音楽のコメディリリーフ?
Twitter で音楽仲間の rujou (るじょう)さんと話していて、おもしろいことに気がついた。
rujou さんは2017年から Changeling と銘打たれた一連のアルバムを制作している。
このシリーズは、rujou さん自らの手になる、オリジナルの物語が背景になっている。ファンタジイ的な要素を含んだ悲劇なのだが、次にリリースする作品は、どうやらこれまでにもまして、あまりにも悲劇的な展開になってゆきそうだという。
そこでふと、気になったのは「音楽にコメディリリーフはあるか」ということである。
現代の映画や漫画など、物語芸術をみていると、救いようのない展開の物語や悲劇には、ときどきコメディリリーフ要素が挿入されたりする。
パッと思いつくのは、手塚治虫「どろろ」。主人公の百鬼丸はきわめて悲劇的な運命を背負ったニヒルなヒーローである。しかしいつもヘラヘラ笑っているがバイタリティのある小僧のどろろが百鬼丸の道連れとして関わってゆくことで、緊張が緩和される。それはまた、百鬼丸の絶望やニヒリズムを救うことにもなる。
コメディリリーフには、ユーモアで緊張感を緩和して、物語が単調になるのを防ぎ、少し違った視点を与えて物語の奥行きを深くする働きがある。
ときにはそうやって緊張を緩和することによって、悲劇的な要素やシリアスな展開がかえっていっそう浮き彫りにされることもある。バットマンの映画シリーズは典型的だと思う。「バットマン・リターンズ」のペンギンや、「ダークナイト」のジョーカーなどは、シリアスではない装いをしているせいで、彼らの暗黒面がいっそう強調されてしまう。むしろ怖いといってもよい。
ところで物語ではなく、音楽ではどうなのだろうか?
物語的な流れに近い比較的尺の長い曲や、プログレなどにみられるトータル・アルバム的な構成を考えてみると、リリーフ的、つまり緩和的な展開や構成を採用することは、よくあることだろう。
ソナタ形式でも第二楽章、起承転結の「承」にあたる部分は緩徐楽章になる。
キング・クリムゾン「クリムゾン・キングの宮殿」などをみても、1曲目:速いヘヴィなジャズロック、2曲目:静かなバラード、3曲目:メロトロンを使った重厚かつシリアスなテーマの曲・・・という緩急をつけた選曲になっている。
フランク・ザッパの作品はシリアスな音楽の中にいきなりコントが入ったり、コメディ的なフレーズが挿入される展開が多いが、ショー的というか、むしろコラージュに近い印象もある。
あくまで印象だけど、音楽では「リリーフ」はかなり重視されるが、コメディ要素はどちらかというと舞台的な演出にとどまりそうな気がする。