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「アントマン&ワスプ:クアントマニア」の感想(ネタバレあり)
この感想はMCUドラマ「ロキ」のネタバレも含んでおりますのでご注意下さい。
マーベルシネマティックユニバース最新作にして、アントマンの三作目、そしてフェイズ5の第一作。
フェイズ4~6までの「マルチバースサーガ」の本筋が今作でいよいよ動き出した印象。
それ故に個人的にはアントマンの三作目というよりは今後のMCUの大きな物語の中での「繋ぎ」の作品という印象の方が強かった。
それでもしっかり楽しめる要素も盛りだくさんにしているのは流石のMCUクオリティだと思う。
アントマンシリーズとしての物足りなさ
アントマンシリーズでこれまで語られ続けてきた「量子世界」の要素が今回は、かなりメインになっていた。
地下帝国っぽい世界観や、量子世界の不思議な生き物のデザインがどれもフレッシュで観ているだけで楽しい。
めちゃくちゃ「スターウォーズ」っぽい酒場とかもあるけど、なんとか「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」とか宇宙系の作品と差別化しようと頑張っていたとは思う。
ラストの蟻さんが大活躍展開もアントマンシリーズならではの要素だと思うし、カーンが蟻を馬鹿にした瞬間にハイテクパワーアップ蟻さんが大群でやってくるのは熱い&可愛い。
多分こいつらがエンドゲームの時にいればアイアンマンは死ななくて良かったと思う。
ただアントマンシリーズの重要な要素だったコミカルさがなくなっているのが、かなり物足りない。というかマイケル・ペーニャが出てないのが寂しい。彼がアントマンシリーズのコミカルさの3割くらいを担っていたと思うので今回全く出ないのは本当に残念。
みんなシリアスな登場人物ばかりで正直スコット・ラング以外のコミカル要員がいないのがどうかなぁと思う。ラストのお誕生会位はマイケル・ペーニャを呼んで欲しかった。
征服者カーン
今回の見所はやはり今後のMCU作品でサノス的なキャラになると予想される征服者カーンがいよいよベールを脱ぐという部分だと思う。
MCUドラマ「ロキ」の最終回では「在り続ける者」として出てきていたけど、今回は堅物っぽい雰囲気でジョナサン・メジャースが見事に別の人物として演じ分けていた。というか多分この感じで色んなカーンを彼一人で演じ分けていくかと思うと今からめちゃくちゃ気が遠くなりそう。
「ロキ」の最終話でシルヴィが殺した「在り続ける者」が居なくなった事により暴力的なやり方でマルチバースを支配しようとしている存在として登場してきた訳だけど、なんだかんだで支配の為にやろうとしていたっぽい(途中の説明よく分からなかった)ので結局「在り続ける者」と、やろうとしている事は近い気もした。
別ユニバースのアベンジャーズを沢山殺してきた位強いというのは衝撃的なのだけど、ぼんやりした回想と話でしか説明されないので怖さはあんまり伝わってこなかった。
あと手から出る人を消滅させるビームとかも説明がないし、終盤すぐ撃てなくなったし正直サノス級に強い悪役というパンチは今の所ない。
おそらく次のアベンジャーズに向けてそういう紹介はされていくとは思うけど、今作一作だけだと悪役としての印象は薄いかなぁ、、、。
エンドクレジット後の色んなカーン大集合の所はいよいよこれから「マルチバースサーガが始まるぜ!!!」と宣言している感じで今後に対する期待が増してきた。
アントマン
予告でカーンが「これまでの娘との時間を取り戻せるぞ」と誘惑してくる様なミスリード展開を仄めかしていたけど、実際はタイムマシンの修理を手伝うジャネットに向けたものだったのは、ちょっと拍子抜け。
ただ単に「娘殺す所を何度も見せちゃうぞ!」というめちゃくちゃ暴力的な脅しだった。
正直この映画ではカーンの人物像が伏せられたままなので、アントマンだから向き合わないといけない敵という必然がなくて「アントマン」という単品シリーズ作品としては弱い。
これまではなんだかんだで「ただ娘を愛する普通のパパがヒーローとして頑張る」という点が熱かった。
一作目は娘と上手くいかないハンクに自分の未来を重ねたり、自分と同じ様なハンクの弟子でありながら闇に堕ちてしまった敵と戦うのが、彼という人間だから向き合わないといけない必然性を感じれたのだけど、今作はそれが無い。
一応「量子世界の住人が困っているから頑張る」という名目ほあるけどそれだけだとやっぱり弱い。
同じ種類の敵を描いた「ロキ」のドラマでは、変異体が生まれやすいロキというキャラクターとそれぞれが協力したり裏切ったり争いあったりする様子が、これから起こるカーン同士の争いとかを示唆している様にも見えたし、カーンが出てくる必然性があった気がする。
それでも娘の為に頑張るお父さん要素は相変わらずグッとくるものがあった。
特に絵的にも面白い何万にも分かれたアントマンが娘の為に想いを一つにして集まって人間タワーを作るシーンとか、普通のおじさんが家族の為に頑張る健気さみたいなものを感じて好き。
ジャネット
今回のメインストーリーは彼女の物語だった。
量子世界での故意じゃないけど自分がした事の落とし前を家族と協力する事で乗り越える話になっていてその点に関しては結構楽しく観れた。
ただ最近のMCUの作品全部に言えるのだけど、その前にみんなで情報共有していたらこんな事にならなかったよね?という点は野暮かも知れないけど気になる。
サノス並にヤバい敵が量子世界にいるのを分かっていながら何も教えずゴーストの体調改善の為とかで、アントマンを送ったりしていたのは普通に駄目だと思う。
あとビル・マーレイ出しながら、あんだけなのはどうなのよ。
ここまで彼女の物語にするならラストもサシでカーンと戦うべきなのは彼女だと思うし、スコットとの殴り合いが最後の見せ場になるのはどうなのかと思う。
まあ次のアベンジャーズに向けてもしかしたら彼女が大きく関わってくる可能性はあるので、ここで自己犠牲みたいな展開は早かったのかも知れないけど。
キャシー
「アベンジャーズエンドゲーム」の時と俳優さんも変わっているし、性格も変わっている感じで色々とチューニングし過ぎな印象もするけど、演じたキャスリン・ニュートンはやっぱり魅力的だったので、新たな若いアベンジャーズメンバーとして今後の活躍も凄く楽しみ。
「正しい事がしたい」という思いによって留置所に送られているシーンを見ると、似た者親子になってしまった事が困りつつもちょっと嬉しそうなスコットとのやりとりが良かった。
本人は量子世界に信号を送った事を後悔していたけど、元はといえばシルヴィが「在り続ける者」を殺した結果なのであんまり気にしないでと言ってあげたい。
ワスプ
カーンと母親との関係や、アントマン父娘のエピソードがメインになった結果、正直今回は割りを食った印象。
ラストの量子世界に残ってカーンと戦うアントマンの加勢にくる所はかなり熱いシーンだと思ったけど、結局すぐに元の世界に戻れてしまう展開はなんだかなぁという感じ。
あと他の登場人物でいうと、MCU初登場のモードックの意外な人選は「なるほど!」って感じだったし、モードック独特の見た目の不憫さがしっかり表現されているのが良かった。
その他気になった点で言うと、「一旦敵に捕まって抜け出す」のパターンが繰り返し過ぎな印象で、後半あたりから誰かが捕まる度「またかよ、、、」と思いながら観てしまった。まあこれもMCU作品全部に言えるけどいくらなんでも今回多くないかな。