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どんな生活を将来、、、

あと2年もしないうちにこの街から出ることになるであろうこと、それはかなりあり得る話だが、全くあり得ない話かのようにも思えてくるから不思議だ。私は生まれてから1度たりとも、この街以外で暮らしたことがない。

この家はとても電車の音がうるさいが、私はそれが気になったことが一度もないぐらいに、まるで遺伝子の中に組み込まれたプログラムみたいにこの街とこの家で暮らし続けている。友達をこの家に泊めると大抵は電車の音に苦しめられているから、多分このうるささは普通ではないのだろう。母親も、嫁に来たばかりの頃に寝不足でノイローゼになりそうになったとか言っていた。

家族は6人いる。妹2人がいて、祖母が1階に住んでいる。元々祖父もいたが2年ぐらい前に亡くなったので、現在は祖母がワンフロアを独占している。なので狭い狭い2階に5人でまとまって住んでいる。テレビの音は永遠に響き渡り、話し声なども全てが、2階のどこにいても聞こえてくる。静かになるのは夜中しかない。だから私はこうして夜更かしが習慣になっている。

夜中になれば、外の猫の鳴き声しか聞こえないからやっと気楽になれる。家の近所には少しだけ未だ交流のある中学校の友達とか、もう少し遠くに行けばバイトで出会った友達とか、もうかなり遠くに行き川を越えビルを越えれば大学の友達が住んでいたりする。中学生の時の友達は、とにかく誰かと飯を食いたいという欲望に駆られた時に電話を掛け、ラーメンを食べに誘う。バイトで出会った友達も同じく、突然呼び出して何かを食べたり汚い海を見に行ったりするのだ。

それにしても、私とこの街を結びつけているものはもうほとんどなくなってきているように思う。それは年々少しずつ減っているに違いないが、今になってはほとんど残っていない。少しの友達たちや、家族、家、思い出、ぐらいしかない。小さな街だが、街の人は誰も私のことを知らないし、まさかジャージで昼間うろうろしている怪しげな女が今井さん家のお孫さんだなんて誰も思わないだろう。だから別に、就職してお金を稼ぐようになったらこの街を出ることはおかしいことではない。だけれど、この街以外で暮らしている自分を想像するのは難しい。

一体どこに住むのだろう。東京に住む確率は高いけれど、もしかしたらお金がなさすぎて埼玉とかかも知れない。いや、なら今のままでいいか、だがそういうわけでもない。恐らく私は、見知らぬ街で暮らすということ自体に興味があるのだろう。だから、今の街でなければわりかし場所はどこでもいいかも知れない。

お金はないだろうから、多少はボロい家に住むことになると思うけど別に構わない。今のところはきっと一人暮らしから始まるだろうが、時間が経てば誰かと暮らし始めるかも知れない。

私が夕方帰ってきたら、日当たりの良く夕陽が差すベランダの前の椅子で、網戸のままで、うたた寝をしているような人がいたらいいと思う。そいつが仕事で遅くなることはあまりなくて、大抵は夕方ぐらいには家にいて洗濯モノをしまうところまでやってくれる。そしてうたた寝をしているそいつを眺めながら、私は毎日チャーハンしか作ってやらない。

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