悪魔に取り憑かれた女の話6
第6話「解散までのカウントダウン」
家出をして埼玉に住んだ
仕事を見つけたけれど
収入の半分が家賃半分が保育料
極貧を意地でも乗り切ろうと
仕事を探しながら働いていた
もちろん聖飢魔IIを観に行く
余裕はまったくなかった
あ、この頃が今までで
1番スタイルが良かった頃
後に良い職場に恵まれて
収入も増えた
休みも希望が叶ったので
取り戻すかのように
車で行ける範囲はミサツアーを
追っかけていた
デビュー当時から解散の日が
決まっていた
その頃にはもうあと1年というあたり
今はないけど千歳空港の水槽前で
荷物待ちの友を待ちながら息子と
魚を見ていたら世を忍ぶ仮の姿の
デーモン閣下がスーッと隣に。
緊張のあまり話しかけられなかった
息子よ
連れ回してごめん
そして私が26歳の時
宣言通り彼らは1999年12月31日
解散し地獄に還っていった
私の中ではただの
派手で愉快なロックバンドではなく
弱い心を幾度となく立ち直らせた悪魔
最後のミサを見終えた
東京ベイNKホール前で
しばし立ち尽くしていたが
春日部まで車で帰る
という現実に戻り
エンジンをかけた
よし
いくぞ
「穴があいたようだ」と
周りは言っていたけれど
私には黄金に輝く鍵を
胸にかけられた感覚だった
♪早くゆけ早くゆけ
見失わないうちに辿り着け
早くゆけ早くゆけ
夢にまで見たELDOLADO
ELDOLADO
次回第7話
「5年に1度」
お楽しみに
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