1-3
「いっ」
「痛かったですか?」
「いや、大丈夫」
「マクヒョン」
「ん?」
「本当に、無理しないでくださいね。僕、力になりますから」
「何、ユギョマ俺の代わりに跳ぶの?」
「あ、いや、それは」
ヒョンはケラケラと高い声で笑う。
「大丈夫だってば」
ヒョンはまだケラケラ笑ってるけど。
「あと、もっとご飯食べてください」
「え?」
マクヒョンは寝転がったまま、肩肘をついて俺を見てる。
「マクヒョン最近痩せましたよ、もっと食べないと」
「何、オンマみたいに」
「だって」
「俺がよく食べてんの知ってるだろ?」
「だけど、ヒョンが痩せると、あ、アガセが心配するし、」
じっと僕を見つめるその視線に耐えられなくなる。
ヒョンはガバッと体を起こした。
「心配してくれて、ありがと」
「え、あ、」
そんな風に優しい顔で言われたら、それ以上何も言えなくなる。
「でも、お前ももっと食べないと」
「へ?」
ヒョンの長い指が、そっと僕の輪郭をなぞる。
心臓がドキンっと強く鳴った。
「もう十分痩せたよ。かっこよくなった」
マクヒョンに見つめられながらそんなことを言われて。
あっという間に耳が熱くなる。
カムバに向けて、しばらくダイエットをしていて。
自分でもどこで止めればいいのか分からなくなっていた。
そんな僕にマクヒョンはよく自分の食べ物を勧めてくる。これ食べな、美味しいから。って。
あれ、冗談でも嫌がらせでもなかったのか、と今更思う。
何もしなくても太らないマクヒョンには、僕の気持ちが分からないんだって思ったこともあった。
それがヒョンの優しさなんだ。
「マクヒョン……」
「ん?」
「ごめんなさい」
「何に対して?」
「ん、内緒」
「何それ、それ謝ってることになってんの? 俺何を許したらいいの」
「いいんです、とにかくごめんなさいっ」
「わかった、謝罪は受け入れよう」
マクヒョンは目を見開いてから、ケラケラ笑い出す。
「さ、じゃあ、帰るか」
マクヒョンは僕の赤い顔に気がついてたと思うけど、なにも言わなかった。
こういう優しいところも、マジで大好きだ。
「よし、じゃあ肉買って帰ろうか」
「えっ」
「肉買って一緒に食べよう、俺が買ってやる、ユギョマがかっこよくなったお祝いに」
「やったー」
肉に釣られて、素直に返事したけど。
マクヒョンに二度もかっこよくなった、って言ってもらえて。
また顔が熱くてたまんない。
「さ、帰ろう」
いつの間にか、靴も履いて、リュックを背負って僕を待っているマクヒョン。
「はいっ」
どうか、この気持ちがずっとバレませんように。