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「レッド・バージン」の感想(ネタバレあり)

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冒頭で主人公であるイルデガルトが銃によって殺されるというのが、母親の語りから分かる様な作りになっているので、どうやってそういう顛末になっていくのか?を考えながら観ていくのが面白かった。
実話モノなので真相を知っている人もいるのだろうけど、僕は全く知らなかったので、彼女の家にされる落書きや、女性の社会進出に対する冷たい視線などで危うい立場故に後半はどこで彼女が危険な目に遭うのか?サスペンスとして気に留めながら観ていた。

同時にもう一人の主人公とも言える彼女の母親であるアウロラとの関係の変化も物語の見どころで、束縛して明らかに毒親であるアウロラと外の世界を知っていくイルデガルトの対立していくのは目に見えている。
その関係性の破滅にもハラハラしてしまう。

このアウロラは女性の社会進出の為に娘を厳しく育てているのだけど、フェミニズムの押し付けによる束縛と厳しさが結局いかにも男性的な支配性を感じさせるのが何とも皮肉。
昨年観た映画で「アイアンクロー」という作品があったけど、あちらが父親による「男らしさ」の押し付けによって息子達が破滅へ向かっていく地獄を描いていたけど、家庭環境は真逆なのに印象的に凄く近いのが面白いなぁと思う。
男性的とか女性的だからではなく、自分の子供を自らの野望を叶える道具としてしか見ていない考え方がとても有害である事が分かる。

ただこの鉄の女に見えるアウロラにも、人間的な弱さを描いていてるのが味わい深かった。甥との歪んでいる様にも思える関係性の未練みたいなモノが彼女の人間的な弱さなのだけど、そこをイルデガルドが見事に攻めて出し抜かれる展開が彼女からしたらなかなか辛い。

アウロラからすると幼少期は迷いなく自分のいう事を忠実に学んでいく完璧な人形だったイルデガルトが自我に目覚め、恋愛に夢中になっていくことで、どんどん彼女に対する視線が危うくなっていくのがスリリングだった。
彼女にとっての完璧なイルデガルトの象徴として白い陶器の様な像がイメージ的に出てくるのだけど、そこに段々とヒビが入っていく演出が分かり易い。(あまりに分かり易すぎる気もするけど)

イルデカルトが明確に彼女から決別を訴えた事で、その像の首が落ちて、自分のモノじゃなくなったイルデガルトへの殺意が明確になっていく。
冒頭のナレーションの通り3発の銃弾がイルデカルトに浴びせられるのだけど、撃ちながらも少し戸惑いを見せるアウロラの表情が印象的だった。

イルデカルトとアウロラとの板挟み的な立場のお手伝いのマカレナの存在感も良かった。
こんな裕福な女性のお手伝いとして働いているのに、暴力的な夫に悩まされている立場の弱い女性であるのがなんとも辛い。
彼女が選ぶ最後の方の選択とかもキツイし、映画の最後の表情も切ない。

アウロラを演じたナイワ・ニムリは今回初めて観たけど、美人なのにめちゃくちゃ蛇顔で今回の毒親役にピッタリハマっていたと思う。
中盤でイルデガルトに足を絡ませて眠るシーンとかめちゃくちゃ蛇。
後半からはどんどん彼女の精神が揺らぎが増していくのだけど、それが一見分からない様に必死に強がっている様に見える佇まいが絶品だったと思う。

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