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実写版・きらめきのラミナーリア【戯曲脚本】

脚本 にしだ


◆登場人物(2~3)

広瀬 カヨ(ひろせ -)
 主人公。漫画『きらめきのラミナーリア』に登場する服部ミキヤに想いを寄せる高校生。


服部 ミキヤ(はっとり -)
 漫画『きらめきのラミナーリア』の登場人物。カヨが推しているキャラクターが実写化した存在。


カヨの父
 カヨの父親、声だけの登場。兼役可能。




◆本編

カヨの自室、漫画の本が沢山ある、カヨ、だらけて漫画(週刊誌)を読んでいる。

漫画を読み終え、カヨ悶絶。

カヨ「くぅ~! 今回の『きらめきのラミナーリア』、よかったあ~! いつにもましてミキヤ君かっこよすぎッ!」

カヨ、お面を被りミキヤになりきる。

カヨ「さあ行こうプリンセス! 大丈夫……俺を信じて、君なら素晴らしい未来を描き出せる!」

カヨ、再び悶絶。

カヨ「かっこよぉ~! 惚れる! これは惚れるわ~! こんな事言われたら惚れますよ~っ!」

父(声)「おいうるさいぞカヨ! 何時だと思ってるんだ!」

カヨ、黙る。

父(声)「全く、学校にも行かないで部屋で漫画ばかり読んで……、明日こそ学校に行けよ!?」

しばらくの沈黙、カヨ、少し拗ねる。

カヨ「……誰が学校になんていくもんですか……!」

布団の上で再び漫画を読み始めるカヨ。

カヨ「学校なんて行かなくても、私の居場所はここにある、私は今楽しんでるんだから!」


翌朝、眠っているカヨ、カヨの部屋に何故かミキヤがいる。 ミキヤは客席に背を向けて立っている。


しばらくして目覚めるカヨ。

カヨ「ふぁ……朝か……」

カヨ、起き上がりミキヤに気付く。

カヨ「えっ……?」

カヨ、困惑。

カヨ「えええっ、こ、この後ろ姿……見覚えがある! そう、そうだ! 『きらめきのラミナーリア』の……私の推し!! 服部ミキヤ君!!!!」

ミキヤ「フッ、そう、俺はプリンセス、君を救う為に“実写化”した……服部ミキヤだっ!!!!」

ミキヤ、振り向く。

カヨ、フリーズ(ミキヤが原作と違う実写化した容姿の為不審者だと思っている)。

ミキヤ「おっと、驚いたか? それもそうだろう、なんてったって俺は君がずーっと推していた……服部ミキヤなのだから!!!!」

カヨ「あ、あの……すみません、それ、やめてもらっていいですか?」

ミキヤ「えっ? どうした? あ、騒がしくするとお父さんに怒られるか」

カヨ「いや! そうじゃなくて、解釈違いっていうか目に悪いっていうかキモいっていうかなんていうか、とりあえず……警察呼びますよ!?」

ミキヤ「な、何故!? 俺は君がずっと推していた服部ミキヤだぞ!?」

カヨ「貴方なんかがミキヤ君を騙らないでケダモノ!!」

ミキヤ「ケダモノ!? 君の推しだろ!? ケダモノて!」

カヨ「キャ――!! キャ――!! 不審者キャ――――ッ!!」(騒ぎまくる)

ミキヤ「きゃ――!! そ、そうか、もしかしたら急に出てきたからパニックになっているのかもしれん! カタルシス・ウェーブ!!」(ミキヤ、手から音波を出す)

カヨ、カタルシス・ウェーブによって落ち着きを取り戻す。

ミキヤ「落ち着いたか……」

カヨ「カタルシス・ウェーブはミキヤ君が使える人の心を安らげる技……どうしてあなたがそれを!?」

ミキヤ「何度も言っているじゃないか、俺は、君の推し……服部ミキヤだよ!!!!」

カヨ「キャ――ッ!! ヤ――!! ワ――!!」(騒ぎまくる)

ミキヤ「うるさいうるさい! 朝からうるさーい! カタルシス・ウェーブ!!」(手から音波を出す)

カヨ、落ち着く。

ミキヤ「落ち着いて聞け! 俺は君の心に呼ばれてここに来た、君の俺を推す心が……俺を実写化させたんだよ!」

カヨ「いやそれはいいけど~~! それはいいけどさ~~!! どうして実写化したの――!? どうせなら漫画のままのミキヤ君がいいよぉ――!! 実写化なんて誰も望んでないからぁ――!」

