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忘れられない人

彼と知り合ったのは
高校二年生の秋。
バンド好きという接点で仲良くなった。

彼の職業は小学校の先生だった。
私がちょうど進路に迷っていて
その相談にファミレスで何時間も乗ってくれたり
好きなバンドの歌をずっとカラオケで歌ったり。
本当に楽しい時間だった。
私は、そんな彼との楽しい時間を重ねる度
好きになっていった。
料理を作ったら写真を送ってきてくれて
ヒトカラに行く時も電話をかけてきてくれて
私の好きな曲を歌ってくれたり。

ある日、会った時彼に
抱きしめてもいいかと聞いた。
いいよと言う彼は顔が真っ赤ですごく可愛かった。
帰り際手を繋いで駅まで送ってもらった。
そして、駅で告白をした。
「好きです。」
「俺も好きです、でも、職業的に高校生は
ダメかもしれない。だから、卒業したら付き合いたいです。」
凄く嬉しかった。

後日、いつも通り電話をした時
「俺、次付き合うなら結婚したいんだよね。
歳も歳だし」
あぁ、そうか、私じゃダメなんだ
その瞬間そう思ってしまった。
そう思ってしまった私が馬鹿だった。

向こうには気がないと思い、実らない恋を引きずるのも辛い。
他の男の子と遊んでしまった。
その日、彼からLINEが来て
「今日は何してたの?」
「男の子と遊んでた。」
「え?嘘でしょ?」

数時間後彼のSNSの投稿で
「信じて好きだった自分が馬鹿だった
もう忘れよう。」
そんな投稿を見て血の気が引いた。
すぐにLINEを送った。
「私の事まだ好きだったの?
この間結婚したいって言ってたから
私じゃダメなんだと思った。
本当にごめんなさい。」
返信はなかった。

そこから半年、彼のことを毎日考えて
連絡も待った。
けれど彼から連絡は来なかった。
もう諦めよう。
そう思った1週間後
彼から連絡が来た。
「今度、ご飯食べに行かないかな?」
チャンスだと思った。
「行く!何食べたい?」
と予定を立てて
最近あった事を話した。
「あれから彼女出来なくてさ
友達にはセフレでもいいから作った方がいいんじゃないかって言われたよ」
「そうなんだ」
この時点で私は悟った。
私があんなことをしたばっかりに
彼の本命にはなれないということ。

それからご飯の日まで楽しみに色々頑張った。
だが、その日連絡をしてからご飯の日まで一切LINEが来なかった。
予定の時間1時間前になり
電話もLINEもしたが
反応がなく、その日は諦めて
またLINEが来るだろうと待っていた。

半年後、ある日インスタを見ていた時
彼のストーリーが珍しく更新されていた。
横浜のホテルで
「婚約しました」
バラの花束と指輪が映っていた。
私はそのストーリーを見た瞬間
血の気が引き、涙が止まらなくなった。
結婚してしまうんだ。
もう、どうしようもなくなった。

それから2ヶ月食欲もなく、元気もなくなり
彼の写真を眺めては泣く日々
彼のインスタの投稿が上がった。
「入籍しました」
婚姻届と指輪の写真。
あぁ、終わったんだ。
いや、終わらせなきゃいけないんだ。
そう思った。

それから私は高校を卒業し、彼に相談した
進路も虚しく、フリーターをしている。
今は1年半付き合っている彼もいて
結婚の話も出ている。
けれど彼の事は忘れられない。
この間友達と呑みに行った時も
彼の話になり
「もし、もしも、その彼がフリーになって戻ってきて付き合いたいって言われたらどうする?」
友達はそんな酷な質問をしてきた。
「だとしても私は彼とは付き合わない。
今の彼と結婚する。
1番好きな人と1番優しい人は違うと思うから。」

彼の事が本当に大好きだった。
彼が結婚して2年
未だに忘れられない。
きっと、私は
自分が結婚する時、彼の事を想いながら結婚するのだと思う。

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