「三代の盃」〜若い勝新太郎演じるやくざの苦い覚醒
シネマヴェーラ 「三代の盃」1962年、森一生 監督。
勝新太郎が若い作品。やくざ映画らしく、任侠道、暗殺、殴り込みなど定番のパターンを踏襲しているが、それにもかかわらず、どうも変わった感じをうける。やくざ渡世に対する陶酔感、感情移入できるようなシカケが、この映画にはあまりないのだ。
勝新太郎演じる若いやくざは、任侠道を極めようとして世の中に出て、明治維新をはじめとして「もっと大きな」視点を学んで帰ってくる。そしてそれは、最終的にはやくざの渡世そのものを否定してしまう。明治維新を経て、任侠道という価値観じたいが脱ぎ捨てられるべきものであると感じた主人公の苦い覚醒のような諦念は、やくざ映画らしからぬものであった。
ひょっとしたら、明治維新に対するこういった感情は当時は比較的共有されていたのかもしれないのだが、いま自分が観てもすぐには分からない。ひょっとしたら新美南吉の「おじいさんのランプ」で、電気の時代を迎えて、ランプを自ら葬ってゆくランプ売りのような感情なのかもしれないが・・・。