ミキヤ「じゃあ……」

ミキヤ、部屋にあるお面を被る。

ミキヤ「これでどうだ?」

カヨ「おおミキヤ君だ……」

ミキヤ「じゃあしばらくこれで話すぞ? ……俺は漫画の中から、君をずっと見ていた」

カヨ「私を……?」

ミキヤ「ああ、広瀬カヨ、君が漫画を読み進めグッズを買いあさるほどに、俺が一人の人間として実写化することが近づいた、君の俺への想いが、俺をこの世界まで引き上げた、だからここまで来れたんだ」

カヨ「で、ミキヤ君が私に会いに来てくれたってことは……私を迎えに来てくれたの?」

ミキヤ「……いいや、逆だ。 俺は君がこの部屋から出て、学校に行くようになってほしいと思っている」

カヨ「え……?」

ミキヤ「ずっとこの部屋で漫画を読んでいても、君の時間は止まったままだ、君の家族もやがては君に期待も何もしなくなって、君は孤立してしまうぞ」

カヨ「べ……別に私は構わない! それで私は幸せだもん、家族に期待されなくたっていい! 私にはミキヤくんがいる!」

ミキヤ「そのミキヤ君が、君に立ち上がるように言ってるんだが?」

カヨ、ミキヤのお面を破る。

カヨ「あなたなんてミキヤ君じゃない!! ただのコスプレおっさんだよ!!」

ミキヤ「コスプレおっさん!?」

カヨ「コスプレおっさんの話なんて聞きたくありませんっ!」

カヨ、塞ぎ込む。

ミキヤ、ため息。

ミキヤ「困ったプリンセスだ……、傷つくなあ、実写化したって、俺は服部ミキヤだってのに……」

カヨのモノローグ演出(サスなどを用いてやっていただけると分かりやすい、もっといいのがあればそれで)

カヨ(M)「どうして……どうして? ミキヤ君……、違うよね? あいつはニセモノだよね!? 本物のミキヤ君はありのままの私を受け入れてくれる……! 私はあんなのをミキヤ君とは認めない!」

モノローグ終了

カヨ、漫画を読み始める、部屋でごろごろしている二人。

ミキヤ「お、また読みだした。 ホント、俺の事好きだね、君」

カヨ「あんたじゃない! 私が好きなのはミキヤ君!」

ミキヤ「俺じゃん」

カヨ「うるさいニセミキヤ!! ていうか! いつまで私の部屋にいるつもり!? 早く帰ってよ!!」

ミキヤ「俺は俺の望みを果たせるまで帰れないんだよ、君が学校に行くまで俺は消えない」

カヨ「はあ!?」

ミキヤ「ほら、俺に帰って欲しいなら、今からでも遅くない、学校にいきなよ」

カヨ「い・や・だ!」

ミキヤ「……そんなに拒否するのはどうして? なんかいじめられたりでもしてんの?」

カヨ「別にそういうわけじゃない」

ミキヤ「じゃあ行ってもいいじゃん、行って帰ってくるだけ!」

カヨ「別に行ったって……私の居場所があるわけじゃないし」

ミキヤ「居場所?」

カヨ「そう、居場所。 ここは私の好きなものがある、私の居場所。 でも、学校はそうじゃない、居場所を失くしたらどうにもならないんだよ」

ミキヤ「ふーん……じゃあ、自分の力で変えればいい」

カヨ「そんな漫画みたいな事できるわけないでしょうが」

ミキヤ「漫画みたいな、ねえ……」

カヨ「漫画はいいよ、革命だとか、奇跡だとか、現実にはないいいこと尽くしでさ、ホントに羨ましい」

ミキヤ「俺達からしてみれば、それも俺達が生きようとして手に入れたものだからな」

カヨ「生きようとして?」

ミキヤ「俺達は俺達で、あの中で必死に生きてる。 だから世の中を変えたり、奇跡だって起こせる」

カヨ「だから同じように私にやれと? 現実と漫画を一緒にしないで。 ……漫画から出てきたなら、私の事を受け入れてくれたっていいじゃん」

ミキヤ「受け入れる、か。 別に俺は君を拒絶してはいない、むしろ君に拒絶されてる方ではあるけど」

カヨ「私をこんな退屈な世界からそっちに連れ出してって意味だよ! 革命も、奇跡もある、漫画の中の世界にさ!」

ミキヤ「それはできない、あくまで俺は実写化だから」

カヨ「ホント、使えない!」

ミキヤ「君ね、さっきからトゲトゲトゲトゲ言葉の針が鋭いよ? さっきも言ったが実写化してるって言っても俺だって服部ミキヤなんだぞ」

カヨ「うるさいうるさい! 私は絶対認めない! 本物のミキヤ君は、私にそんな酷い事言わないんだ、いつか、本物のミキヤ君が私を迎えに来てくれる……」

ミキヤ「俺がミキヤじゃないとして、本当に本物のミキヤがそんな事すると思うか?」

カヨ「してくれるよ! 私の王子様なんだもん、王子様は囚われの姫を助けに来てくれるのよ」

ミキヤ「囚われの姫ねえ……、一体君は誰に囚われてるっていうのさ」

カヨ「そんなの! ……」(対象が出てこず口籠る)

