飲物のなかでも、酒造りと良質な水とは縁が深い。古くから続く酒蔵は、良質な地下水のある場所に立地していることが少なくない。東西と北を山に囲まれた京都は水どころでもある。南に位置する伏見区には多くの酒蔵がある。
京都の中心に位置する京都御所も、よい地下水に恵まれている。京の三名水のうち、梨木神社「染井の水」と京都御苑「縣井」は京都御所内にある。「染井の水」は現在でも水質が維持されていて、飲み水、お茶、珈琲、炊飯や料理などのために汲みにくる愛好者も少なくない。平安時代から宮中で飲用されてきた由緒があり、甘くまろやかな味は茶の湯の水としても適しているといわれている。
2022年8月には、「染井の水」から自家焙煎のスペシャルティーコーヒーを淹れるお店、「Coffee Base NASHINOKI」が梨木神社境内にオープンした。
京都への観光では「抹茶」と「和菓子」を楽しみにする方が少なくないが、地元では喫茶店というか珈琲店が生活に根差している。伝統を大切にしつつも、モダンに海外の文化を取り入れてきた京都ならではであろう。
コミュニティライターのShozo Fujiiさんは、JapanTravelのイノダコーヒについてのコラムで、次のように書いている。
水と珈琲のマリアージュ。どちらか片方が主役ということではなく、お互いに引き立てあって、私たちに静かな時間を提供している。