A00 店舗内装BIMのはじめ方
※2023年より、株式会社フローワークス 店舗内装チームにも所属しました
Vectorworks architectを使って、店舗内装BIMテンプレートを開発しています
自身の事務所もあるので、二刀流になりました
(以下、株式会社フローワークス:FW)
BIMの技術・状況を
FW社内やBIM導入支援先
ソフトメーカの担当者さんから見聞きし、状況に詳しくなってきて
BIMソフトの選び方
BIMでできること
BIMのまなびかた
が、そもそも世の中に、正確に伝わっていないと思ったので
noteにしておこうと思い、書き始めました
結論からいうと
店舗内装BIMは
ソフト(Vectorworks architect)の柔軟性
がないと 実施を最後まで対応できません
以下に、その理由を順を追って、整理して書いていきます
0 BIMソフトはどれがいい?
BIMソフトは、メジャーところで大きく3つあります
基本的には変わりませんし、大きな差はない
BIMとして、やってること・できること、内部構成は同じ
と前回noteに書きました
ただ、設計会社と協力会社までを視野に入れると
その選び方は、変わることがわかりました
以前のnote「A00 BIMのはじめ方」で 書いた
3大ソフトの特徴をもう一度書いておきます
Revit (意匠だけならRevit LT)
は建築土木の巨大プロジェクトに向いています
統一Formatなので、関わる人数が多いプロジェクトでも
情報のやりとりに不具合が出にくい特徴があります
大手企業やゼネコンに、主に建築・土木系に導入されています
ざっくばらんな言い方をすると
型が決められたソフト
設計施工連携、構造解析、チーム作業に有利
ArchiCAD
大手企業、建築土木系ソフトでRevitと2大シェア
扱いがRevit、vectorworks に比べ独特らしいです
学生無料で、使える学生さんが多いです
Vectorworks Architect
中小の意匠系 アトリエ系事務所に向いています
ALL in ONEで機能ソフトが入っていて
UIがadobeに近く、ビジュアライズ面が優秀
レンダリング時間の多さはTwinmotion連携で解決しています
汎用性が他社ソフトより高いため
習熟度を求められますが
その分、他社ソフトにはない自由なOUTPUTデータを作れます
Formatをカスタマイズでき
最近はRevitとの親和性を高めてきてます
1 さいきんのBIMの動き
・2017年:アメリカ スターバックス 店舗デザインチーム
RevitからVectorworks へ移行
11週間かかっていた設計デザイン業務を4週間へ短縮
Revit、Indesign、Photoshopなどの複数ソフトの変換の手間が
Vectorworksひとつで対応可能に
※Vectorworks UNIVERSITY内-限定動画(要サービスセレクト契約)
スタバチームが、RevitからVWへの転換を決断したことは
店舗内装では、BIMソフトに差があったことを客観的に示していると捉えています
ある人は、この時期から
スタバのデザインが変わった気がすると言っていました
私はわからないと答えたのですが、どうなんでしょう?
事実であれば、VWに優位性のある使い方がありそうです
・2022年:FW社がBIMテンプレートを無償配布
A&A社(現:Vectorworks Japan)と共同開催するBIM CAMPに参加してから
友人の建築設計事務所
私の内装設計事務所
で、BIMの共同設計ができるように
BIMを分けて使う試みをしていました
・2023年:FWとして、店舗内装企業へのBIM導入支援
FW式のBIMテンプレートを
企業に合わせてカスタムして、店舗内装に対応させようとしていました
しかし、内部設定やUI、使うツールの種類が
店舗内装の方が圧倒的に少なくて済むことが
具体的に見えてきました
2 BIMはひとつなのか?
いわゆるBIMソフトは、大手スーパーゼネコンの要望で作られました
当然ですが、ソフトのツールの中身は建築設計のためのものです
法規・構造・設備・施工
と、建築がシームレスに協業するために作られたものです
そのBIMソフトは、本当に店舗内装に対応できるのでしょうか?