ミキヤ「君は囚われてなんかいない、むしろ君は、囚えている側じゃないか?」

カヨ「囚えている? 私が? 誰を?」

ミキヤ「自分自身を。 自分自身をこの狭い部屋に閉ざして、未来の可能性を奪っている、自分自身から」

カヨ「え……ち、違う」

ミキヤ「違うか? 本当に開放を望むなら、君は漫画の中じゃない、現実に目を向けるべきなんだよ」

カヨ「やめて」

ミキヤ「僕は君を助けられない、閉じこもったのは君なんだから」

カヨ「やめてよ……!」

ミキヤ「君自身が踏み出そうとしないのに、誰が助けてくれると思ってるんだ?」

カヨ「やめてって言ってるじゃん!! ……いいじゃん、逃げたって。 別にいいじゃん! わかってるんだよ、ここに居たって私に明るい世界がないってことは、でもそれはここの外でも変わらない! だから逃げて何がいけないの!?」

ミキヤ「逃げることは悪じゃない、でも、逃げるからには必ず立ち直らなきゃいけないんだ、立ち向かう強さを手に入れなきゃいけないんだ!」

カヨ「まだだよ! ないよ、私にはそんな力……!!」

ミキヤ「だから俺が背中を押しに来た! その為の実写化だから!」

カヨ「誰も望まなくても……あなたはそんな想いで実写化を続けるの……?」

ミキヤ「その果てに誰かを助けられるなら、背中を押せるなら何度でも」

カヨ「否定しかされないかもしれないんだよ? こっち側に出てきても、好きだった人に嫌われるかもしれない、誰かの気持ちを裏切るかもしれない! それでも!?」

ミキヤ「それでもさ、それでも。 誰もみんな、とにかく、とにかく……前に進まなきゃいけないんだよ」

カヨ「私には……できないよ、また誰かに嫌われる勇気なんてない……」

ミキヤ「大丈夫、確かに生きていれば嫌われることは沢山ある、そのたびに傷つくこともある、辛い事は沢山ある。 でも、同じ数、いや、それ以上の出会いがある、それ以上の喜びがある……君が変われば世界は変えられるんだよ」

カヨ「私が変われば……?」

ミキヤ「そう、最後は君自身の手で扉を開かなきゃいけないんだ、俺じゃない、君が開くんだよ、未来の扉を」

カヨ、部屋の扉に向き合う、だがイマイチ勇気が出ず、扉から逃げようとする。
だがミキヤと目が合ってしまう。

ミキヤ「大丈夫、君なら素晴らしい未来を描き出せる!」

カヨ「……そっか、認めたくなかったけど、それでも君は、いや、君は本物のミキヤ君なんだね」

ミキヤ「ああ、そうだ、俺を信じろ、俺は君が推し続けた……服部ミキヤだ!! 行け! プリンセス!!」

カヨ、再び扉に向き合う。 扉を開き、歩み出す(ハケ)。 ミキヤ、カヨを見届ける。

ミキヤ「……いってらっしゃい」

ミキヤ、しばらくの余韻に浸り終え、部屋に置きっぱなしの漫画を手に取る。

ミキヤ「……君の行動をもって証明できた、立ち向かう事にも意味があるんだって、それが今は否定しかされなくとも、続ければきっと、明るい未来が描き出せる」

ミキヤ、漫画本を閉じる。




 -終-


……という事で、実写版・きらめきのラミナーリアでした。
こちらの脚本は、自分がかつて所属していた演劇部の為に書いたものです。
オリジナル脚本を書ける部員がいなくなっていた為、こちらは脚本を改変して使用する事も可能かつ、理由が明確でない感情をどのように補完して演技するかの練習になるのではないかと思い、あえてこのような内容にしている部分もあります。
もしこの劇をやってみたい!という方などいらっしゃれば、一報くだされば全然好きにやっていただいて問題ないです。
キャラクターも好きに増やしたり、改変したりして、是非、君だけの『きらめきのラミナーリア』を上演してください!

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