一次創作
今日は快晴。ここは未来的都市テラシティ。今日も人々の声で賑わっている。
現在は西暦2071年11月、車は空を飛ぶようになり、立体映像で絵が本から飛び出すようになり、愛想の良い手伝いロボットがレジを打つなど…科学はとてつもなく発展していった。
だがしかし昔を楽しむ者も少なくない
ほら、ここにもそんな変わり者が1人━━━━
ピピピピピピ、ピピピピピピ、ピピピピピ
旧型の目覚まし時計のやかましい音が部屋中に響き渡る。
「んぁ…うるっせーー………なっ、!」
ガンッ!と目覚まし時計のスイッチを乱暴に押しアラームを止め、布団からだるそうに上半身を起こし寝癖のついた髪をガシガシと掻く。
『おはようございます、リューヤさん』
「Hey mm(ミリ)、今日の予定は?」
立体映像が空中に映し出され丸く可愛らしいシルエットをしたキャラクターが現れる
『ピリッピッ、本日の予定は10: 00に美容院の予約と17:00からジムとメモに記載されています。ちなみに現在の時刻は9:43です』
「…43ふん……」
『………ピッ、現在44分になりました』
「………やっべぇ急げ!!!」
拓磨は布団から飛び起き、髪型を整えて急いでタンスを開けて適当にシャツとズボン、それからパーカーを着て、焼いてもいないパンを食いながらドタドタと足音を立てながら家を出た
「あーもう最悪だもう……」
バイクとも自転車とも言えない乗り物に乗り拓磨は急いで美容院へと向かう
その途中で黒い影が角から飛び出してくる
転倒しそうになりながらもリューヤはその影にぶつからないように避ける
「…っぶねぇ……おいアンタ、大丈夫か?」
「…無事…。…そうだ、鉄槌山ってどこにあるか分かる?」
「鉄槌…ならアッチのバスに乗れば…」
「そう、ありがと」
ローブで身を隠したその人は道のりを聞くと足早に去っていった
「んだアイツ……いや美容院!時間やばい!」
………
16:00 リューヤはジムにいた
不機嫌な様子でベンチプレスを持ち上げている
「…ッン……グゥゥ……畜生…あのクソ店主…10分遅れたくらい許せよ……クソ……」
ヤケクソ気味にリューヤがトレーニングをしていると近くからコソコソと話をしているのが聞こえてきた
「おい聞いたか…?」
「あぁ、幕太刀の怪人だろ?」
「研究室でも何かは解明できなかったらしいぜ?」
「UMAってやつか…?ちょっと怖ぇな」
「バカ言え、ただの噂だろ」
「(怪人……な…)」
リューヤはその噂話が妙に気になったまま帰宅した
「ただいま〜…Hey mm、幕太刀の怪人騒ぎって知ってるか?」
リューヤはあまりに気になって調べてみる
『ピリッピッ、はい、検索します。……見つかりました。読み上げます…幕太刀の怪人とは最近噂になっている過去のUMAのようなものである。二足歩行で体長は170〜190などまばらである。
目撃者の証言は巨大な牙が生えていたり、タコの足があったり、腕が4本あったりという不可思議的なものばかりである上に証言が一致しないので実在はしないとされている。
また鉄槌山でも似たようなものが発見されているという情報もある…以上です。』
「うぃ、サンキュー……鉄槌……どっかで…」
少しの疑問を抱いたままリューヤは眠りに落ちた
次の日の朝、特に予定の無い休日にテレビをつけ、リューヤは衝撃を受ける
『昨日未明、鉄槌山で怪人騒ぎが発生しました。怪人は2体現れ、その場にいる登山客8名を襲いました。』
「鉄槌山……鉄槌………あーーーー!!!!!」
『ピリッピッどうしましたか、リューヤさん。通報の準備は出来ております』
「あぁごめん、なんでもない……なぁmm俺の最新バイクのメンテ今日で終わりだよな」
