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ひとりごと

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日記のようなものや思い出を綴っています
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#思い出

日記のようなもの

日記のようなもの

母が居なくなって二度目の春。
4月生まれの母は、その季節がとても良く似合う柔和で朗らかな人だった。

神経難病を患っていたため生まれつき不自由な身体で我慢することも、苦労することも多かった母は、最期は膵臓癌であっという間に他界した。
2020年4月下旬に末期の膵臓癌だと診断を受けて、たった4ヶ月程の時間しか残されていなくて、何もしてやれない私など、本当に役立たずだった。

「また来年見ようね」
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金木犀◇追懐③

金木犀◇追懐③

金木犀が香る時期になった。
我が家の近所には大きな金木犀の木がいくつもあるので、窓を開けていると家中にその香りが届く。

亡き母が好きだった香りだ。
毎年楽しみにしていたので何か特別な思い出があったのかもしれない。

今年の春に閉館した商業施設の駐車場にも金木犀が植栽されていて、先日その駐車場を利用した時に香りを辿ってうろついて背の低い金木犀を見つけた。
(近隣の本屋や調剤薬局、クリーニング店に駐

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母の初盆と私の記憶◇追懐①

母の初盆と私の記憶◇追懐①

2021年8月12日
昨年9月に逝去した実母の初盆法要だったので仕事は今日から盆休みを取っている。
前日から祭壇の準備をしていたのだが回転灯の組み立て書がその役割を全く果たしていないことが何だか可笑しくて、独り言を言いながら2対の回転灯を組み立てた。
今回初めて盆提灯の回転灯を購入したのだけれど、電球の熱を利用して円状のフィルムが回転すると言う仕組みになっていて小学校の頃の理科の授業を思い出した。

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わたしのひとりごと

わたしのひとりごと

この1年半程続くコロナ禍で様々な言葉を造語も含めて耳にする機会が多かった。
3密
ソーシャルディスタンス
クラスター
新しい生活様式
PCR検査

ワクチン接種が進むと基礎疾患の有無と言う言葉が飛び交うようになる。

私はこの基礎疾患持ちの人生だ。
確定診断がついたのは13歳だったか。
全身性エリテマトーデス(SLEとかエリテマと略される)と共存して現在に至る。
自己免疫疾患なので誰かにうつすこと

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母の胡蝶蘭

母の胡蝶蘭

昨年9月。
実母の葬儀の折、祭壇に供えた胡蝶蘭は自宅で大事に世話をした甲斐あって全ての花が散ったのは今年に入ってからなので随分長く一緒に過ごした。

愛着もあって花が過ぎてからも粗末に扱う気になれず、その後の管理方法をネットで調べて教えを乞う。
ググると大抵の困り事は解決するから便利な世の中だ。
胡蝶蘭のプロの教え通りに枝の処理をしてみたが『…と言う管理をすると芽が出ることもあります』と言う書き方

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母の誕生日

母の誕生日

今朝方、夢を見た。
これまで見ることがなかったのに、昨年亡くなった母が夢に出てきた。
母は楽しそうに留め袖の話をしていて、私はその話に相槌を打ちながら聞いていると言う夢。
目が覚めてからも母の楽し気な声の余韻が残っていた。

今日は母の誕生日なのだ。
ケーキが食べたくて夢にでてきたのだろうか。ちょっと母らしい。
だからと言う訳ではないけれど、例年通り母にケーキを買って帰った。

昨年の誕生日に古希

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思い出の絵本

思い出の絵本

 小学生の頃、学校の図書室で見つけた一冊の絵本。
それは私たちが【お古本棚】と呼んでいた、読み古された本が並べられている隅の本棚の、一番下の列にありました。
何度も修繕された跡のある、古い古い絵本です。

 この物語は雪国が舞台で、おばあさんが子供の頃に経験した不思議な出来事をもとに物語が進みます。
どこからともなく聞こえてくる、かごめかごめの歌。
歌が聞こえるほうへ誘われるように夜の雪道を歩き出

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おしゃべりなおでん

おしゃべりなおでん

もう何十年も記憶から引き出されることのなかった、子供の頃のことを不意に思い出す。
街にひとつしかなかったデパート(今だとショッピングセンターとか呼ぶけれど)の階段登り口にあったおでんコーナー。
どうしておでんだったのかは知らない。
フロアから5段ほど下に降りるとそれがあって、ドーナツ状にカウンター席がある作りになっている。確か脇にテーブル席もあったと思う。
その真ん中には大きなおでん用の鍋が3つあ

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