元人事担当として転職活動中の友人に伝えていること
人事畑にいたから、という理由で、たまに友人から振られる転職活動関連の話題。
今は活動の方法もたくさんあって、その人らしいスタイルを自然に選んでいるなぁと勉強させられることが多い。
「相談してくれてありがとう」という思いを込めて、私が伝えていることがいくつかあります。
お節介丸出しで、余計なこと。
でも、それを後悔したことは今までないので、書いておきたいです。
その1)「自分を、限界を超えて、めいっぱい、高く売れ!」
なぜなら、私が応援してきた友人の大半は、
・お給料は会社(採用先)が決めると思っている
・仕事内容に合意できれば、お給料は多少妥協してもいいかと思っている
・自分を高く売ることを悪いことと思っている
・面接中のお給料の話題は失礼・NGだと思っている
から。
「どれも、ちっがーう!」と、とりあえず、まずは力いっぱい否定したい。
上記の箇条書きに心当たりのある人の場合、感覚的に、この金額でいいかな、と思うお給料の額面1.25倍〜1.5倍を想像してもらいます。
イメージ額面(もろもろ控除前)
20万円→ 1.25倍だと 25万円→ 1.5倍だと 30万円
30万円→ 1.25倍だと 37.5万円→ 1.5倍だと 45万円
50万円→ 1.25倍だと 62.5万円→ 1.5倍だと 75万円
我ながら、自分で想像しても、ちょっと変な風にドキドキします。
え、こんな金額提示できるの?できないよ、という反応が返ってきますが、そんな友人の背中をこそ、私が思いっきり押します。
「交渉の目安になる金額なんだから、大丈夫!その金額になるかどうかわからないし、まずはその金額で行ってみよう!」
その上で、下記を尋ねます。
・なんでその金額を提示できないと思うのか?
・その金額になる根拠の方を考えてみないか?
そうすると、大体、みんな、私が感動するような根拠を考えつくんです。
かなり、現実的で納得できる根拠が出てくる。
凄く、勉強になります。
中々、考えつかないような謙虚すぎる人なら、これまで私の友人たちが考えついた根拠の情報提供をします。
例えば:
・具体的に自分の時給単価を考えてみないか?
・同僚や他の人と比べて結構自信のあるスキル、実績、経験、提供できる価値を言語化して、それに金額をつけてみないか?(多くの人が言語化していないだけで、みんな、大抵ある!)
とか。
すると、上記の切り口に限らず、アイディアが出てくるものなのです。
本人が納得感を持って、イメージ給与の1.5倍の給与を提示する根拠が。
そもそも、最初に完全否定した、給与決定に関する求職者側の思い込みは、事実と全く違うわけでもないです。
でも、下記のように書き換えても、間違いにはならないと、人事担当者としての経験から言いたい!
お給料は会社(採用先)と採用される人の双方で合意する金額である
*その際、求職者側からの提案がなければ、会社内の基準で想定するし、求職者側からの提示があれば、それをベースに交渉開始する(これ、最重要)
採用時のお給料の金額は、その時点で会社が出せる金額内で交渉可能である
お給料の高い人を会社が採用して、そのことがシリアスな問題になってくるのは、その人のお給料以外の部分でミスマッチがある場合が多い
*つまり、お給料額面だけでは、問題にならない
面接中のお給料の相談は、採用側としては面倒臭い(あんまり日本人が主張しないから)が、別に失礼とは思わない
*お給料額は結局は経営判断であり、人事としては、求職者の提示金額をベースに、情報として積極活用する
採用面接時に求職者側からの給与交渉があったとして、それに纏わる諸々について、採用した側はかなり高い確率で忘れる
したがって、希望金額を伝えても悪いことは何もおこらず、いいことしかないと、個人的には信じています。
しかも、それは、ひいては、採用する企業にとってもプラスになります。
だから、頑なに「お給料交渉が恥ずかしい、やりにくい」と思っている友人には「採用者(会社)側にとって、プラスになることをしてあげようよ」と説明します。
なぜならば、求職者側にとっては下記のことが言えます。
・自分的想定金額の1.25〜1.5倍のお給料をもらえていれば、仕事内容・会社自体が求職中に説明を受けた内容・イメージと違ったとしても、1年から3年は我慢できる
・よほどのことがない限り、入社時給与を割ることはない。ただし、会社の規則、業績や評価制度によっては、昇給はないことがある
・仕事内容・社風・文化は実際に入社してわかることであったり、入社当時と変わっていく変数であるが、入社時給与は変化しない
・入社後の給与交渉は会社の社風によっては相当難しい
そして、会社側にとっては、上記とほぼ逆のことが言えるからです。
・お得な買い物(会社の予算以内での採用)ができたとしても、入社3年以内に退職されたら、採用費はほぼ赤字になる(教育費や回収コストでのプラマイ計算)
・採用時給与を下回る人事評価は実質上ありえない(解雇予告して解雇の方がまだ現実的)。著しいパフォーマンス不足に加え、何か他の問題がない限り、減給は難しい。
・基本的に今いる社員が給与に満足しているかどうかは考えたくない
・基本的に今いる社員からの個人的な交渉による昇給は、キリがないのでやりたくない
上記の理由から、
給与交渉のベストチャンスは、求職者、会社双方にとって、採用時。
フェアな交渉を行うためには、両者の側から情報が必要。
そのための必要な情報提供は、両者の義務。
そのくらいの心意気で堂々と、想定金額の1.5(とハッパをかけておいても、みんな1.35くらいで実際交渉開始する)倍の希望額面金額で、自分の限界を超えて、自分を売ってみてほしいと伝えています。
みんな、謙虚で、給与交渉に慣れてなくて、選ばれる側だと思っていることが多いけれども、労働契約はお互いがイーブンです。
契約時に契約者がしっかりと意思を持って契約内容作成にコミットするのは、もはや社会人のマナー。
転職先で頑張ろうと思っているはず。自分の能力を活かしたいと思っているはず。その気持ちで、ポジティブに、明るく堂々と、入りたいなと思える会社とは、しっかり給与交渉しようよ!と、心から応援しています。
つい長くなってしまったので、その他に、伝えていることは別の記事に書きたいと思います。
読んでくださった方、長文にお付き合いいただきありがとうございました…!