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まちづくりにおける「多様性」と「寛容性」ー”ちょっとやってみること”を可能にするには

市役所をハックする!シーズン2「世界の市役所をハックする!」 8月のオープンレクチャー

6ヶ月限定「世界の市役所をハックする!(通称:モリゼミ)」がスタートしてから、毎月第1日曜の午前9時から「オープンレクチャー」を開催。今月は「オランダ」をテーマに実施しました。

【世界の市役所をハックする!】モリゼミオープンレクチャーvol.3 オランダから学ぶ気候変動との付き合い方〜私たちは地球のために何ができるのか〜

オランダから学ぶ気候変動との付き合い方

「オランダから学ぶ気候変動との付き合い方〜私たちは地球のために何ができるのか〜」をテーマに、森くんから1時間のレクチャーをいただきました。

わたしが一番関心をもったのは「オランダと干拓」の歴史です。海面下地帯を13世紀以降に干拓を進め「国土の20%」を得て、なお、オランダの国土の30%は海面より低い。

地域・不動産と向き合う

私が塩尻市の地方創生に関わった2015年から、信州大学との共同研究を進めていて、「地域活性化システム論」「地域ブランド実践ゼミ」の講義をとおして「地域とは」「活性化とは」「ブランドとは」を学生と一緒に学んで実践していきます。その担当教授の林靖人さんが地域ブランドの講義の中で「不動産と不便益」について紹介してくれたことを思い出しました。

塩尻市は400年前から中山道の宿場町で栄え、塩の道などが交差する交通の要衝として人の交流がある町です。150年前に桔梗ヶ原の開拓が始まり、100年前からワインの醸造がはじまり、いまは市内に17のワイナリーが存在します。

塩尻市は、400年前から人口の変化はあっても、塩尻市の土地の面積が減ったり増えたりもせず、標高735mも変わらず、太平洋や日本海からの距離も変わっていない。当時は当然徒歩(または馬)で移動していたので、海から塩を運ぶには一番遠い場所のひとつでした。でもその地理的に不利な条件のなか、「どうすれば海からわざわざ塩を運んで来てもらえるか」「その価値をどうこの土地で生み出すのか」を先人の方々は考えて、実際に作ってきたのではと、最近はそんな風に思いを馳せるようになりました。実際に木曽漆器、塩尻産ワイン、高原野菜など、その土地の気候や土があるから作られた地域ブランドが現在も塩尻市の特産品となっています。

どうして「しおじり市」っていうの?(しおじり市キッズページ)

クリエイティブ・クラス 3つのTとは

トロント大学ビジネススクールのリチャード・フロリダ教授の「クリエイティブ都市経済論」で創造性のある人材を「クリエイティブ・クラス」と定義している。イノベーションがどのような人材の地理的集積で生まれるのか、都市間を比較するため、クリエイティブ・クラスの地域分布と、その経済的効果を理解するための指標として、3つのT、技術(Technology)、才能(Talent)、寛容性(Tolerance)の重要性を述べている。

「文化芸術の振興によるまちづくり」総務省 平成23年度第6回地域力創造セミナー

私がリチャード・フロリダを知ったのは2012年2月22日(水)に東京都千代田区で開催された「総務省 平成23年度 第6回地域力創造セミナー」で登壇されていた野田邦弘さん(鳥取大学地域学部地域文化学科教授)からです。野田邦弘さんからは、横浜市役所在籍当時に、1985年に始まった「欧州文化都市」をベースに横浜市の「文化芸術都市創造事業本部」立ち上げ、「みなとみらい21」「黄金町」でのアーティストインレジデンス、BankARTなど、現在の「創造都市横浜」の取り組みにつながる事例を紹介いただき、その際に「クリエイティブ資本論」を引用されていました。*当時は、AAF(アサヒ・アート・フェスティバル)の加藤種男さんを追っかけて参加したセミナーで偶然出逢えました。

わたし自身、野田邦弘さんの講演を聞いた2ヶ月後に「空き家プロジェクトnanoda」をスタートしましたが、「地域づくりとアート」「寛容性」「ソーシャルイノベーション」などのキーワードを意識してnanodaをスタートし、「〇〇なのだ」と名付けたら、ちょっとやってみるをほぼ唯一のコンセプトに現在までの8年間、商店街にオルタナティブな拠点を運営してきています。その際にも多様性と寛容性を意識して、既存のものとは別なものを、小さくまずは表現してみる(小さくやってみる)を実践してきました。

*2012年当日はアートイベントも主催していました。(写真は現代美術のアーティストと実施した「30時間トークマラソン」の様子)

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まちづくりにおける「多様性」と「寛容性」

オランダのまちづくりの特徴として「多様性」というキーワードがあったが、わたしはリチャード・フロリダの著書を思い出し、「寛容性」というキーワードでぼんやり考えてはじめていました。長い時代のなかで変化のない「不動産」で新しい価値創造をうみだすときに、すぐに成果が出るわけでなく、様々な人がその人の価値観や経験でいろんなプロトタイプや実証を実験してみる、それが許される地域性(寛容性)が、その地域(土地)だからできる唯一無二の新結合(イノベーション)が生まれるのではないかと。

現在、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が策定され、「関係人口」という言葉が定義された。「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来ただけの「交流人口」でもない、特定の地域に継続的に多様な形で関わる人とされ、地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されています。

「世界の市役所」から学び、日本の地域に社会実装するには

塩尻市においても、地域外のプロ人材(クリエイティブ・クラス)との関係構築を図るとともに、地域の人材との協働・共創による地域課題の顕在化を進めていき、その課題解決をビジネスの手法を取り入れることで、地域において持続可能な仕組みを生み出していく、その過程において「寛容性」を意識して、日本で初めての取り組みや仕組みを生み出したいと強く思いました。

2016年1月から本市で実施した「MICHIKARAー地方創生協働リーダーシッププログラム」の取り組みは、令和2年度で6期目を迎えます。また、MICHIKARAで培ってきた「地域課題設定」の思考力、オープンイノベーションの仕組みを評価いただき、令和2年度 総務省「関係人口創出・拡大事業」のモデル事業に採択されました。今週金曜日(8月7日)には、「地域課題顕在化研修(仕様書作成ワークショップ)」を実施し、地域人材とプロ人材(クリエイティブ・クラス)の協働・共創による地域課題解決の仕組みに挑戦します。

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ホンモノの地域課題で学ぶ「仕様書作成ワークショップ」/塩尻市主催「総務省関係人口創出・拡大事業」(MEGURUプロジェクト) 2020年8月7日(金)午前9時ー正午 オンライン開催

多様性と寛容性のまちの象徴として「長野県塩尻市」が注目されるように、オランダや他の「世界の市役所」での事例を学び、塩尻市だからできること、この土地だからできること、わたし「山田崇」だからできることを小さくとも、地域社会に目に見える変化を起こす、そんな実践をしていきたいです。

*表紙の書籍は クリエイティブ都市経済論―地域活性化 リチャード・フロリダ著 2010/1/10

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