戯曲『その十字路の先を右に曲がった。』(冒頭p8まで公開中)
2020年に第3回人間座「田畑実戯曲賞」を受賞しました北島淳の作品『その十字路の先を右に曲がった。』について、主に上演を検討される方に向けて概要情報をお知らせします。
とき
現代、またはそれに準ずる時間
ところ
とおくに街を臨む丘、そこに立つ大きな農家
ひと
・男
・少年または少女
・先生
・女
・子ども1
・子ども2(以下、「女の子」とする。)
・農夫頭
・女中
あらすじ
街から離れた丘の上に建つ1件の農家。そこでは子どものいない夫婦が、引き取ったみなしごや昔からの使用人に囲まれて、つつましく、しかし裕福に暮らしているらしい。
物語は、農協から派遣された共済(保険)の調査員が農家を訪れるところから始まる。というか、その調査員にとってみれば、そのまま物語が始まらずに終わってしまう。何しろ、勢い込んで調査をはじめたところで、まずは共済の加入者であるその農家の主人がいないのだから…。
街は年に1度のお祭りの真っ最中。そもそも、刈り入れの時期を迎えた農家では迷惑でしかない。それでも幼い子どもたちの気をそぞろにさせる魔力を持つのがお祭りだ。
主人のいない館の中で、調査員は少ない手がかりをもとに盗難被害の調査を始める。しかし、広い農場を隅々まで歩き回り、台帳から倉庫まで洗いざらいをさらってみたところで、どこにも盗難の事実を示す手がかりが見当たらない。明らかになるのは、不自然なほど完成された農家の意思決定構造と、その運用の整然さ、それがゆえに主人の不在がもたらす目の前の機能不全ばかりだ。
結論を急ぐ調査員。そんなとき、一番下の麦畑に泥棒がー。
ノート
舞台となる農場を中心として物語は進みますが、農場の中でも麦打ち場、客間、戸外など複数の場所が設定されており、遠く離れた街中の描写もあります。
子どもから老・壮・青までさまざまな人物(8人)が登場します。
年代の幅があるカンパニーはもちろん、上演の形態や構成にもよりますが、比較的年齢構成の近い団体でもあまり違和感なくできる戯曲だと思います。(ちなみに、ナントカ世代初演時はすべて20~30代前半のみの構成)
舞台となる農場を包むいくつかの謎に翻弄される男を中心に話は進んでいきますが、ミステリーを装った群像劇でもあり、視点はさまざまに設定することが可能です。
明確にキャラが立った人物(女中や農夫頭など)も多く、笑いの要素も全般に散りばめられています。そうした意味で、分かりやすいというか、初見・初読みでもいきなりそれなりに形にできる作品です。
上演時間は通常であれば90分弱程度。ただし、登場人物が8人とナントカ世代の作品としては多めで、全体で10幕と舞台も様々に変わるため、小まめに変わる場面への対応が必要です。
戯曲のチョイみせ(p8、2幕はじめまで)
全文・上演許可申請について
上演を検討される方には全文を提供します。また、上演に当たっては著作権者の許可を得る必要がありますので、必ず手続きをお願いいたします。
詳細はナントカ世代の「戯曲の使用・上演許可について」ページからご確認ください。