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そこまで考えて、自分の考えがあんまりにも少女趣味だって気づく。
恥ずっ、きもっ、
だめだ、マクヒョンが悪いんだ。そんな無防備で可愛いのが悪いんだ。
僕は体を起こすと、ソファにあったブランケットを引っ張る。
「ヒョン、風邪ひきますよ、いい加減なんか着て」
僕はマクヒョンの背中にそのブランケットをかぶせた。
「ん、寒いと思ってた」
「じゃあなんか着てくださいよ」
「うん、もう終わり」
マクヒョンに抱かれてるココは満足げだ。
「あ、Tシャツバスルームに置いたままだ」
そう言うと、ヒョンはブランケットを巻きつけて立ち上がる。
ココを抱いたままバスルームに向かって歩き出すと、突然クルッと方向転換する。
「あ、そだ、ヨンジェ~」
そう言って、ジェボミヒョンとヨンジェヒョンの部屋をノックしようとする。
俺はハッとして、後ろから勢いよくヒョンを止めた。
「何? ユギョマ」
「あの、今忙しいと思うから、」
「え? なんで」
ヒョンたちの部屋の前で、僕は声を押し殺して言う。正直、このドアの前に立ってることも、めっちゃ怖い。
部屋の中からは物音ひとつしない。
いっそのこと、怒ったジェボミヒョンの声が聞こえてきた方がマシなんだけど。
しんと静まり返った部屋の中で、今何が……。
そこまで考えて、ぶるっとした。
「ヒョン、いいから邪魔しないであっち行きましょう」
「え? ああ、忙しいの? 何で」
マクヒョンは納得行ってなさそう。マジでこういうの疎いのかな。
僕はヒョンを方向転換させて、そのままバスルームの方に押す。
と、そこで、なんか流れでヒョンのこと後ろから抱きしめてるみたいになってる、って気がついた。
マクヒョンのふわふわの髪が、頬をかすめる。
突然、愛しさがこみ上げて、僕はマクヒョンの髪に顔を埋めると少し腕に力を込めた。
「ユギョマ? どうした?」
どうしたって聞かれても、理由なんて答えられるはずがない。
僕はただ黙ってもう少し腕に力を込める。
手元でココの足がぱたぱたしてるのを感じる。
「ユギョマー?」
マクヒョンののんびりとした声。こんなときにも、危機感ないんだ。
その瞬間、自分が何を考えたのか、正直わからない。
「ひゃはっ、なんだよユギョミくすぐったいって」
気がつくと、ヒョンの少し冷たくて硬いお腹が、自分の掌の下にあった。
僕、ブランケットの中に、手入れてる。
いや、やったのは自分なんだけど、その瞬間の記憶が全くない。
なんか、僕、危ない感じじゃない?
「くすぐったいってば」
ヒョンが肘で俺を突いてくる。
「あ、はい」
なんか、いまさら湧いてくるドキドキ。ヒョンのお腹に手を当てたまま、ボーッとする。
「なあってば、起きてる? ユギョミってば」
「ヒョンのお腹冷たくなってる」
「へ? ああ、それユギョミの手が熱いからだよ」
「そうかな」
「ユギョミ体温高いから、子どもだなー」
抱きしめられて、お腹触られてんのに。それでもヒョンはいつも通りだ。
僕のドキドキなんて、伝わらないんだな。
そこまで考えて、ハッとした。
思わずパッとヒョンから離れる。
ヒョンはココを下ろして、バスルームに向かった。ヒョンの後をココが追ってく。
何、僕、気持ちが伝わればいいとか思ってんの?
それ、ダメだよね?
アウトだよ。
「えーっ、ユギョマーっ、なんで俺のコーヒー飲んでんの??」
Tシャツを着てさっさと出てきたマクヒョンの声。
そんなの、知らない。
僕は返事をせずに、自分の部屋に逃げ込んだ。
ちょっと冷静にならなきゃ。