魔法使いの家にホームステイする②
マスターあんこのお住まいは、
清潔感に溢れ、神社のような清浄な空気の
温かい家です。
余分なものは一切ないのに、なにか膨大なエネルギーに満たされて大変心地よい空間です。
なるほど、これが魔法使いの家か、という感じです。
お茶、飲みますか?
と目の前でお抹茶を点ててくださる。
お茶うけには懐紙に載せられた美しい干し柿。
こ、これは!
あの、noteで拝見した干し柿では・・・!
noteの世界は、日常のようで、遠い世界に感じていたので目の前に本物が現れるという体験にまずおののきました。
大きな箱にはたくさんの干し柿が美しく収められていて、その中から姉と私にと、ぴったりのものを選び出してポンと出す。
まるで、ハリーポッターが魔法の杖を買いに行った時のような状態です。
そうして、ぼんやりと悦に浸っている間に
気づけばランチへと向かっておりました。
はい。例の餃子屋さんです。
あるんですよ。本当に。
夢と現実の境目が更に分からなくなった状態で、
では、行きましょう。
と、次なる場所へ導かれます。
思えば、この時点で既に魔法がじわじわと始まっていたのです。
そして。
清流が軒先を流れる城下町へ。
江戸時代の街並みを、うふふふと散策し、
鯉にエサでもやりましょう。
と促すマスターあんこに着いていきます。
用水は透き通り底までくっきりと見えますが、うっかり落ちようもんなら、みぞおちか肩までどぶんだなという深さです。
その中に、大きな大きな鯉が悠々と泳いでいました。
大きい。大き過ぎる。ざっと目測では太ももくらいの大きさ。
残念ながら、季節の関係でいまは鯉にエサをやってはいけないのだそう。エサ売り場は閉じていました。
残念そうなマスターあんこ。
鯉の大きさに姉とぎゃあぎゃあなっていると、
手を、出してください。
とマスターあんこが言うのです。
私たちは目をキラキラと輝かせる子どものように、両手をお椀のようにして差し出しました。
ぽとり。
え?え?え?
あ、鯉のエサ?いや、なんか違うな。
正体不明のドキドキ感は、押し寄せる波のようにワクワクに変わり、泡立つような血流を抑えつつ、恐る恐る包みを開いてみると・・・・・・・
しののめゆきつばきー!!!!!
ああ、もうこれは、『ドラッグストア昔話』の世界に迷い込んでしまったのだ。
この、江戸の城下町で、石畳の裏路地で、
ぽとりと手に落とされた和紙の包みからは、
いま、雪に落ちたばかりのような椿が顔を出し、得意げに光っています。
この日の朝、空いっぱいを染めていた東雲が私を取り巻きます。
うひひひ、とにんまりしておられるマスターあんこと、その傍らでえへへへ、と踊り舞う妖精さんを目の端にぼんやりと捉えながら、
ぼんやりと、
この、飛び出す絵本の魔法に浸るのでありました。
つづく。
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