読書ノート:マルティネス+シェッフル『物語の森へ』法政大学出版、2006年
千野帽子さんの『人はなぜ物語を求めるのか』で紹介されていた本書を読みました。著者はドイツの大学の教授、邦訳はドイツ文学の教授により「物語研究へのきわめてよい入門書」と紹介されています。
大きくは、第二部の「<いかに>提示」と第三部の「物語の<何>筋と物語られた世界」、言い換えると物語の「HOW」と「WHAT」から構成されています。
第二部はわたしには難解で、第三部から印象に残ったところを読書ノートとして引用します。
1960年代のアメリカの社会学者のラボフとワレツキーの論文『物語分析』は、物語の最小構造を6つの要素としています。
しかし実際の語りでは、6つの最小構造は複雑な全体に埋め込まれていて、純粋な形では見いだせない、そうです。わたしは最初のふたつの重要性が記憶に残りました。
また、歴史と物語との関連については、1973年のホワイト著『メタ・ヒストリー』を引用して、次のように説明しています。
記録を物語へと変形していくノンフィクションの考え方があります。しかし、この年代記の形式は、「なぜこれらのことがらがこのように起こって」「最後にはどうなったか」という問いには答えているものの、物語の「意味」、「その全体はどういう意味か」に答えるものではない、としています。
物語論的に「お話の意味」は、ロマンス、悲劇、喜劇、風刺などの「物語の種類」ないし「ジャンル」、典型的な「筋の図式」によって認識されると解説しています。ストーリーライティング的には、その物語のテーマであったり、動機(なぜなにを誰に伝えたいのか)だと意識しました。