魔法使いの家にホームステイする⑤
たい焼きと、たい焼き屋さんのおじさんに感服しながら次なる場所へ。
車中で今回の課題作品の感想などをおしゃべりしました。
いろいろなものが詰まった作品で、いろいろと感じ、考えた作品でした。
マスターあんことは違う印象を感じてしまっただろうな、と思いつつ、
どうでした?
という優しい声に、ついするすると感想がこぼれました。
普段は、自分のお勧めする作品を、違う視点から違う感想を持たれるのって、なんか気分を害してしまうんじゃなかろうかと、つい感想を控えがちになります。
でも、魔法使いの家には、NOというジャッジがありません。
妖精さんの失敗談が出たとしても、
そうだな!失敗したな!わはは!
といった感じで、そこには「ダメなもの」が存在しないのでした。
「受け容れる」っていうと、ホントはダメだけどいいよ、みたいな感じがするのですが、
魔法使いの家では、「ただ、すべてがそこに在る」という感じがしました。
こんなに優しい世界があるんだなぁと、
こっそりほろりとしておりました。
だからこそ、するりと感想を伝えることができたのだと思います。
するりの魔法は、知らぬ間にかけられておりました。
課題作品所縁の聖地は、本当に作中そのままの景色が至る所にあり、わわわ!あれは!とか、あ!コレが!とかなっていたのですが、マスターあんこは優しくするりとご案内してくれたのでした。
そうして午後3時。
ついに来ました。
薬草やハーブを使った由緒ある温熱所です。
マスターあんこの過去記事でも紹介されていて、とてもとても気になっていた場所です。
ついに来ました。
先頃リュウマチ予備軍の認定を受け、湯治に興味津々のなんてねです。
薬草風呂、というのでしょうか。
蒸し風呂です。
大きな樽に入ります。
薬草の香りと、木の香り。
もくもくと蒸されます。
サウナ慣れしていないこともあって、あまり長くは入っていられませんでしたので、
3回くらいとご説明を受けたところを5回くらい出たり入ったりしました。
でも、さすがに、もうアレよね。と、休憩所に移動するべく姉と支度をしていると、温熱所の方が様子を見に来てくださって
「あったまった?」
と声をかけてくださいます。
「はい。汗はまだ出ませんが。」
と姉が答えると、
「え!だめよー!もう一回行ってきて!タオルで拭いても汗が止まらなくなるまであったまってきて!」
と優しく諭されもう一度浴場へ。
免罪符をもらったかの如く、何度も何度も樽に出たり入ったりして、汗がぽたぽた出てきました。
そうして休憩所で横になり、気づけば意識は彼方へ。
「もう一回いってらっしゃい」
とお声かけいただき、再び浴場へ。
今度は堂々と何度も何度も樽を出たり入ったりして、すっかりあったまりました。
2度目の休憩でも意識がとんでいたところ、気がつけば終業時間を過ぎてしまい、慌てて支度を整えました。
「今度はお弁当持って一日いらっしゃい」
と、これまたやさしい店主さん。
来ます!お弁当持って来ます!
と固く誓うのでありました。
外に出たら夕暮れ時でした。
ほんのり赤みを残す空に一番星がきらめいています。
お夕飯は芋煮会となりました。
姉とふたりでせっせと里芋をむきました。
いつの間に?というスピードでマスターあんこが他の下拵えを終わらせています。
そうしてくつくつと煮えたお鍋をみんなで囲みました。
お芋たっぷり。
優しいお鍋でした。
帰っちゃうの、やだなー。
とマスターあんこがつぶやきます。
もう一泊していってくださいよ。
ほら、お布団カラリエであっためてきて!
と全力で惜しんでくださる。
こんなにも素直に名残惜しんでくださるとは。
こちらも名残惜しさがダダ漏れになります。
もう、家族です。
家をつけるのがアレならば、族です。
2日間という時間の内にあったとは信じ難いほどのいろいろなことが永い永い幸せな時間となりました。
そうです。実際にお供したのは2日間でも、私たちはそのずっと前から楽しみに準備を重ねてきてくださったことを、ひしひしと感じることができたからです。
曇りひとつない窓も、
隅々まできれいなお部屋も、
美しい干し柿も、
それを載せていたお懐紙も、
しののめゆきつばきのありへいとうも、
包んでいたこよりも、
この日のために書いてくださった直筆のスピンオフも、
何度も練習してくれたみとぼるも、
美味しいお野菜も、
ふかふかのお布団も、
新しく導入してくださった暖房器具も、
あそこに行こうと考えてくださった時間も、
なにもかも、
優しさと思いやりに溢れ、
しかもそれらを楽しんでくださっていたのが
まざまざと感じられ、
ありがとうございました
としかことばではお伝えできないのです。
私たちがどれほど幸せをいただいたかがことばではなく、何かで伝わっていれば幸いです。
『魔法とは、可能性を見つけて、それを大きく拡げてふくらませることだ。その可能性の種が大きく育ち、形になる。』
魔法をかけるとは、
時間をかける
手間をかける
心を運ぶ
そうしてそのすべてを楽しむ。
可能性の種の育て方を体感させていただきました。
私も、魔法使いになります!
と心の中で宣言し、いよいよお別れとなったとき、なにやらマスターあんこがシモーヌ姉に手渡しているではありませんか。
キヨおばあちゃんの野菜かごーーー!!!
そうです。
マスターあんこは思いもよらぬタイミングで
たたみかけてくるのです。
最後まで浮かれ通しで、ホームステイが終わりました。
浮かれきった姉妹はこの後、驚きの珍道中となりました。
つづく。
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