名画座は夜の学校だった
意識して都内の名画座に通うようになったのは、2013年のことだったので、もう6年ほど通っていることになる。きっかけはシネマヴェーラ渋谷だった。会員になって、なんとなくポイント割引を使わずにいたら、とうとう999ポイントになってしまった。ひょっとして、もう一つ観たら、カウントがゼロにリセットされてしまうのだろうか?
なぜポイントを使わなかったのか、なんとなく、この映画館の株を買っているようなつもりだった。館主・内藤篤氏の回顧録『円山町瀬戸際日誌』(羽鳥書店)刊行時、2015年時点でのインタビューがある。
もともと知財関連の弁護士だったという内藤館主がシネマヴェーラ渋谷を立ち上げたいきさつはインタビューに詳しいが、ようやく黒字化したところだと同書にも述べられていた。
また映画についてほとんど無知だった自分にとっては、あるいみ、夜学に通っているようなつもりだったこともある。何を学ぶのか、いろいろ思うところはあるが、ひとつは「自分の生まれるまでの時代背景について知りたい」という点が大きかった。具体的には昭和三〜四十年代まで、そして戦前にさかのぼる日本の風景である。
最近になってひょんなきっかけから、この目的が自分にとって予想以上に大きな意味があり、名画座を攻めたのはかなり「正解」だったことが分かったのだが、そのことはまた書いてみたい。
前掲のインタビューにもあったように、プログラムはかなりまんべんなくセレクトされていたので、ほとんどの企画を「なめて」、なるべく全作品を観るようにした。これを五年近く続けるのは、かなり体力的にはハードだったが、得るものはあったと思う。でも名画座の常連になることではなく、何かを学ぶことが目的だった。名画座は夜の学校のようなものだった。
とはいえ学校は卒業するものである。相変わらずシネマヴェーラ渋谷にも、他の名画座にも通うことになると思うが、一つの節目を通過した感じがある。そろそろ、ポイント割引を使っても良いかもしれない。
さいごに、記事を分けて、これからかかる予定の、名画座でしか見れない(現時点でソフト化されていない)個人的なオススメ作品を紹介しておきます。