ヴァサラ戦記オリジナル小説
暴神・閻魔伝
注意 オリジナル設定、オリジナルキャラが含まれます
むかーしむかし
あるところにそれはもうとても怖い
閻魔が地獄山にすんでおりました
悪いこは地獄山に連れ去られ
閻魔に食べられてしまうとの事です
これはそんな閻魔が仲間を手に入れる物語
〜ヴァサラ軍〜
「お呼びですか、殿」
「おお、エイザン。頼みがあってな」
「頼み…ですか」
「あぁ…地獄山の━━━」
今回のエイザンの任務は地獄山にいるとされる
閻魔を「鎮める」という事らしい
地獄山の閻魔は半分御伽噺でエイザンも疑問を持ちながら山へ向かった…
「なんだこれは…」
そこには、へし折れた木々、人のものと想われる骨や武器、食い散らかされた動物の死骸…
まさに地獄絵図。
元々地獄山はその険しい環境から修行の場とされていたが今は正に地獄そのものと化していた
「酷い事をするものだ…なにもここまで暴れるとは……」
エイザン自身もかつて「山鳴り」として大切なハボタン山を守ろうと荒れていた事があるがこれはその真逆、山を破壊し尽くそうという傷跡が山に残されていた
そんな風景を眺めていた、その時
「うああああぁぁぁぁああああ!!!!!!」
大地をも轟かさんとする雄叫びが響く
「まさか、これが閻魔の叫び声だというのか。なんという力強さ…」
あまりの迫力と声からでも分かる威圧感にエイザンは驚嘆した
「何か来るっ!」
ガキィン!!!!!
エイザンは向かってきた何かを刀で受け止める
刃と刃のぶつかり合う音が山に響く
「これは…なんという重い一撃…」
エイザンは距離を取ると閻魔の姿を確認する
そこには自分よりも小さい体躯、少年のような顔立ち、そして身の丈に合わぬ大きな太刀を持った鬼の形相をした閻魔がいた
「(この体の小ささであの一撃…それにこの果てなき感情は……)」
「……おっ、お前ハ…」
閻魔が口を開く
「俺の渇きを……満たしてくれる者か…?」
エイザンは何を言ってるのか分からなかった
が、考える暇もなく閻魔は斬りかかってくる
「っ……この惨状もお主の仕業か!何故ここまで暴れる!!」
「苛つきと……渇きが、収まらねぇんだよ!!」エイザンと閻魔は幾度となく斬り合う
「なんという…まるで悪鬼、野放しにすれば犠牲者が増える……致し方ない……」
「地の極み、外道菩薩!」「金剛夜叉明王!」
「うおおおっ!」万力の一撃を閻魔はくらい、そのまま吹き飛び、木へ激突する
「…倒れたか……?」
「うはははははははははっ!!これならっこれならぁ!!」「火の極み、地獄火炎!!」
「…っこの熱量、閻魔と名乗るだけはある……」
「っしゃあ!!」閻魔がエイザンに飛びつき刀を振りかざすがエイザンは避ける、地面に打ち付けられた刀からは、どす黒い炎熱が這い木々をなぎ倒す
「何がお主をそこまで奮い立たせる!なにがきっかけだ!」
「渇いてんだから…満たされてぇんだよ!!」
「ぐっ!!うぁ…」エイザンは蹴りをくらい膝をつく
「…っ……あ…」それと同時に閻魔の表情が陰る
「あぁ…ダメだ倒れないでくれ、立ち上がってくれ……」
「(何を言っているんだコヤツは……不安定にも程がある…)」
「頼む立ち上がってくれ、あぁ神様俺を許してくれ……どうかもう…1人にしないでくれ…」
「!!?」閻魔が呟くように放った一言をエイザンは聞き逃さなかった
「(そうか…コヤツはずっと1人でこの山で生きてきたのか…)」
周りには他の人間が住んでいる様子は無い
エイザンは立ち上がる、すると閻魔の表情が戻る
「良かった!死んでなかった!!続きをしよう!!」閻魔は容赦なく大太刀を振りかざす
「(……あの閻魔が、見方を変えるとまるで幼子のようだ…)」
「うあぁっ!!」
「フンっっ!!」エイザンは閻魔の刀をはじき飛ばし優しく抱きしめる
「なんだ!!!放せっ!!戦え!!」
「もういいんだ……戦わなくて……大丈夫だ…」
エイザンはリョウエイ和尚や思い出のハボタン山、ユリやヴァサラといった孤独にも負けない思い出があったが閻魔にはそれがない。
強者が生き、弱者が死ぬ地獄山では他人となれ合えば死ぬ。だからこそ閻魔は孤独を戦いで紛らし勝つ度に増える無自覚な愛への渇きを消すために山を、山にくる人々を破壊していた。
「放っ…せよぉ……」
「寂しかったろうに…もう大丈夫だ…私がいる…」
エイザンはかつて自分が和尚にしてもらったように閻魔を優しく抱きしめる
「あっ……うぅ……」
閻魔は涙を流し、生まれて初めて受けた愛を噛みしめながら眠りへ落ちた
「戻ったか、エイザン」
「ええ、殿」
「して……そやつは何じゃ」
「これが…例の閻魔です」
「なんと!こんな小さな子が閻魔だったとは…」
「ええ……殿…相談がございます」
「ほう…珍しいな…」
数日後
「旦那!ヴァサラの旦那〜!」
「おお、アサヒ。どうかしたか」
「アイツをどうにかしてくれよ!暴れっぱなしで手がつけらんねぇ!」
「うおあぁぁぁぁあ!!アサヒ!勝負!」
「やめろっ!さっきもやったろ!!お前はエイザンのところでも行ってろ!!」
「んなぁぁぁあ〜〜!」
「楽しくやってるようだな、エンキ」
「うん!ここ楽しい!!強え奴いっぱいだ!」
「なぁ〜旦那、コイツ九か十番隊に移動させようぜ〜?ロポポとマルルならコイツでも喜んで世話するだろ」
「うむ…しかしエンキが自らアサヒを選んだからな…仕方ないだろう」
「……嬉しいんだか嬉しくないんだか分かんねぇな」
「うっはははは!!」
こうして地獄山の閻魔には大切な仲間が出来ましたとさ、めでたしめでたし
この閻魔…エンキが暴神となり十一番隊を率いることになるのだがそれはまた別のお話…
時系列、カムイ軍とヴァサラ軍の戦争が始まるすこし前