名探偵コナン 緋色の弾丸 羽田秀𠮷の”詰将棋”について調べてみた (4/24更新)
はじめに
映画本編のネタバレを含みます。
7回緋弾した後で記憶を頼りに考察しています。広い心で見ていただける方のみお進みください。
「迷宮の十字路」しかり、劇場版コナンにはしばしば実在の地名や名所が忠実に再現されて登場します。今回クライマックスシーンを大いに盛り上げた「詰将棋」についても、多少の地名変更はありつつもかなり忠実に実際のルートが再現されていました。
あくまでも記憶を頼りに書いているので間違ってるかもしれませんが、解釈の1つとして楽しんでいただければ幸いです。
結論だけさくっと見たい方は目次より「まとめ」に飛んでください。
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概要
新港浜(しんみなとはま)駅で犯人が新幹線から降り車で逃走します。追跡にあたり、赤井秀一の実弟であるプロ棋士・羽田秀𠮷がルートを指示するという展開に。指示は鴨池大橋で犯人の車に追いついたところからスタートします。「5手で詰める」と宣言した上で、まずは攻め方(FBI)を二手に分けるよう指示します。
1(キャメル・ジェイムズ)はそのまま(犯人を追い)、2(ジョディ)は今から言う地点で待機
なお、犯人の車は鴨池大橋に到着するまでに以下のルートを通ったとします(これは映画内でも秀吉の読みとして説明されていたので確定と考えます)。新横浜から港北IC付近を通過し、緑産業道路を経由して鴨池大橋まで。所要時間は約20分です。
(2021.04.20 21:00 追記) 犯人が小五郎のおっちゃんを振り切って逃走車に乗ったのはこちらの場所と考えられます。北口と篠原口(新横浜駅の南側)を結ぶ地下通路出口は映画の中で確認できます。
(2021.04.22 09:00 追記) おっちゃんはタクシーで追いかけますが、港北IC付近で見失います。見失ったのは小机大橋北川の交差点付近。背景にホテルトロピカル(映画内では「ホテルトロピカ」表記)と、オレンジ色の横線が入った崎陽軒らしき建物が確認できます。
港北ICから遠方に逃走するのではという意見が出る中、秀𠮷は複雑に考えない方がよいといって、リニアを確認できる鴨池大橋に向かったと予想します。
1手目 八王子街道近くの谷西駅へ
この後の「おまけ」に書きますが、都内・三田付近から東名高速で来たと思われるFBI車は、鴨池大橋の北側から入り、橋の上に停車していた犯人の車に追いつきます。
鴨池大橋から南方面へ109号線沿いに追跡をし始めたところで、秀吉は次のように指示します。
攻め方は八王子街道近くの"やにし駅"へ
実際の地名に"やにし駅"はありませんが、代わりに西谷(にしや)駅があります。この後の展開を見ても、西谷駅をモデルとしたと考えて間違いないでしょう。
この指示によりFBI車は109号線の途中で右折します。その地点は定かではないですが、西谷駅方面に向かうことを考えると、鴨居病院付近の交差点ではないかと推察します。画面上部(北側)から来たFBI車は画像の左側(西)へ右折します。なお鴨池大橋からこの交差点までの所要時間は約3分です。
地図でいうとこのあたり
2手目 109号線から梅の木交差点へ
玉方は109号線をそのまま進んで梅の木へ
玉方(ぎょくかた)は、詰将棋でいう相手方、つまり今回の劇場版では犯人の車を指します(犯人の車の動きも含めて5手というのがあらためてすごいですね…)
FBI車が離れたことで安心した犯人は、そのまま109号線を南下します。その先、16号線に突き当たるところが「梅の木」の交差点です。
この16号線がいわゆる「八王子街道」で、西谷駅のすぐ東近くの地点になるのです。
秀𠮷の指示は、犯人の車が八王子街道に出てくることを見越したものでした。谷西駅(西谷駅)に向かっていたキャメルカーは、八王子街道の西側から梅の木の交差点に進入し、見事に犯人の車に追いつきます。109号線直進のほうがもちろん早いのですがキャメルのドライブテクによるアドバンテージ込みでちょうどタイミングが合ったのでしょう。
後述しますが、そのまま後ろから追いかけるのではなくこうして別の道から追いつくことが、「詰将棋」として大きな意味を持つと考えます。
なお、梅の木の交差点のストビューをキャメルカーの視点で見るとこんな感じ。郵便ポストは映画でも確かにありましたね。
FBI車のルートは複数考えられますがこんな感じでしょうか。信号を避けて住宅街の裏道を通った可能性もあります。
3手目 環状2号線へ
攻め方は環状2号線へ
梅の木の交差点でエンカウントした2台はしばらく相鉄本線沿いにカーチェイスをしますが、犯人の車が途中で無理やりUターンします。
