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【ショートショート】2, n-1次元の嫁

 新年。新たに来る年に皆が期待や不安を膨らませている。ある者は年半ばの20歳の誕生日を楽しみに、ある者は4月の入学を不安に感じ、各々一年の見通しを立てるのだ。
 一方、いわゆる“アニメオタク”と呼ばれる者たちの目はそんな先ではなく、放送眼下目前に迫った冬アニメにあった。

 「今期の冬アニメは豊作すぎて覇権候補が多すぎるんだよなぁ。」

 安田は中学生のころからの生粋のアニメオタク。新年早々通話しながらオタク仲間である木下とカードゲームを嗜んでいる。

「ゲームばっかしてる俺はアニメのことはイマイチわかんないんですよ。最近配信でよくやってるTerrariaやりこむので数か月はとけるだろうな。」

「おまえたしか配信しながら負荷かかるゲームやるために良いゲーミングPC買ったんだもんな。」

「そそ、まじでサクサクなのw 安田さんアニメ見るだけならお金余ってるでしょ?俺が良いパソコン見繕いましょうか?」

「なんだかんだ推しキャラのグッズ買うので金なんてないんだよ。正月空けたらバイトのシフトたくさんよ。」

 そう、アニメオタクには金がかかるのである。推しキャラのグッズはひっきりなしに発売され、好きな声優のイベントに行くためには遠征費がかかる。

「いや~、実在する声優ならまだしも実在しないキャラのグッズをたくさん集めるのはあんま共感できないんですよね。推しキャラに本気になるのもよくわからなくて。一個次元が下のキャラに何でそこまで…って。」

「なゆたんは俺の嫁!」

「それっすよw 触れられない存在に夢中になんでなれるのか。だったら現実の女に恋したほうが幸せになれますよ。なんなら今日日金払えばかわいい女の子とひっつけるんですから、俺ならそっちにお金使っちゃいますね。よくネットでツッコミみたいに使われてるけどアニメキャラならなんて点の集合じゃないすか。よく発情できるなーって。」

「まあ、それはその通り。俺だって彼女いたことないわけじゃないし現実の女の良さはわかってる。ただ逆に考えろ、点だけで理想の女の子を自由に創造することができるんだぞ。自分の好きな要素が詰め込まれ、いらない要素を一切持たないキャラがいたらそれが点でもキュンとしちまうぜ。お前はそんな経験がないだけだ。」

「そーゆーもんなんすね。まあ試しに今度1次元で抜いてみます。」

「いい心構えだ、ちな俺は1次元と2次元はだいたい1:1の割合で使ってるな。」

「んなこと知りとうなかったです。」

今年は1次元への風当たりが弱まりそうだ。

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