容疑者ポテトチップス
自分は基本的に早く家を出る。
バイトでさえも出勤時間の1時間前にはもう出発している。
というのも、集合時間にギリギリに到着するのが怖いのだ。
それなら、集合時間に着いてから何かしら時間を潰していた方がいい。
何故そんなに時間に対して恐怖心を抱いているのか?
それにはしっかりと理由がある。
話は高校2年生まで遡る。
その日は台湾の修学旅行の前日だった。
当日の集合時間は朝の6時半。
控えめに言っても早すぎる数字
おそらく早めの飛行機に乗って行かないとあちらで企画している行事ごとが上手く進まないのだろう。
集合場所は市役所の前
親に車を出してもらわないといけないな。
そんな計画を頭の中で色々立てていた
この時間にはアラームセットして、この時間にはもう寝ておいて…
粗方、明日の修学旅行の詳細を伝えられたタイミングで、最後先行がこう言い放った。
「明日の集合時間に遅れた者は、1分であろうとも置いていきます。」
またまたぁ〜
そんな大袈裟な。
1分くらいじゃ置いて行かないくせに。
だがその先行の目には確かに狂いはなかった。
そりゃそうだ
台湾で団体行動をしていく中で、第一関門であるバスの集合時間も守れないようなやつを連れていくわけがない。
先行は、この大量の命を預かっているのだ。
17歳なんて大人びた子供のようなものだ。
先行からしたら危なっかしくて仕方ないのだろう。
これは、絶対に遅刻するわけにはいかない。
そしてその夜22時半頃、僕は自分の部屋にいた。
この時間までゲームをして時間を潰していたのだ。
このタイミングで僕は小腹が空いてしまった。
そうだ、今日学校帰りに買っておいたポテトチップスがある…
しかし、時間的にはもう寝ておきたいタイミングではある。
でも、ポテトチップスを食べ切る時間なんてしれたものだ。
こんなもので何も影響しない。
しかし、もう寝て起きたい
だがしかし、ポテトチップスを食べたい。
もう口がポテトチップスのためにスタンバイを始めている。
いや、絶対寝ておいた方がいい
ポテトチップス食べたい
ああーーーどうしよう?
そんな1人会議を続けた結果、
僕はポテトチップスを食べることにした。
あー美味しいなあ。今のお腹のスペースにはちょうどいい。
食べてよかったあ〜
ポテトチップスで己の欲求を満たした後
しっかりと5時に目覚まし時計をセットし眠りについた。
そして翌日、ふと目を覚ます。
んっ?やけに外が明るいな
時計を確認する
5:50
なんや、まだ5:50かあ…
集合時間は6:30に学校やから…
ええーーーーー?もう今5:50ーーー⁇
すぐさま私は布団から飛び起き、父を軽いビンタで目を覚まさせた。
「起きてーーーー!起きてーーーー!」
軽く半泣き状態になりながら、怒られない程度の強さで頬を叩き父の目を覚まさせた。
時間は40分しかない。
何故こう追い詰められた時って、支度がスムーズに進むのだろう?
やるべきことが、考えなくても全て目に見えてくる。
わずか20分ほどで支度が完了。
眠たい目を擦って、父はなんとか僕を集合場所の市役所前に送り届けた。
到着後、自分のクラスが書かれたバスに乗り込むと、他のクラスメイトはもうすでに全員到着していた。
それもそのはず、僕が到着したのは集合時間の僅か2分前だった。
車内に起きるどよめき
息を切らしながら席に座ると、周りから聞こえてくるのは
「ギリギリやったなー」
「もうこーへんのやと思った」
「こうなったら逆に、こーへんパターンも見てみたかった」
なんでやねん
なんでこーへんパターンを身を削って実証せなあかんねん
この年頃の奴らは「パターン」とか「ノリ」といった言葉をやたら使いたがる
なにわともあれ、なんとか台湾に向けて出発することができた。
何故こんな寝坊をしてしまったのか?
皆さんもお分かりだろうが、原因はきっとアイツだ
ポテトチップス‼︎
犯人はお前や
あのタイミングでお前なんか食べなければ、余裕を持ってバスに乗れていたのに。
なんやその表情?
斜め上ばっか見やがって
なんやそのタスキ?
今日の主役なんか。
無駄な体力を消耗した。
昨夜の過ちを激しく後悔する自分
その様子を見たポテトチップスのキャラクターが、おとぼけ顔からニヤリと表情を変えた
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