2-9
「マクヒョンなんでこんな所に隠れてたんですか?」
「え? 隠れて、あっ!」
そう言うと、ヒョンはガバッと体を起こして、キョロキョロと辺りを見回したり、明らかそわそわと落ち着かなくなってしまった。
「ヒョン、落ち着いて」
「え、あの、」
「ヒョンってば」
僕は落ち着かなさげに宙をさまよっている、両手を捕まえて、ぎゅっと握った。
「あ、ああ、あの」
「話してください。どうしたのか」
「ダメ、ダメだ」
「何がですか?」
「ユギョミには話せないっ」
そうきっぱり言われて、なんかすごいグサっと来た。
ヒョンが引っ込めようとした手を、力を込めて逃さないようにする。
「なんで? どうして僕には言えないの? 僕じゃ力になれないっ? 頼りないからっ?」
僕は、思ったことをそのまま口に出した。
ヒョンのこと、追い詰めたりしたくないのに。
正直、腹が立った。だから責めるような口調になってしまう。
「違うよ、でも、」
「でも?」
「ユギョミはマンネだから、知らなくていい」
マクヒョンは、きっぱりとした口調で言う。
「え、なにそれ」
こういう口調の時、ヒョンは絶対に自分の意見を曲げない。
わかってる。だけど、納得できない。
マクヒョンの悩みに、僕がマンネなことや年齢が関係あるの?
「ユギョミが頼りないとか、そんなんじゃなくって、ただ、知らなくていいって思うし」
「そんなの嫌だっ、僕、もう成人したし。マンネだけど、大人だしマクヒョンの悩み聞きたいしっ」
ヒョンがそっとしてて欲しいって言ってるのわかるんだけど。
どうしても納得出来なくて、食い下がってしまう。
だから、マンネだから、なんて言われるんだ。
って、自分で気がついて、なんか悲しくなってきた。
「え、なんでユギョミがそんな顔してんの」
僕、今どんな顔してんのかな。
「だって…」
言葉に詰まってしまう。
あんまりにも情けなくって。
「ユギョミも、ヒョンの悩みを聞いてくれるくらい、大人になったんだな」
そう言って、マクヒョンはふっと笑った。
「でも、ユギョミの負担にならないか、」
「なんないっ、絶対にっ、」
「そっか」
そう言って笑うと、ヒョンはふーっと息を吐き出した。
ヒョンは僕の手から片手を離して、壁に体を預ける。
ヒョンの左手と僕の右手は、まだ繋いだままだ。
僕も同じように壁にもたれる。