【ウィシュマさん死亡事件】 第5回期日 裁判傍聴レポート (2023/2/15)
2023年2月15日に、ウィシュマさん死亡事件裁判の第5回期日が名古屋地方裁判所で行われました。
関東で活動する私たちBONDからは、今回は2人の学生メンバーを含む合計3人が傍聴と支援連帯に駆けつけました。
ウィシュマさん死亡事件については知っているけれど、裁判についてはよく知らないという方、
また、前回の裁判の傍聴には参加できなかったという方に、ぜひ知っていただければと思っています。
裁判の概要
まず、裁判の概要についてご説明します。
今回の論点とは?
今回の第5回期日の最も主たる論点は、
『ウィシュマさんの生前の姿を映したビデオの295時間分のうち、5時間分を公開の法廷の場で上映することを求める』
ということでした。
被告である国側は、亡くなるまでの約2週間を編集した5時間分のビデオを、原告である遺族側には開示したものの、法廷での上映を拒んでいるという状況にありました。
また、加えて、被告(国)側は、賠償金はスリランカの物価に基づいて決定されるべきであるという主張を行っており、これは国籍差別であるという陳述も原告側から行われました。
市民の関心の強さ
今回の第5回期日の傍聴には86人が集まり、傍聴が抽選になりました!
よって、傍聴席85席を全て埋め尽くすことができました👏
また、裁判の冒頭には、取材のカメラが入りました。
これを受けて、弁護士団は
とおっしゃっていました。
裁判の内容
裁判の傍聴自体は20分ほどで終わりました。
原告(遺族側)の陳述
今回の裁判手続きのなかでのウィシュマさんの妹で、原告であるお二人(ワヨミさん、ポールニマさん)の陳述は以下のようでした。
<ワヨミさん陳述 一部要約>
<ポールニマさん陳述 一部要約>
被告(国側)の答弁
対して被告である国側は、
原告弁護団:
「国側は、ウィシュマさん事件の真相究明のために積極的に主張や証拠の提出をするつもりがあるのか」
被告 (国) :「民事訴訟法の手続きに則って対応する」
原告弁護団:「それは当然で、事件の真相究明のために主張や証拠を積極的に提出するつもりがあるのか、ないのか聞いている」
被告 (国) :「・・・。」
被告 (国) :「民事訴訟法の手続きに則って対応する」
《傍聴人の呆れたざわめき》
というような答弁をするなど、依然として消極的で、始終、とても擁護しきれないほど非礼で無責任な態度をとっていました。
質問に対し、ぶっきらぼうに回答にすらなっていない答弁を繰り返すのみで、何もかも先延ばしにしようという魂胆が透けて伺えました。
集まった傍聴人からは、国側の対応に対し、怒りの声と呆れたざわめきが幾度も生じました。
今回の結果
今回の裁判の結果、5時間分のビデオの公開法廷での開示上映が決定しました!
これは、ウィシュマさんが亡くなった入管内での295時間分のビデオのうち、亡くなるまでの約2週間を5時間分に編集したビデオを傍聴人が閲覧できる状態で、法廷で流すという結論です。
国側は今回の期日前の2/13に、ビデオ開示に関する意見書を提出していましたが、裁判ではその内容には触れられず、裁判所が原則開示すべきだという結論を下しました。
こちらのビデオは、6月21日と7月12日に公開の法廷で上映されることになりました。
現在でも手続きを踏めば名古屋地裁でビデオを閲覧することができるため、既にこのビデオの内容は、記事にもなっています。
結果を受けて、これから。
まず、今回一部ビデオの法廷での開示という結果に至ったことは、重要な一歩だったと言えると思います。
支援者や市民がこの問題について関心を示し続けたことも、今回5時間のビデオを法廷での開示に押し切った要因の一つだと考えられます。
ただし、私たちの闘いは、これで終わりではありません。
入管内で、一人の健康な若い女性が死に至るまで、一体何があったのかを知るためには、裁判所や国側に圧力をかけ、引き続き残りの290時間も開示、上映を求めていく必要があります。
裁判期日後の支援集会では、私たちBONDを含む支援者から、裁判傍聴を踏まえて、ウィシュマさん事件について共に闘う意思と連帯を示しました。
支援者としての感想
BOND学生メンバー(21)
裁判では、人を1人死に追いやっておいて、亡くなってまで彼女の命を軽んじ続ける、そんな入管の態度が顕になっていました。
彼らは、「真相究明を積極的に行う気があるか」という質問にすら真っ当な答えを出しませんでした。事件に向き合おうともしないこの態度が、何よりもご遺族への侮辱です。きっとここまでも、質問をはぐらかし続け、意味のない言葉を並べ立て、裁判を引き延ばし続けてきたのだなと実感しました。こんな空疎な議論のために、遺族は何度心を踏み躙られてきたか、本当に怒りを覚えます。
申し入れに対する意見書の中では、国側はビデオを公開しない理由として「名誉と尊厳」を挙げていました。裁判後の支援集会ではそのことに触れ、発言して来ました。彼女の「名誉と尊厳」を踏みつけ続け、命すら守れなかった入管が、彼女の尊厳を口にする資格はありません。
ウィシュマさんのビデオが法廷で公開されることが決定したのは大きな前進です。2年経っても傍聴席が埋まるほど、市民が関心を持って入管に圧力をかけ、声をあげることを諦めなかった結果です。
しかし、本来入管には、ビデオを提出するかどうかの選択肢などなく、当たり前のことです。こんな横暴な言い逃れがまかり通って来てしまったほど、入管の権限を肥大化させたのもまた、社会の無関心だと私は思います。
だからこそ、これからのご遺族・弁護団の闘いに連帯し、声をあげ続けることが必要だと感じました。
BOND学生メンバー(22)
実際に、裁判に行って目の当たりにしてみないと、理解し得ないことがあると感じました。
今までも話に聞いていたように、遺族側に対する国側の侮辱的な態度はもちろんひどいものでしたが、それに加えて、裁判所の姿勢にも個人的に大きく疑問を感じました。
ワヨミさんが、賠償金はスリランカの物価に合わせるべきだという国側の差別的主張に対して言及した時の話です。
裁判官は、「原告被告どちらでもいいので、スリランカの物価の証拠を提出してください」という内容の発言をしました。
日本よりも物価の安い国だから、賠償金は安くするべきだ、など、国側の主張は明らかに国籍差別です。(では物価が高い国の人にはより高い賠償金を払うのですか?同じく日本でも貧しい人には賠償金が少ないのですか?)
こんな道理の全くない国側の主張を、検討しようとする裁判所からは、国側に加担しようとする姿勢が感じ取れました。
傍聴席を埋めることで裁判所を監視する大勢の支援者がいなければ、正義が遂行されないかもしれない、そんな日本の現状に市民として腹が立つと同時に、責任を感じました。
今回5時間分のビデオが傍聴人にも開示されることが決まりましたが、これは本来ならば、喜ぶべきことでもなんでもない、当然行われるべきことです。(5時間分のビデオは、295時間ある全てのビデオのたった2%にも満たない長さです。)
ですが、現状では、これは我々が勝ち取ったことで、ウィシュマさん死亡事件の原因究明・再発防止への重要な一歩です。
ぜひ皆さんも、2023年5月10日に予定されている次回の裁判の傍聴に足を運んで、日本市民として正義が遂行されることを求めて闘いましょう!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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