1.チョコレートシェイク
練習の後にシャワーを浴びて、やっと一息ついて、練習室の隅っこに座る。
スケジュールのない日は、この後みんなでご飯を食べに行くか、帰るか、それぞれ自由に過ごす。
「ジニョンイー、お腹すいたなんか食べに行こ」
少し離れたところで、マクヒョンの声がする。
マクヒョンはジニョンイヒョンの背中にくっついて、顎を肩に乗せてる。
「ごめん、僕本屋さん寄ってくから」
「んじゃ俺もついてく」
「いいって、マクヒョンどうせすぐ飽きるでしょ」
「ううん、飽きない、絶対飽きないし、」
「いいって、お腹すいてるんでしょ? 時間かかるし、また今度ね」
「ええ~、でも」
「ご飯食べて先帰ってて」
ジニョンイヒョンは、向かい合ってマクヒョンの手を取ると、両手でギュッと握ってから、じっと見つめる。
「ん、うん、わかった」
じっと見つめ合った後、マクヒョンは頷いた。
「おけ、じゃあまた後でね、マクヒョン」
そう言うと、ジニョンイヒョンは、パッと手を離して、背中を向ける。
その一部始終を見届けて、やっぱりジニョンイヒョンは、悪魔だって思う。
明らかにしょんぼりしてるマクヒョン。
だけど、もう振り返らずにさっさと荷物を持って練習室を出て行こうとしているジニョンイヒョン。
マクヒョンはその背中をずっと見てる。
マジで悪魔。
こういう時、僕はジニョンイヒョンのこと大好きなのに、なんか複雑な気持ちになる。
「ドMだね」
マクヒョンをご飯に誘おうと、立ち上がろうとした所で、ベムが隣に座りながらそう言ってきた。
「え、は? 何が」
「じっと見ちゃって」
「な、何を」
「自分が今どんな顔してるか分かんないの?」
「は?」
「は、じゃないし。今さら僕に隠したってしょうがないでしょ」
「てかじれったい、マジで。そんなに好きならもっとグイグイいきなよ」
「シッ、こんな所で話すなよ」
「なんで、てか、みんな知ってるでしょ」
「んなわけっ」
「アリだねー、知らないのはマクヒョンだけでしょ」
僕の親友は、ケラケラ笑ってる。
いや、マジで? みんな知ってんの? みんなって、みんな⁇
思わず練習室を見回して、みんなの顔をキョロキョロと見る。
頭に血が上って、耳がめちゃくちゃ熱い。
「いや、全員は言い過ぎかなー、ジェクスニヒョンとジェボミヒョンは知らないかもねー」
「そ。そう?」
「うん、いや、話題に出してはっきり聞いたわけじゃないけど、なんとなく? ジェボミヒョンはヨンジェヒョンのコトしか頭に無いしね」
「そ、そか」
妙に鋭い観察力を持ってるベムの意見を、僕はいつでも素直に聞き入れてしまう。
「飯行く?」
「え、なんで僕誘うの? バカ?」
「え?」
「ジェクスニヒョーン、お腹すいたっ、ご飯行こうっ?」
突然跳び上がるように立ち上がると、ベムは勢い良く走ってく。
「おうっ、何食う?」
ジャクスニヒョンは一人でご飯を食べるのが大嫌いだから、いつもベムと一緒だ。
「ユギョマー、お前は?」
「あ、僕も」
「ヒョン、ユギョミは用事あるって」
僕の言葉を遮るようにそう言うと、ベムはヒョンの腰に手を当てて、先へ促す。
「んじゃ後でなっ」
そう言うと、ジェクスニヒョンはベムの腕に腕を絡ませて、そそくさと立ち去る。
いつの間にか、ジェボミヒョンもヨンジェヒョンもいなくって。
マクヒョンと二人きりだった。