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「ムーンロック・フォー・マンデー」の感想(ネタバレあり)
強盗をして警官を発砲してしまった少年と、彼と偶然出会った病気で16歳まで生きられない少女とのロードムービー。
Amazonプライム・ビデオで鑑賞。
映画が始まって学校に行くことが出来ず、父親に勉強を家で教わっている少女マンデーの描写から始まっていく。
彼女は父親によってずっと家に縛り続けられていて、たまの外出も病院だけの生活を続けているのだけど、病院の帰りに駅で宝石強盗で逃げてきた少年タイラーと、あるきっかけで出会い、彼の逃避行に同行することになっていく。
旅の中でタイラー過去の心の傷や、マンデーの病気の事や残り少ない人生でのやりたい事など、お互いを知り絆を深めていく描写がドラマとして見応えがあった。
「車の目の前に見えるのが未来、バックミラーに映るのが過去、その間に居るのが俺らだ。」と言って、タイラーがマンデーに今を生きる事の大切さみたいなモノを不器用ながら教えようとしていくシーンがとっても素晴らしかった。
タイラーも学校にちゃんと行っていなかったと言っていたので、おそらくそんなにインテリジェンスがある訳じゃないのだろうけど、彼女の人生の為に何か言葉を伝えなければという想いに溢れている感じがして、それに感動する。
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話が進むにつれ、どう考えても悲劇的な終わり方しか予想出来ない逃亡劇でもあるのだけど、ただ追ってくる警察もかなり無能なので緊張感が無いし、旅の間に出会う人たちが何ともキャラが濃くてヘンテコだし、独特のゆるい空気感も同居している雰囲気があってそこも面白い映画だったと思う。
単にお涙頂戴な話にする気はないという感じ。
旅の途中に出てくるソーセージランチおじさんとか、娘と二人で旅する酒癖おじさん、アイスおばさん、月のパンケーキおじさん等々みんなキャラが濃くて印象に残ってくる。
映画が始まって最初のマンデーの家の近所で彼女と父親が歩いているカットで映画が始まるのだけど、そのカットと対になる様に、タイラーとの旅によって彼女の生活がどう変わったのかが、よく分かる様になっているエンドロール直前のカットとか映画の語り口として上手い。
とても前向きな笑顔で終わるラストカットも良い切れ味の終わり方だったと思う。
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マンデーの方のエピソードはいわゆる難病モノの要素もあるのだけど、そこまで病人という感じがしないのは気になった。
冒頭に彼女がトイレで吐いて具合を悪くしている描写は入るけど、それ以降は特に無いし、普通こういう映画だと旅の途中で具合が悪くなるシーンが入りそうなモノなのにそれも無いのは結構ビックリ。
途中の「決まった時間に薬を飲まないと具合が悪くなる」というのが、タイムリミットとしてこちらにハラハラさせるのだけど、特に何も無い。
あとその後タイラーが薬局に強盗に入り(ここでの女性店員への恋心描写とかがマジでなんでそうな空気になるの?って感じだし)、結構適当に選んだ免疫の薬を飲ますシーンとかがあるのだけど、それがかえって病状を悪化させる展開とかになると思っていたら、普通に合ってたのも驚いた。
あと、映画の内容を調べずに観たので、冒頭でのマンデーと父親との死んだうさぎのやりとりが不穏すぎて「この父親は娘を束縛したいが為に病気と嘘をついているのでは?」と疑って観てしまった。
父親の追跡パートも描き方が、居眠りで車乗り捨てたり、ヒッチハイクで警察に捕まったり、それでも黙々と追いかけてくるのが不穏で怖かったので、実は普通に心配しているだけだったというのがあんまり納得出来てない。
正直の追跡劇の時に父親側にも精神的に成長する描写や、追いかけていく内にマンデーとタイラーの痕跡で、二人の逃亡劇がただの誘拐ではないと気づいていく展開とかが無いと、ラストで良い父親みたいな面で映画終わっていくのが少し違和感を感じた。