解決を依頼してほしいのだが、意外と身体的な部分を整えることから取り組んだほうがいいことがある。あるいは、ソーシャル(社会)の苦しいところを取り除けるならば、まずはそこを整理してみよう。難しいこともあるだろうが。心への取り組みにまっすぐ切り込んでいくより、周辺から整理してみるのがいいかもしれない。
生物心理社会のうち、生物と社会から取り組む―――この理屈を覚えておくと、ちょっとした心身の不調に陥ったとき、アロマやヒーリングの音楽、ヨガなどの軽い運動など身体感覚にはたらきかけるという手段を導き出すことができる。あるいは、こころが弱っているときに、ちょっと他人に親切にしてみたりペットや植物の世話をしてみる。自分の良いところがみつからないという人が、他人の良いところを探してみるところから始めるのもよい。他者を大切にすることは、めぐり巡って自分を大切にすることに繋がる。
心が弱っているときには、生物と社会から取り組もう。
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