ここで秀𠮷は「環状2号線へ」という指示を出します。キャメルがためらうのも当然ですね。「犯人の車と真逆の方向に進め」という指示になるからです。赤いしゃんに言われて納得しないながらも環状2号線へ進路を切りました。
犯人の車とキャメルの車が分かれた位置ですが、残念ながら特定できていないのですが、梅の木の交差点と環状2号線へ乗り入れる場所の中間にあると考えるのが妥当でしょう。建物の絵から横浜信用金庫 西谷支店付近だと思っていますが、ちょっと確証はありません。
なおUターンした犯人の車は梅の木の交差点で右折し、元来た109号線に戻ります(なぜ右折したのか。こちらも後述しますが、詰将棋のポイントだと思います)
西谷駅から八王子街道(16号線)沿いに来たFBIの車は、(おそらく)東川島町付近から環状2号線に入ります。
不安になるキャメルちょっとかわいそうでしたが、しばらく進んだところでなぜか犯人の車が目の前に現れます。犯人がどのようなルートを通ったかというと、おそらくこうです。
109号線を北上した犯人は途中で右折し、環状2号線に合流したのです。
(2021.04.24 更新 合流地点を手前に変更。池の谷戸付近かと思うのですが、詳しい方情報いただけると嬉しいです。)
合流地点付近のストビュー(キャメル視点)
2台はしばし環状2号線上でカーチェイスを繰り広げます。途中で横浜羽沢付近を上空から見たような風景が確認できます。
4手目 玉方は車線変更し側道へ
玉方 車線変更し側道へ
焦った犯人は側道に下ります。実はもう新港浜駅(新横浜駅)の近くに戻ってきています。
なお側道に降りるシーンで、洋服の青山っぽい建物が(劇中では「青田」表記)登場しているので、場所はここで間違いないかと。
下の写真は進行方向(北東)から見たイメージ。右側の道路が犯人が下りた側道です。
5手目 新港浜陸橋下で王手
新港浜陸橋下にて王手
なんとここに、はじめに秀吉から「2は今から言う場所で待機」と言われて待っていたジョディがいました。場所はこのあたり。
建物も忠実に再現されていますね。
側道に降りた犯人からの視点、奥に見えるのはJR横浜線です。
被害を受けるエレベーター。
隣接するマンション
対峙シーンはエレベータ棟を右折した先の陸橋下なのでこのあたりです。
まとめ
1手目から5手目(王手)までのルートはこのようになります。
以下・地図提供 国土地理院(https://mapps.gsi.go.jp/)
犯人の逃走ルートは以下の通りです
キャメルの追跡ルートはこんな感じです。びっくりするくらい無駄がないです。さすが太閤名人です。
なぜ犯人の車がキャメルの前に現れたのか
八王子街道途中でUターンした犯人は梅の木の交差点で元来た道を戻るように右折しました。直進しなかったのは「その方向からさっき追跡車が来たから」だと思います。この先に別の追跡車がいるかもしれないという心理が働き、思わず右折したのではないでしょうか。
しかし一方で、109号線をそのまま北上すれば、それもまた「さっき追跡車が来た道」となります。そのため別のルートに進まざるを得なかったと推察されます。この時点で逃走経路としての選択肢はすでに少なく、結果として109号線を途中で右折して環状2号線方面へ向かうことになるのです。
実質1台で追跡しているにも関わらず、まるで複数の駒で追い詰めているかのようです。道の構造や犯人の心理を捉え、退路を確実に断ち手の内に誘導する。車を下りて(歩→と金の暗喩?)待っていたジョディで王手。しびれました。
おまけ(FBIの都内出発地点から鴨池大橋までのルート)
連絡を受けたFBIが新横浜方面へ向かった経路もついでに考えたのですが、出発地点は東京タワーが見えるおそらく三田一丁目の交差点付近。映像に右のレンガっぽい建物があった気がします。
赤羽橋から首都高にのり、東名高速へ。
(2021/4/19 10:40 訂正) 東名高速をズンドコすすみ、川崎登戸出口で下り、新横浜方面へ。
(2021/4/19 10:40 訂正) ららぽの横を通って鴨池大橋へ。
鴨池大橋到着時のキャメル視点
さいごに
「みんながあなたを待っているわ」
名古屋国際空港で哀ちゃんがコナン君に言うシーン、後から追加したのではないでしょうか。そう思うと涙が出ました。
予想をはるかに上回る展開と見れば見るほど驚かされる「作り込み」と「絶妙なさじ加減」には、さすが櫻井武晴さんの脚本…と感服しました。原作のキャラクター像に対する敬意と深い理解を感じます。
原作者の青山先生をはじめ、劇場版の公開を実現してくださった色々な方々に心から感謝します。全力で楽しみます!