『ピピ、本日の13:00にメンテナンスが終了予定です。追加料金2000円を払って家まで送っていただきますか?』
「うん、頼む。あと腕時計型デバイスにmm移っといて」
『了解しました』
「さてと色々準備するか、カメラと…護身道具…」
リューヤはカバンにカンパンや護身道具、撮影用カメラなどをカバンに入れてバイクに乗り鉄槌山へと向かった
『リューヤさん、録画を開始いたします』
「おう、頼む」
リューヤは鉄槌山に5つ程小型カメラを仕掛けて、例の怪人を1目見ようと行動していた
「仕事も最近は全然依頼こねーしな…丁度いい暇つぶしになるだろ…」
そうして鉄槌山で待機し5つのカメラから腕時計型デバイスに送られてきた映像を交互に確認する。
「ん〜…やっぱ怪人なんていねぇんじゃねぇの?…でも被害者が出てる訳だしなぁ…」
『ピピッ、リューヤさん、18:00をお知らせします』
「もうそんな時間か…そろそろカメラ回収して帰るとするか〜…」
リューヤはカメラを回収しに行った。
3つ目のカメラを回収した時、木が倒れる音がした。
それも徐々に折れる音ではなくチェーンソーなどで倒される音でもない。表現するならひねり潰される音、というのが適切だろうか。
そしてそれは、明らかに人が起こせる音では無かった
「(んだ、いまの音……)」
リューヤが警戒していると腕時計型デバイスに文章が現れる
『生命反応を感知しました。人では無いものと推測します。限りなく危険なのでどこかに隠れることを推奨します。隠れ場所候補:木陰、草むら 体制:うつ伏せを推奨します。』
人工知能であるmmが、危険を察知しメッセージを伝えた。
リューヤはそのメッセージを受け、なるべく音を立てないようにゆっくりと、そして気配を殺してうつ伏せになって隠れる。
隠れながら何が起きているのかという好奇心からうつ伏せではなくなり前屈みになりまだ見ぬ怪人を見ようとしている。
「……っっ…!!!」
リューヤは駆け出した。恐ろしいものを見たのだ。
噂から想像できるようなものでは無かった、何も分からない。分からないからこそ恐ろしい。だからこそ駆け出して逃げる、見つかった時のことなど考える余裕も無かった。
急な浮遊感を感じる、何が起きたのか分からず周囲を見渡す。すると自分の服を触手の様なものが掴んでいる。逃げられなくなったリューヤはパニックになる。
そんな時急に自分の体が照らされる、バイクがこちらを照らしながら向かってくる。
『リューヤさん、体を丸めてください』
「mm…?おっけ、了解ぃっ…!!」
バイクが怪人を轢いて吹き飛ばす。
その時ハッキリと怪人の姿を視認することが出来た
蛇のような鋭い視線を放つ瞳、何もかもを切り裂けるような巨大な爪、さっきまで万力の自分の服を締め上げていた尻尾、そして体全体に張り巡らされた六角形のような形をした装甲は明らかに人智を超えたそれだった。
それを見たリューヤはすぐにバイクを走らせる
「おいmm!アイツ4本腕でもタコ足でもなかったよな、あとカメラに映る位置なのに映ってなかったよな!」
『ハイ、どうやらあらゆる機械効果を無効にできるようです』
「なるほど…ぬぁっ!?」
突然爆発が起こりリューヤは吹き飛ばされる
怪人の口は先程よりも3倍ほどの大きさに開き、その口の周りは熱により揺らぎ、唸り声をあげている
「いっつ……なんだよ、どういう仕組みだ!?」
『ピピッ、おそらく炎を球体にできる特殊器官が存在するようです。』
「怪人っつーだけあるな…アッツ…」
すると突然リューヤの前に大きな影が表れる
その影は虎のような怪人で目の前の蛇のような怪人と同じような唸り声をあげている
「2体目…?俺…死んだか……?」
「そこのお前、無事か」
「ふぃえっ…!?」
2体目の怪人が人のような声を発した事で逆にリューヤの方が怪人のような裏返った声を出してしまった。
