短評:オー・ヘンリー原作のオムニバス映画「人生模様」
シネマヴェーラ 、ハワード・ホークス特集で「人生模様」を観る。
原題は「オー・ヘンリーのフルハウス(O.Henry's Full House)」、1953年。
オー・ヘンリーの短編5作を複数の監督(ヘンリー・コスター 、ヘンリー・ハサウェイ、ジーン・ネグレスコ、ハワード・ホークス、ヘンリー・キング)が担当したオムニバス作品であり、狂言回し役としてなんとジョン・スタインベック本人が登場する。
第一話「警官と聖歌」チャールズ・ロートンが主役。マリリン・モンローがチョイ役で登場するが、クレジットされているので既に端役扱いではない。
第三話「最後の一葉」に登場する老画家(グレゴリー・ラトフ)はどうもドイツ系移民の設定らしく、なまりがある。原作ではどうだったか確認してみたい。
第四話「赤毛の酋長の身代金」、田舎町でわんぱく小僧を誘拐して身代金をせしめようとする詐欺師コンビが逆にひどい目に遭う。詐欺師たちが誘拐した子どもを連れてアジトで寝ていると、子どもが手名付けたクマがやってきて詐欺師たちはびっくりする。
このシーンで思い出すのは手塚治虫「シュマリ」である。シュマリのもとにアイヌの幼い孤児ポン・ションがやってきて居座ってしまうくだりで、同じようにポン・ションになれたクマがやってきてシュマリがびっくりする。
手塚治虫はおそらくこの映画をきっと観ていただろうし、ボキャブラリとしてしみこんでいた可能性は高い。
それにしてもこのように比較してみると、「シュマリ」は維新後の北海道開拓地を舞台にしているが、西部劇などの要素がしっかり織り込まれ、なおかつ史実をぶちこんで独自のアレンジが施されていることに気がつく。おもしろいアダプテーションである。
劇中でスタインベックが語るように、オー・ヘンリーの短編は文章で読んだほうが良いのかもしれないが、執筆から百年以上経った現在では風物に馴染みがもてない可能性のほうが高い。そこでこういった映画で当時の風物やディテールをある程度「画として」知ることができる意味は大きい。観てからもういっかい読むのが良さそうだ。