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長い、長い、休日 第1話

 バケーションは当然の権利である。

 と聞かされていたが、一度も取得したことはなかった。俺は取るべきではないだろうと思っていたが、後輩で相棒のカネチカがそれを知ると、すぐに申請を出し、嘘のように通ったのは奇跡だった。なんだ取れるものなのか、と拍子抜けした。
 とにかく、初めて休みが取れたので、休日第1日目、家でのんびりと過ごそうとお気に入りのコーヒー豆を取り出したときだった。


「先輩!今すぐ来てください!!早く!」


 カネチカの悲痛な声が、俺の休暇を切り裂いた。
 ただ事でない様子に、俺は最低限の装備を身につけ家を飛び出す。

 ———それが、始まりだった。


  覚えているのは、目の前に迫った衛星。視界いっぱいに広がる流星群。衝撃。炎。半分炭と化した原生生物。無造作に押し込まれる感覚———闇、激痛、闇、闇………。 

 ———俺は、カネチカに呼ばれて地球へ行って。
 それからどうなったんだ?

「おっはようございまーす」

 という、聞き慣れたカネチカのチャラい声で目を覚ます。ぼやけた視界にアイツらしい色彩を感じた。
「———どうなったんだ?」
 声を出したつもりだったが、それは非常に掠れて声質も変わっていた。
「助かりました先輩!ありがとうございます」
 ぼやけたカネチカがお辞儀をしている。にしても、どうもおかしい。いつもと違うような?
 と、俺が違和感を感じていると、また別の気配がした。

「あの……なにか飲み物持ってきましょうか?」
「あ。助かりますー」
 見知らぬ男が部屋を出て行った。にしても視界が悪い。ピントが合っていないし、体もどこかぎこちない気がする。
「全然状況が分からない。どうなってるんだ?」
「ああ。無理もないですね。無茶させちゃいましたから」
 カネチカは、あの時の様子を簡単に説明してくれた。話を聞いていくうちに、俺の記憶も蘇ってくる。

 そう、俺は急に地球へ呼び出され、迫り来る衛星をぶち壊し、その影響で大切な装備がほぼ全壊してしまったあげく、むき出しの状態だとこの地球では生きられない為、緊急避難的に魂のない原生生物(ヒト)を装備代わりに装着したのだった。
 ただ、最悪なのはこの原生生物(ヒト)はほぼケシ炭だったうえに、無理矢理装着した所為で、俺が動けるようになるまでに時間がかかったようだ。この視界の悪さも体の不調もその所為だろう。
 説明の途中で、謎の男が水を持ってきてくれた。俺は恐る恐るそれで喉を潤し、やっとまともに声が出せるようになった。

「で、この人は?」
「ああ。この家の持ち主で、タナカさんです」
「———ちょっとまて。大前提なんだがカネチカくん。こんな話聞かせて良いの?それに、なんか分かった上で部屋とか貸してくれてるみたいだけど」

 俺たちは、ここ(地球)の生命体ではない。原生生物(ヒト)にとって、UMAみたいなものだろう。それを正体を晒した上に世話になっているのはおかしすぎる。それに、タナカという男もあまり驚いていないようだ。一体どういうことなんだ?
「ああ~…説明、なんかめんどく…」
「カネチカくん?💢」
「いえ、なんでもありません。そうですねぇ。先に言っておきますが、タナカさんは遭難者なんです。だから、我々のことを知ってても大丈夫です」
「は?遭難者?遭難者がなんで持ち家なんて持ってんだよ?」
「えっと…それはぁ………」
 カネチカが困っていると、タナカが助け船を出す。
「僕から説明します。……といっても、カネチカさんから聞かされたんですが、正直あんまり実感出来てません」

 と、よく分からない前フリをして、タナカが話し出した。覚悟はしていたが、その内容はあまり歓迎できるものではなかった———。


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