3-9

「その顔! だいたい考えてること分かるから」

 そう言って吹き出すように笑うジニョンイヒョン。

「いや、マジで僕とマクヒョンをくっつけようとすんのやめてよ」

 ば、ばれてるし。

「そうやってマクヒョンのこと突き放すのもムカつくし」

「そうやって自分の恋から逃げてんのもムカつくし」

 ヒョンが僕の口調を真似て言う。

 逃げてる、そうだよ、逃げてるけど。

「ぶつかったら砕けるって決まってるのに。ぶつかれないよ」

「意気地なし」

「どうせそうですよ、それに、マジでジニョンイヒョンには言われたくない」

「ユギョミがそれでいいなら、いいけど。僕とマクヒョンには何にもないし、マクヒョンも僕を好きじゃないし」

「だからー」

「だからはいいから! ダメ、もうユギョミ馬鹿んなってるから何言っても意味ないな」

 ヒョンが面白がるように笑ってるし。

 なんかもう、酔って来たし、それに腹も立たない。

「ヒョン、ごめんね、僕が悪かったの知ってる。ヒョンには敵わないから。めっちゃ大人で優しくてかっこよくて、ダンスも歌も演技も出来て、マジでかっこよくて尊敬してるんだよ」

「え、いきなりめっちゃかわいいし、それ本気?」

「そうだよー、ジニョンイヒョンめっちゃ好き。だから辛いんだよー、なんでマクヒョンはジニョンイヒョンが好きなの? なんでヒョンはマクヒョンのこと好きじゃないの?」

「んでまたそこに戻るんだー、マジで勘弁して欲しいんだけど」

 ヒョンは呆れたように溜息をついた。

「ほんとにさー、ユギョミマジでかわいいな! マクヒョンの代わりに僕がチューしてやろうか」

「うっ、いらないっ、絶対やだー。チューするなら、僕にじゃなくてマクヒョンにすればいーじゃん」

「ハハッ、そう来たか!」

「んじゃ抱きしめてやろう」

「それもマクヒョンにすれば良いっ」

 なんか、ジニョンイヒョン心底面白そうに笑い転げてるし。

「んじゃ、マクヒョンに好きだって言って、ヒョンを抱きしめて、チューして、後何しよっかなー。何すれば良いと思う?」

 ジニョンイヒョンがテーブルに頬杖をついて、ドキッとするような妖艶な目で見つめてくる。

「そ、んなの自分で考えて」

 そう言いながら、ヒョンがマクヒョンを抱きしめて、チューとかするところを思い浮かべてしまう。

「マジで良いの? じゃあ」

 そう言って微笑む。

「だめっ、いやだ! やっぱりしなくていいっ」

 もう体も思考もゆるゆるで、感情に任せてそう言った。

 自分で言い出したのに、頭に浮かんだシーンが追い払えなくて、なんか泣きそうになる。

「絶対にしないで、ヒョン」

「馬鹿、しないってば。やばいよ、そんな顔してるユギョミにチューしそうだよ、かわいすぎるんだけど」

「ダメーッ」

「はいはい、ってかめっちゃ酔ってない? ペース早いよ。ヒョンに怒られそう」

「えー、怒られるのやだよー」

「んじゃ、もう帰るか」

「うんっ、マクヒョンに会いたいっ」

「うん、覚えてる? マクヒョンに感じ悪かったからね」

「ああ、そうだったー。どうしよう、どうしよー」

 ジニョンイヒョンは面白そうにずっと笑ってる。

「なんかヒョンめっちゃ楽しそう」

「楽しいよ、マジで面白いユギョミ。もっと早く一緒に飲みに来ればよかった。あー楽しかった」

 なんか、喧嘩しに来たみたいなテンションだったはずなんだけど。いつの間にか僕も楽しくなって。

 今すごいハッピーな感じ!

「マジで早く帰ろう、絶対僕、ヒョンに怒られる」

 日本ツアー控えてるし、ペンミもあるし、明日も夕方からダンスレッスンだし。

 あー、飲んでたなんてバレたら、ジェボミヒョン怒るかなー、怒られるのやだなー。

「いいか、静かに入るんだぞ」

「はーい」

 店を出て、タクシーに乗って宿舎に着いた。

 ジニョンイヒョンの後をついて、そっと部屋に入る。

 リビングの明かりがまだ点いてるし、時計見てないけど、そこまで遅い時間じゃないだろう。

 なんでこそこそしてんだろ、とか思ったら、おかしくなってきて、笑いがこみ上げる。

「しっ、ユギョミ」

 ヒョンに小さな声で叱られる。

 その時、ドカドカと誰かが勢い良く歩いてくるのが分かった。ジェボミヒョンっ? 怒られるのかと思って、ドキッとする。

「ユギョミ、帰った?」

「マクヒョーン」

 僕の目の前にパッと現れたのは、マクヒョンだった。

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