2-10
「単純な話なんだよ」
マクヒョンは、部屋の壁を見つめて、とつとつと話し出した。
僕は応援したくって、その手をぎゅっと握る。
「お……俺の友達に、さ、JとYってやつがいて、さ」
JとYて……まさかジェボミヒョンとヨンジェヒョンじゃないよね? まさかね。
「前から、仲良しなのは知ってたんだ。そういうの、別に変だと思わないし。LAにもいっぱいいたし」
え、まさか、そうなんじゃ。
マクヒョンの表情を伺いたかったけど、ヒョンが意を決して話してくれているから。そうできなくて僕も前を向いたまま聞いてる。
「そういうの、何にも思ってなかった。なかったけど、今日」
「今日?」
てか今日、マクヒョン宿舎から出てないじゃん! 絶対にここの中の出来事じゃんっ。
なんか、妙にドキドキして、僕は壁から背中を離して、体をヒョンの方に向ける。
マクヒョンはすごく真剣で、眉間に深い皺を寄せてる。
「そのヒョンが、あ、友達がどうしたんですか?」
「や、あの……ごめん、やっぱいい。誰かに話す事じゃない気がしてきた」
マクヒョンはそう言うと、おもむろに立ち上がろうとする。
「ダメ」
僕はそう言って、繋いだままの手を引いた。
「えっ、わあユギョミ」
ヒョンはバランスを崩して、僕に倒れこんでくる。僕はヒョンを抱きとめた。
ヒョンの腰を抱いて捕まえてるみたいになってる。
「ヒョン、話すって決めたんだから、話してください」
「でも」
「まさかっ、ヒョン何かされたのっ??」
僕はヒョンの顔を覗き込んだ。
「や、そんな訳ないじゃん」
「じゃあ話して。僕、ヒョンが思ってるより何でも受け止められる自信あるから」
ヒョンの事なら何だって。
「んー、マジで言っていいのかな」
マクヒョンがそんなにも言い淀むなんて、何の話なんだろう? いよいよ、怖くなって来るじゃん……。
「見たんだ」
唐突にヒョンが口を開く。
「何を」
「ふたりが、裸で…」
えっ! って心の中で大声が出たけど、僕は飲み込んだ。
「ドア開けたら、ふたりが」
マクヒョンは僕の表情を伺って気遣いながら、その状況を必死でオブラートに包んで話してくれた。
要約すると、ヒョンは僕が寝た後、何か用があって、二人の部屋に行って。
大きな音で音楽が漏れていたから、何気なくドアを開いたら、裸で折り重なっている二人が見えて。
と、まあそういうこと、だ。
ヒョンはそれ以上言えなかったみたいだけど、いや、マジでディープなシーンを目撃したんだと思う。
や、僕なんてさっき事後っぽいふたりの雰囲気を感じただけであんなにオタオタしたのに。
現場見るとか!
そりゃ、部屋の隅に避難したくなるのも激しく理解できる。
だけど、受け止めるって偉そうに言ったくせに、一緒にオタオタ出来ない訳で……。
僕はなんとかヒョンの気持ちをほぐそうと努める。