おかえり、タイムマシン
この土日で千秋祭が開催されるため、10年振りに千葉高に訪れた。
7月にロケハンで高校自体には行っていたけれど、校舎の中に入るのは10年前に同窓会をやった時以来だった。
校舎に入ってまず驚いたのは、自分が現役生の頃とちっとも変わっていないことだった。
「あれ?もしかしてタイムスリップした…?」
と一瞬本気で錯覚してしまうほどには、すべての時が止まっていた。
正確に言えば細かい部分は変わっているんだけど、空気感とか匂いとか「そこにあるもの」はちっとも変わっていなかった。
千葉高は良くも悪くも変わらない。
生徒も私がいた頃と何ら変わりなく、各々が好きな見た目で、楽しそうにきらきらと千秋祭を駆け巡っていた。
我々世代と違うのは、派手髪の子が普通にいることかな。
私が現役生の頃は派手髪ブームとかなかったからなあ、今の子たちがちょっぴりだけど羨ましくなった。
私も金髪とかピンク髪にして校舎を駆け回りたかったな。いいなあ令和ギャル。
私もピアスあけたり茶髪にしたり蝶ネクタイしたりとか大概ふざけた格好をしていたけど(後輩からは「平成ギャル」と言われた。)、私のなかでは令和ギャルのほうが圧倒的に「かわいい」のだ。
古くてお世辞にも綺麗とは言えない校舎だけど、この歴史と思い出がぎっしり詰まった校舎は、本当にタイムマシンのような役割を果たしていると思う。
「僕らの時間を閉じ込めてるんでしょうね」
と一緒に文化祭を回った後輩が言っていたが、本当にそのとおりだと思った。
だって、こんなにも変わらないんだもん、懐古主義にもなるわそりゃ。エモエモのエモってやつよ。
まあ、それでもひとつ思ったのは、渡り廊下の脇に生えている木、この10年で育ちすぎじゃない?
いくら変わらないとは言っても、変わっていることもいくつかあった。
私たちの頃は、確か金券を売っていたけど、なんと今はオールキャッシュレスらしい。
下手なショッピングモールのお店よりもキャッシュレス化が進んでいてたまげた。
あとやたらめったらゲーム系の企画が多い。
リアル脱出ゲームが流行っている影響なのか?
あとメイド喫茶だらけでびっくりした。私がしらないだけで、今ってメイドブームだったりする…?
また、千葉高文化祭名物の裏中間も今では別紙らしい。経費削減だとかなんとか。世知辛い世の中である。
もう裏中間に載っている先生方で知っている人はひとりもいなかった。
私が千葉高を卒業したのは2013年のこと。そりゃ10年も時が経てば人は変わってしまうだろう。
ただ、パンフレットに書かれているノリとか、文言とか、そういうのは相変わらず千葉高生丸出しだった。
世代が違うはずなのに、生徒のノリが変わらないのは本当に不思議でしょうがない。これもあの変わらない校舎のおかげなのかなあ。
千葉高生と話しているとあの頃に戻ったみたいな感覚になるけれど、校舎そのもののパワーは計り知れないなと思った。
帰れる場所があるというだけで、不思議と心は安定する。
以前は、過去には戻りたくても戻れないから、まるで失った故郷を偲ぶような気持ちで生きていたけれど、同胞の民とタイムマシンがあるならいつだって帰れるじゃないか、と気がついた。
こんなに高校のことばっかり言っているアラサーってどうなのよって客観的に見て思うけれど、私にとって千葉高は、私のidentityそのものを形成した場所と言っても過言ではないくらいの場所だった。
ここで過ごせた3年間は、間違いなくこの短い人生における大切な3年間だった。
今日久しぶりにあの日に帰って、たくさんのことを思い出した。
そして、「私」を少し取り戻せた気がする。
また、帰りたくなったらいつでも帰れる。
「ただいま」と言って、あのピロティを跨げばきっと。
今、窓の外は日中の暑さが嘘みたいに土砂降りの雨が降っている。
ぺトリコールが香る。今夜はよく眠れそうだ。