関東ブロック代表・埼玉県立川越高等学校『いてふノ精蟲』(作、阿部哲也)
演劇部概要
県立川越高校は明治時代に創立した歴史ある男子校で、映画『ウォーターボーイズ』の舞台としても有名です。部員は3年生を入れて12人。日々の部活動は教室や生物準備室で行っています。演劇部は明治時代にあったことと、昭和40年代に市の広報に掲載されていた記録はありますが、その後廃部となり、10年前に改めて創部されました。この10年で県大会に2回、関東大会にも2回出場していますが、全国大会は今回が初出場です。
コロナ下の演劇部
休校だったこともありその間は練習自体できず、全国大会からほぼ1か月前の6月22日に部活動は再開できましたが、練習は週3日で1日あたりたったの1時間。顧問の村上先生によると、全国大会で上演できないと分かったときは、生徒たちは残念がっていた一方、自分たちを納得させてもいたそうです。部活動が十分にできなかったこともあり、WEB総文の出品動画は撮り直しすることができず、関東大会の上演動画になっています。
あらすじ
去年まで川越高校演劇部を指導してきた阿部哲也先生は、落語研究会出身で演劇部指導歴は20年。生物の教師ということもあり、得意ジャンルはSFや生物などだそうです。今回取り上げた平瀬作五郎のエピソードは教師になって10年目ぐらいに知り、面白いと思って、どこかで授業で使えないかと思っていたといいます。気になって調べてみたらさらに彼の魅力に取りつかれ、数年前に地区大会向けに書いた作品をバージョンアップさせた今作で全国大会出場を決めました。ただ、阿部先生は初の全国大会出場を決めたにもかかわらず、定年まで残り1年にもかかわらず他校に異動となりました。
舞台は明治期の東京帝大。植物学者・牧野富太郎らのもとに地方の師範学校で教鞭をとっていた平瀬作五郎が画工としてやってきます。平瀬は画工でありながらイチョウの受粉を研究し、イチョウの精子を発見するのですが・・・。ひたむきに研究をつづける2人の研究者の姿を描きながら、明治から変わらない学歴偏重の日本社会に一石を投じていて、非常に完成度が高い作品です。
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