「無事ならばとっととそれに乗って帰れ。死ぬぞ。」
「あっ…うす!!」
リューヤはバイクを起こして跨り再び走らせる
2人の怪人はこれでもかと殴り合っている。ニュースの被害者達はこれに巻き込まれたのだろうと思った。
蛇の方が強いのか虎は押されているように見える。
「がほっ…うるぁあっ!!!!」
虎の強烈なパンチが蛇の顔面を捉える。人間ならば一度に10人は殺せるだろうである威力だったが蛇は首を伸ばしてその威力を殺していた。
蛇の毒牙が虎の首を襲う。そうすると虎の体はパズルのピースが崩れるようにパラパラと崩れ、中からローブを着た人が表れる。
リューヤに道を尋ねた者だ。今にも蛇はその子を喰い殺そうとしている。
「……あぁっ!!!クソがっっ!!」
リューヤはUターンしバイクの前輪で蛇の頭を抉る。
体表面を削りダメージを与えたので蛇は後ずさる。
「(これ結構イケんじゃね…?)」
そう考えた矢先、尻尾によりバイクを取り上げられそれがリューヤに投げつけられ、リューヤはバイクの下敷きになる
「っあ……mm…スケートに解体しろ、2秒以内だ」
『既に完了しています』
「流石だ」
バイクは前後二つに割れてローラースケートの形に変形する。リューヤは身を起こしそれを履くとバイクの出せるスピードと同じスピードで蛇怪人の胴体に蹴りを打ち込む
「ちったぁ応えたろ…」
だが蛇怪人は倒れない。そんな時リューヤは足元にある箱を手に取る。
その瞬間箱は四散し中から筒状にまとまった黒煙が表れ、リューヤの手に纏わりつく。そしてその黒煙はペンの形となりリューヤの目の前に契約書のような四角い立体映像…いや魔法陣のようなものを映し出す。
「…こうか……」
リューヤの体は人知れず動き出し魔法陣にサインをする。
すると魔法陣はとてつもない輝きを放ちそれを受けたペンは少し巨大な鍵へと姿を変える。
リューヤの脳内にイメージが浮び上がる。それと同時にリューヤは何故か手の甲に現れた鍵穴に鍵を差し込み、そして叫ぶ
「怪錠!!」
バキン、と何かが壊れる音がした。先程よりも多い黒煙が今度はリューヤの体全体を包み込む。
いずれリューヤの体が見えなくなった時、煙であるはずの黒煙にヒビが入り砕け散る。
その中から現れたリューヤは目の前の蛇と同じような怪人の姿へと変貌していた。
「ギッ…ジャァァァァァァアアアアアア!!!!!!」
とてつもない奇声をあげながら蛇怪人は向かってくる、リューヤの眼前に大木をひねり潰した拳が迫る。
それをリューヤはいとも容易く掴み、そのまま拳をグシャリと潰した。
そのまま引っ張り蛇怪人の胴体を手繰り寄せて胴体を殴り、蹴る。
蛇怪人が後ろへ飛んだと思ったら首を伸ばし牙でリューヤの頭を狙う。先程、虎怪人がやられた攻撃である。
その噛みつきをリューヤはしっかりと避けて伸びた首を掴む。グイッと引っ張ると蛇怪人の体は浮いた、そのまま体をひねり、回転させて蛇怪人を振り回した。トドメをさそうと蛇怪人の頭を地面に押し付けて拳を力いっぱい握る。
その拳を振り下ろし蛇怪人の頭を潰そうとした瞬間、横から手が伸びてきて拳を止められる。
その主もまた怪人であった。
「素晴らしい力だ。…ですが残念な事にこちらも色々ありましてね…この人は、私が預かっておきますね。」
フクロウのような顔をした怪人はそう言うと、蛇の頭をつかみ風を起こして、リューヤが目を開いた瞬間にはその場から消えていた。
リューヤは怪人の姿から、人の姿へと戻る。
「んだ、今のは…ぁぐっ!!頭痛てぇし…体も痛てぇ……とにかくこの人連れて帰るか…mm」
ローラースケートはバイクへと再び変形して、リューヤはローブを着た謎の男性と自分の体を紐で結び、家へと帰った…
つづく(多分)