関東ブロック代表・静岡理工科大学星陵高等学校『日本の大人』(作、柴幸男)
演劇部の概要
創部28年で部員は32人(2020年8月現在。活動には中学生7人も加わる)。10年前に顧問に就任した佐野先生は学校のOBで演劇部のOB。ここ10年で関東ブロック大会には4回出場し、今回全国大会に初出場となりました。
コロナ下の部活動
関東大会が終了後、3月の演劇部春公演が中止になり、4・5月は学校が休校になりました。新入生歓迎公演や文化祭が軒並み中止になるなど、上演の機会だけでなく演劇部の新規勧誘の機会が失われる状況になりました。部活動が再開できたのはようやく6月になってから、それも1日1時間からのスタートでした。7月に入っても1日2時間練習ができなかったそうですが、ウェブ総文の撮影を兼ねた劇場での上演にこぎつけました。800人収容のホールに、観客は保護者100人という上演でしたが、客席の反応は上々だったそうです。
「大人」とは何か?
『日本の大人』はままごとの柴幸男さんの作品です。顧問の佐野先生によると「うちの部にはスーパースターはいない。でも、部員たちには恵まれていて、彼女ら彼らのアンサンブルが生かせる作品を!」ということで、いくつかの作品を読み込んで、生徒と教師で選んだそうです。星陵高校ではこれまで、東日本大震災をテーマにした飴屋法水さんの『ブルーシート』など時代を反映した既成作品を上演してきたそうですが、今回「大人とは何か」を問う普遍的な作品を選びました。佐野先生は「大人って何?子どもって何?という問いは、現代の社会状況にもつながっていて、高校生だけでなく大人に刺さる内容。生徒たちにこの作品を通して成長できればと思っている」と話します。
主人公オクダの前に突如現れた32歳のおじさん・クマノ。彼は大人になることを拒否し、小学校に26年生として転校してきます。オクダは当初、彼のことを嫌悪していましたが、次第に気になっていきます。一方、クマノと同じ年になったオクダは仕事をせず家で過ごす毎日。久しぶりに会った同級生は「クマノ」のことを忘れていました。大人になろうとしないクマノと小学生オクダ、そして、現在のオクダを通して大人になるとは何かを問う作品です。
プロの脚本を演じる難しさ
今回の全国大会に出場した学校の中で、プロの描いた既成脚本を上演した学校は星陵高校一つです。ここからは少し私見を書きます。高校演劇でプロが描いた作品を上演している学校に対し、「プロの本を使っているから面白くて当然」という感想を持たれる方もいると思います。ですが、私の実感として高校生が既成の、特にプロの脚本を演じるのはとても難しいことだと思っています。すでにあるキャラクターを“高校生が演じる”難しさに加え、審査員が元の作品を観ていて、比較される可能性があり、独自の世界観を作る難しさがあるからです。全国大会に進む多くの学校で顧問や生徒創作がされているのは、生徒たちに近い登場人物を出せるアテ書きが可能だからという側面もあります。そんななか星陵高校の作品は、生徒たちの演技力が素晴らしく、物語に引き込まれます。観終わった後には、この作品はプロの作品ではなく、彼らでしか演じられない作品だったと実感しました。
作品はこちらからご覧になれます。
https://www.websoubun.com/dept/theater/page/005.html
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