四国ブロック代表・徳島市立高等学校『水深ゼロメートルから』(作、中田夢花)
演劇部概要
3年生を含む全部員は12人(2020年8月現在)。練習場所は校内のホールで、調光室があり、音響照明も練習可能となっています。全国大会の出場は2度目、顧問の村端先生も演劇部の出身で全国大会出場経験があります。
あらすじ
生理でプール授業を休んだにもかかわらず、補習のためにプールサイドに呼び出された女子生徒2人と中学時代に男子に勝てたのに高校に入り勝てなくなった水泳部の女子らが織りなす物語。滋賀県で起きた女子生徒へのプール強要事件を下敷きに、女子生徒を取り巻く日本社会について取り上げた作品です。今回3校しかない生徒創作脚本学校の一つで、脚本を担当した中田夢花さんは、過去に書いた作品が戯曲賞を受賞する実力派です。中田さんは前年、先生との共作で大会に参加しましたが、「先生がいたから書けたといわれるのが嫌」ということで今回は単独執筆で大会に臨みました。滋賀の事件について「どう思う?」と先生からなげかけて、中田さんがスマホで書いてLINEで先生に送り、先生がストーリーの飛躍や矛盾点などを指摘して、打ち返すという作業を20回以上繰り返し、2か月かけて書きあがったのがこの作品です。村端先生は演劇を動画としてあげることに抵抗があったため、映像作品としてアップされました。
特筆すべき作品数、上演数の多さ
今回全国大会に出場した12校のうち実際に舞台を観たのは川越高校と、この徳島市立高校の2校です。昨年末、東京で行われた高校演劇サミットで彼女たちは、劇団「ままごと」の柴幸男さんの『あゆみ』を演じました。上演前にお客さんと「東京の見どころって何ですか?」「タピオカ飲んでみたいな」など徳島弁で軽快な会話を繰り広げていたのですが、本番が始まった瞬間に「フッ」と一気に芝居の世界に引き込まれました。彼女たちが演じた作品「あゆみ」は、舞台セットもなく役者の技量が作品のクオリティに大きく関わります。冒頭の場面で観客を作品世界に取り込むことが難しい作品でもあるのですが、彼女たちは上演前のリラックスした雰囲気から、作品世界へ一瞬で転換させてしまいました。作品を観終わった後に、冒頭のやり取りすら「田舎から上京してきた女子高生」を演じていたのではないか?と思ってしまうほどでした。普通の高校演劇部は観ている側に「演じている」ということが伝わってきます。それが高校演劇の良さであったりもするのですが、徳島市立高校の演劇部に関しては、演じることが「身体化」されていると感じました。その演技力の秘訣を顧問の村端先生に聞いたところ、「特別な発声や身体トレーニングはしていない。ただ、本番を増やして芝居をやるのに必要な体を作っていく」ことだそうです。特筆すべきは公演回数の多さで、年1度の大会のほかに、4月に校内公演、6月には県フェスティバル、8月は自主公演、9月文化祭、10月は県内フェス、11月県大会、12月四国大会、2~3月は四国3県を回って公演・・・その多くで異なる作品を上演していて年に6本は異なる作品に取り組んでいます。また、自分の体からそんなに離れていない役をメインに、セリフは慣れ親しんだ方言を使い、実感がこもるようにしています。また、もう一つの特徴は本読みが長いことです。2時間の部活で1ページしか進まないことはざらで、朝から夕方まで稽古して4ページしか本が進まなかったこともあるそうです。
作品はこちらからご覧になれます。