この事実を、誰も証明も言及もしないまま
BIMはひとつしかないと思いこまされ
対して違わないソフトの差だけで
内装設計も選ぶしかない状況に見えます
メーカさんは開発がメインなので
実際の建築や内装の実務知識は持っていません
ヒアリングをしながらツール開発を行っているのです
大きな声では言えませんが
私が実際にお聞きしたことは
建築設計は
決まった法規や構造材の規格があるからツール化できた
内装設計は
人ごとに全く違う作り方をするので
何を作っていいか全くわからなかった
という内容でした
つまり、今現在のBIMソフトは
内装設計を理解した上で作られていないと思います
私たちが
使いやすいからソフトとツールの優位性を見出して
使っているのです
2023年末頃
わたしがFWのBIM テンプレを内装用にカスタムしているとき
FW横関さんや建築メンバーと打ち合わせする際
従来のBIMテンプレの作り方と、内装カスタムテンプレを呼び分けるために
内装BIMテンプレートと呼びはじめました
その後FW内で定着し、認識され、FWの2024年の抱負で
横関さんがHPに記載したのが、世に出した始まりのような気がします
現在、建築BIMと内装BIMは
言葉だけではなく
テンプレートの中身も含め、全く違うものとしてFWで両立しています
店舗内装BIMは、実際の導入段階で
FW横関さん、私、顧客の ばちばちと聞こえる意見の中
一から作らなければ内装BIMはできないという判断のもとに、出てきたものです
いまあるBIMが、そのまま内装で使えるといったものとは中身が違います
3 内装BIMの中身はなにか?
建築BIMの中身が
法規・構造・設備・施工
と、建築がシームレスに協業するために作られたものと書きました
そして、BIMはそのままの形では内装BIMに馴染見ません
理由は
・計画・施工規模が圧倒的に違う:関係法規、面積、縮尺、金額
・企業のスタイル:内装は「内装設計+施工管理」スタイルが多い
・工種:建設業29業種中、9業種程度
私は、内装テンプレを自身で作ったので、上図の違いが見えてきたのですが
BIMソフトが、そのまま内装に当てはまると言うことに無理がある気がします
大は小を兼ねるの考えなのでしょうが
大の箱が大きすぎて、一言で言うと繊細さに欠けるのです
その割に、内装では使わない建築の機能や設定で溢れ
UIを著しく落としているのです
内装BIMの中身は
カタチ・マテリアル・コスト
にフォーカスする必要があります
なぜなら
内装設計者の業務の中身だからです
なんでもできるものは、実はなにもできない
と言うように
BIMソフトなんだから、内装BIMもできる
と思うのが一番あぶないと思っています
実際に、BIMソフトを導入している企業の
内装設計の方達の詳しい話を聞いていますが
一人も実施で使える状況になっていません
具体的にお聞きすると
最初のモデリングから
基本図を立ち上げるところまでは大体できていますが
その後の、家具図・建具図などや納まり詳細図など
案件ごとに、表現が違う図面が作れずにいます
結果、その部分は2Dで書いているそうです
日々BIM研修を受けていても
ツールの使い方説明に終始し
図面一式をどうやって作るかに言及がないようです
これは、BIMソフトではなく
モデリングソフトとして使われても仕方ありません
相当に高額なソフトなんですが…
4 この先のBIMのカタチ
現在FWでは
vectorworks の柔軟性を利用して
建築BIMと内装BIMを分けながら、データを連携させる方向に向かっています
もちろん単体でも、しっかりとBIM設計はできます
餅は餅屋
建築と内装は、分ける方が自然なカタチです
プロジェクトの担当業務をテンプレとして分けながら
複数の設計者も同時に作業ができ、協業設計が行えます
さらには、照明計画や家具セレクトを分け
データを分けた上で、参照して繋げていく
また構想として
A工事の進捗を作る進捗管理テンプレ
テナントデータを統合する内装監理的テンプレ
テナントC工事テンプレ
を連携させ、シームレスに繋いでいけます
内装で誰でも想像するけれでも
図面化とデータ化ができないため発注が難しかった造形を
パラメトリックオブジェクトの原型を作ることで実現ができます
(現在開発中)
vectorworksの柔軟性の強みは
一個人が拡張リソースとして開発していける点にあります
今年には
VWモデリングをAI画像化する機能が搭載されます
