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「レベル・リッジ」の感想(ネタバレあり)
Netflix配信限定作品。
主人公テリーが警察に拘束され金を奪われるやりとりから会話劇として面白くて、警察の横暴に対して冷静に受け止めながらも、明らかに只者ではないオーラが滲み出てるテリーの眼力に観ていて引き込まれる。
そこから警察側の嫌がらせに観ていてイライラしてくるのだけど、それよりも更にテリーの眼のギラつきがどんどん増してくるのがハラハラしてくる。
明らかに怒らせてはいけない相手を怒らせているというのが佇まいだけで伝わってくる。
この映画で彼が助けたい従兄弟と唯一やりとりを見せるバスを自転車で追いかけるシーンが、テリーにとって従兄弟を助ける事の切実さと、目的の為にどこまでも粘り強く諦めないある種の異常さも際立つ感じだった。
後の顛末を考えると、ここでのかろうじて出来たグータッチが切なく響く。
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そんな彼がためにためて遂にブチ切れ、警察署に殴り込みをかけるシーンから映画の温度が急激に上がってくる感じで、ここの署長とのやりとりが本当に面白い。
「PACEだ」と話しながらジワジワと主人公が凄みを増してくる様な演出が良いし、「精神が最強の武器」という彼を象徴するセリフが出た後、あっという間に警察署を制圧してしまう展開が熱い。
ここから一気に舐めてた相手が殺人マシン映画的な面白さが増してくる。
暴力で圧倒する展開にカタルシスは感じつつも、ここの警察署立て籠りは普通に考えてこの後、彼の立場が悪くなるだけだし、そこも含めてどう切り抜けていくのか目が離せなくなってくるし、何とか従兄弟救出へと繋がっていくのが本当に面白かった。
しかし結局従兄弟の命を救う事が出来ずに、警察側の要求を飲む展開でテリーの心が一度折れてしまうのだけど、ここから警察側が「そこまでやる?」と観てるこちらもドン引きの外道ぶりを露わにしていき、再び戦争状態に入っていくのがめちゃくちゃ面白かった。
終盤に警官の1人が「誰を撃てば良い?」というセリフが示す通り、これまで何も考えず従ってきたそれぞれの警官たちが、自分の中の正しさと向き合う様に混戦になっていく警察署前での銃撃戦もクライマックスに相応しい面白さだった。
ここでテリーがここぞとばかりに柔術で戦闘不能にしていくアクションシーンがめちゃくちゃカッコいい。
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主人公を演じたアーロン・ピエールの存在感が圧倒的で、これまで観た作品だと「もっと遠くへ行こう。」の印象が一番強かったけど、相変わらず立ってるだけで凄い圧だった。
身体のデカさから只者じゃない雰囲気が伝わってくるのだけど、何と言っても眼力の強さが主人公の精神性を象徴している様だった。
強さだけじゃなく人間的な弱さもしっかり感じられる表現力も素晴らしくて、中盤で従兄弟が亡くなり、警察側の要求に折れる展開での、思わず涙が吹き出てくる泣き方とかもグッとくる。
元軍人の男が小さな町に余所者が訪れて警察からの理不尽な嫌がらせに、遂にブチ切れて1人vs町の戦闘になっていく流れとかは、とても「ランボー」的だし、警察側が町の為に悪事を働いてる感じとかは「コップランド」を連想したりした。
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その他、サマー役のアナソフィア・ロブも最初のただ主人公のサポート役なのかと思っていたけど、彼女自身の切羽詰まった状況に警察側が容赦無く切り込んでくるのがなかなか辛い。
テリーの様な特殊な能力が無いので観ていてハラハラするし、最終的にそれ故にテリーも窮地に陥っていく。
そんな中でテリーの影響でどんどん吹っ切れて立ち向かっていくのがグッときた。
ラスト車の窓からクソ野郎を落とす所はスカッとした。