超短編台本『完全に一致』
ちょっと前にツイッターなどで載せていた超短編台本、また少し書いてます。こちらにも載せとこうと思います。こちらは学芸会用ではなく一般用です。今回もビデオ通話を前提としてます。
--------
『完全に一致』
#超短編台本
登場人物
みのり/いつき/けい
(みのりとけいが女、いつきが男、という設定がオーソドックスかと思われるが、それに限定しない。語尾や感嘆詞に変化をつけてもよい)
みのりが自室でパソコンのビデオ通話アプリを立ち上げている。
いつきが自室から通話アプリをつなぐ。
いつき「おー、見えたわ、聞こえる?」
みのりは画面を凝視している。
いつき「みのり、みのり?聞こえる?」
みのり「聞こえるって」
いつき「なんだ。聞こえてるなら言えよ」
みのり「だから聞こえてる!」
いつき「おう…。…なんかこのアプリで話すの初めてだなー」
みのり「…」
いつき「いつもLINEだもんな」
みのり「流行ってるみたいだしね、オンライン飲み会」
いつき「ああ、そうみたいだな」
みのり「…いっちゃんは やってるの?オンライン飲み会」
いつき「ああ、だからこないだ大学の友達とやったっていったじゃん」
みのり「それ以外は?」
いつき「それ以外…は、会社の人…とか?」
みのり「だれ?」
いつき「え?沢田とか、山本主任とか?あ、わかる?山本主任。」
みのり「他は?」
いつき「他?えーと」
ビデオ通話アプリにけいが入ってくる。
けい「みのりー、あれ?え、いつきさん?」
いつき、おどろく。
みのり「ちょっとまって」
みのり、ビデオをオフにして画面から消える。
けい「え?いつきさんもいるの?」
みのり「完全に一致」
いつき「は?」
けい「え?」
みのり「ねえ、こないだ二人でオンライン飲みしてたでしょ?」
いつきとけい、様子をうかがっている。
みのり、ビデオをオンにする。
みのり「こないだけいが上げてた画像と、今のこの二人の絵づら、完全に一致してるんだけど。(スマホを画面に見せながら)これぼかしてるけど いっちゃんだよね。色合いが完全に今の二人の画面なんだけど。なにこれ『今日はオンライン飲みー♪』って」
けい「えーーっと、これね、」
いつき「たしかに、こないだけいちゃんとオンライン飲みしたよ」
みのり「やっぱそうじゃん、なんで?」
いつき「なんでってダメ?」
みのり「ダメに決まってんじゃん、二人っきりでしょ、浮気でしょ!」
いつき「浮気じゃないって、だってオンラインだよ」
みのり「オンラインでも浮気は浮気!」
いつき「話してただけだよ!なんもしてないし」
みのり「なんもしてないかなんてわからないじゃん」
いつき「いやなんもできないじゃん。っていうか同じ空間にいないから!」
みのり「でもふたりっきりじゃん」
いつき「いや一人だから!」
みのり「二人でしょ!密だよ密!密です!」
いつき「密じゃないから」
みのり「密です!密会だよ密会」
いつき「べつに密会じゃ…」
みのり「じゃあなんでさっき誰とオンライン飲みしてるのって聞いた時、けいのこと言わなかったの」
いつき「…言うと嫌がるかなと思って」
みのり「嫌がるよ。嫌がるようなことなんですんの」
けい「みのり、私がお願いしたの」
みのり「ああそう、でしょうね!いっちゃんから誘うわけないし」
いつき「けいちゃんが、仕事で悩んでることがあるっていうから相談に乗ってたんだよ」
けい「そうだよ、ほんと相談に乗ってもらってたの」
みのり「ありがちな言い訳すぎない?」
けい「ほんとだから」
みのり「どんな悩み?」
けい「えー、自分のキャリアというか、企画部門でこれからやっていきたいから何をやっておけばいいか聞きたくて」
みのり「ふーん」
けい「いつきさんも、営業から企画に行った人だから話聞きたくて。だから浮気じゃないよ」
みのり「…本当?」
けい「私がみのりからいつきさんとったりするわけないじゃない。同期でしょ?」
みのり「同期だけど」
けい「信用して、ね」
みのり「…わかったよ。じゃあ次オンライン飲みするときは私もいること」
けい「わかった。ごめんね、変な心配かけて」
みのり「うん、こっちもごめん」
いつき「大丈夫?みのり」
みのり「まだ大丈夫じゃないけど、ちょっとしたら大丈夫にはなれるかも」
いつき「わかった」
みのり「とりあえず、けい、先出て」
けい「うん、私切るね」
みのり「うん」
けいが退出。ビデオも消える。
いつき「…ごめんな。傷つけちゃって」
みのり「うん……」
いつき「また、二人でオンライン飲みしようぜ」
みのり「うん、いいけど、それよりも…」
いつき「うん、そうだね。会いたいね」
みのり「うん」
いつき「落ち着いたらね」
みのり「うん」
いつき「今日はいったん落ち着こう」
みのり「うん、…おやすみ」
いつき「おやすみ」
みのりが退出。ビデオも消える。
いつき、スマホを操作。
いつき「ふー、こんな感じですよ。話合わせてくれて助かった」
LINEを送信。
いつき、ビデオ通話から退出。
おわり
劇作を学ぶのにはお金がかかります。 そして台本の創作にはどうしても時間がかかります。 ウンウン考えながら飲むコーヒーやお茶代にさせていただきます。 どうぞよろしくお願いします。