海外版はもうすでに搭載されています
BIMソフトはどこにするか
の選び方には、あまり意味がないと思っています
基本機能にはあまり差はないと思います
そうではなくて
使い慣れたソフトのUIやテンプレを使って
上のような
実務に柔軟に沿わせられるBIMであることが大事です
社内、社外の協業設計者の垣根を超えて
その案件ごとに
データと協業者を仕組み化できること
が実際に必要とされています
上図のような関係者数が多く、個別案件ごとに違う仕組みのBIM構成に
デフォルトのソフトだけで対応することは難しいです
フローワークスだからこそ上記のような
テンプレの仕組み化が作れています
要は、ソフトの中にさらに別のソフトを作っているイメージです
VWの中に、建築BIM、内装BIM、照明メーカBIM
同じソフト内だからこそ、繋ぎやすく扱いやすいです
この柔軟性は
VW以外のソフトではできないので
今後、業界の多数がBIM協業をする段階にまで浸透した時
ソフト性能による超えられない壁が見えてくると思います
5 価格
vectorworks architectは
2025年のサブスクから 245,300円/年
ネットを見るといろんなかたが
比較価格を出しているので比較してみてください
どこが安いかで考えている人が多い印象ですが
発注元企業の方に聞いていると
外注下請が継続的に購入できる価格かどうか
で大勢が決まると思います
下請けの毎年の負担額で考えた時に
VWサブスクが一番安いですが
各社、見え方の工夫をして
VWと変わらないように見せるところが多いです
6 いまのBIMの状況
VW需要が多い内装業界
下請けにBIMソフト二本持ちなんていうのは不可能で
かつ、BIM実施業務を外注に出したくても、操作できるようになるより先に
労働時間の壁があり、今のVWの2Dで実務をこなすしかない状況があり
VW以外になりづらい
というのが、外から聞こえてくる話です
いろんな企業やメーカが内装xBIMのことを話すときに
上記で書いた、BIMの中身のことを考慮した作りにしていないので
・モデリングソフトとしてしか使われていない
・基本図が主で、工種別全図面への言及はない
・概算見積もりが、工種別に取り出せるかの説明はない
・上記含めた作業が、簡単かつ習得できるかはユーザー努力任せ
になっています
FWの店舗内装テンプレは
ワークフローに沿った
INPUT(モデリング+情報)の作業をすると
OUTPUTが自動で出てきます
OUTPUTは
基本図はもちろん下記のキープラン、各一覧表など
あらかじめ設定したものを自動で吐き出します
建具図、造作図、家具図
サイン図
工種別の概算積算表
Twinmotionなどへのレンダリングソフトへの吐き出し
いまのところ対応できない図面はなく
それ以上の表現ができます
デフォルトにない
案件ごとに必要な図面やOUTPUTも
FWはテンプレをカスタマイズして提供しています
内装テンプレは
INPUT作業を行うだけで
モデリング、図面化、マテリアル検討、概算見積もり
を一手で出すことができるように作りました
一石三鳥、四鳥を得るテンプレートです
実際の実務でしていることが楽になるように
自身の経験をもとに構成しています
でも、BIMってこういうことですよね?
BIMソフトを選ぶときにぜひ確認して欲しいところは
上記のOUTPUT全図面の設定を
誰がやるのか?
してくれる会社はあるのか?
を確認してみてください
大抵の場合、自分で作ってくださいというはずです
しかし
このBIMテンプレ作りは、個人でやれるレベルを超えています
FW横関さんが8年
それをベースに私が2年
かかりました
2Dのソフトみたいな
クラスやレイヤは自分の好みで作る
なんてことでできるものでは全くないのです
伴奏する人
教えてもらえる人
実務でピンチの時にBIMを触れる人がいないと
恐ろしくて私でも導入できません
その点はメーカ対応できないところなので
FWのようなサポートする会社が
あるかどうかがポイントになります
現在、FWのBIMは企業導入にのみに対応をしていますが
各企業は、BIM設計外注を行なっていくと思います
その際、使い方を統一している人が指名されやすくなるでしょう
内装BIMテンプレを一般の方に提供できる機会が
あるとかないとか
それがもし出てきた時には、案内をしたいと思っています
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