北海道ブロック代表・北海道富良野高校『へその町から』(作、富良野高校演劇同好会)
同好会の概要
会員数12人(2020年8月現在)。以前、学校に演劇部はあったものの、一時廃部になっていましたが、同好会として2018年に立ち上がりました。当初は週一の活動でしたが、いまの2年生が大量入部したため、毎日の活動になりました。ただ、部ではないため部費はなく、練習場所は基本は屋外という厳しい環境に置かれています。
演劇の街・富良野
学校がある富良野市はドラマ『北の国から』の舞台として有名で、脚本を務めた倉本聰さんの主宰する俳優養成所「富良野塾」が置かれていました。2000年には市内に劇場「富良野演劇工場」ができ、市民劇団も結成されるなど演劇の街になっています。特に富良野演劇工場では町内の小学校に俳優を派遣し演劇の指導を行い、各小学校が学芸会を劇場で2日間にわたり「演劇祭」として行うなど市民にとっても演劇は身近なものになっているのです。同好会のメンバーにも市民劇団で演劇をやっていた生徒がいるほか、高校生が普通に芝居を観に行く環境にあります。また、富良野高校には表現科の授業があって、俳優を講師にして週4時間演劇に触れ、3年生は1本の舞台を作るなど富良野と演劇は切っても切れない関係になっています。
高知への道は苦難の道
地区大会は去年旭川市で行われたのですが、北海道は広い地域から学校が集まってくるため地区大会から泊りがけです。ところが、部費ゼロの演劇同好会には電車賃しか支給されず、ホテル代節約のため会場近くの公民館に寝袋を持ち込んで3泊しました。近くにコンビニしかなかったため、見かねた栄養士資格を持つ保護者が料理をふるまったそうです。ちなみに部費がないためセットを作ったり運んだりするお金もなく、手持ちのセットはベニヤ板のみ。そんな状況でも地区大会を突破し全道大会出場を決めました。その全道大会でもいきなりの波乱が。音響係の生徒が直前に胃腸炎でダウンし、本番は照明係が音響を務め、照明は出演者がかわるがわる担当するという綱渡りぶり。それにもにもかかわらず全国出場を決めました。ところが、全国大会出場には旅費や宿泊費などで総額200万円以上の費用がかってしまう現実が立ちはだかります。全国大会への切符を手に入れたのに、行けない可能性がでてきてしまったのです。そこで立ち上がったのが地元の劇場関係者でした。彼らは「富高演劇同好会こうち総文出場協賛金準備委員会」を立ち上げ、企業回りなどをして寄付金を集め始めた。まさに町ぐるみ。そんな矢先に中止が決定してしまいました。
あらすじ
舞台は北の国からの舞台となった布別駅という無人駅で汽車を待つ女子高生3人。うち2人は演劇同好会の部員で新作脚本を携え部活に行く途中。一方のもう一人はバドミントン部の部員。主人公の演劇同好会の生徒は小学校の学芸会をきっかけに演劇が好きになり、富良野高校に進学し演劇を始めますが、同好会、壮行会の出し物の中身でもすべり学校内では馬鹿にされています。一方、バドミントン部の女子もほかのふたりと同じく学芸会で演劇を楽しみ演劇同好会に入りたかったのですが、親や兄の反対を受けバドミントン部に仕方なく所属していました。演劇同好会では目下、男子部員を1人勧誘しようといますが、脚本に男性登場人物が2人。来ない汽車を待ちながら、どうする?と3人で新しい脚本を考えるなかで、笑われても蔑まれても演じることや演劇の楽しさに改めて気づいていきます。先生に対する小言や同好会に対するぼやきなど随所に笑いが挟み込まれ、演劇を楽しむ姿が伝わってきます。
作品はこちらからご覧ください。 https://www.websoubun.com/dept/theater/page/001.html