特に高みは目指さないけど読みは覚えたいと思っているあなたへ⑤発声練習をしてみよう

さて、今回は「発声練習」についてお話していきたいと思います。

かるたの練習をする時には、ただ対戦するだけでなく、払い練習や札の認識度を上げる練習などの基礎的な練習もやると思います。かるたに限らず、基礎になる練習というのは大事なものです。
声を出すことも同じで、やっぱり少しでも練習をするに越したことはありません。でも、発声練習なんてやったことがない!何をすればいいのか分からない!という人向けに、私がやっている発声練習をご紹介したいと思います。

①s音を出す
まず最初は、息を出すことからやります。出す息は「s音」です。競技かるた的には「さ・す・せ」の子音に当たる音ですね。これを出していきます。

s―――――――――――――――――・・・

という感じです。息だけ出します。
これを、出来るだけリキまない範囲で可能な限り長めに出してみましょう。これは、陸上で言うなら、走る前のストレッチ的な意味があります。いきなり全力疾走する選手はいませんよね。それと同じで、喉もウォーミングアップしてから声を出してあげたいものです。
これを、出来るだけリキんだりせず、体を緊張させないようにしながら出来るだけ長く出していきます。タイムも測ってみましょう。30秒以上出来るようになったら、結構いい感じに息が持つようになると思います。

s音を出すのを3セットくらいやったら、次のウォーミングアップです。

②z音を出す
s音を出した後は「z」の音、日本語で言うと「じ」の子音に当たる音です。これを長く出していってみます。

z―――――――――――――――――・・・

出すときに、前歯に振動が来るのを意識して声を出してみてください。
s音の時は息だけ通していたのでどこも震えたりしていなかったと思いますが、今度は声帯も動かしているので喉の奥の方にも振動があるのが分かると思います。でも、声帯よりも歯の方に振動が来るように意識して出していきます。難しそうに聞こえますが、やれば案外できるものなので試してみてください。

あんまりリキまない体勢で、タイムは測らなくて良いので何セットか繰り返しやってみてください。私は5セットくらいやることが多いです。傍から見ると変な人に見えるので気を付けてください(苦笑)

③「ん」の音を出す
今度は「ん」です。n音じゃなくて「ん」です。
唇を閉じて「ん」を長く出します。

ん―――――――――――――――――・・・

これを、ただ出すんじゃなくて、閉じている唇が震えるようにして音を出していくこと。唇がくすぐったいような感じになりますが、これを長めに出すことを何回かやってみてください(z音と同じ程度でいい)

これは、B級公認の頃、発声について悩んでいる時にジャズシンガーをしている友達から聞いた発声の練習方法です。声出しのウォーミングアップとして一連の流れでやっていって、それからようやくちゃんと声を出して練習していきます。

④ロングトーン
ウォーミングアップ後にやっている練習というと、この「ロングトーン」です。ロングトーンとは、一つの音を長く出し続ける練習のことです。
私は「お・い・う・え・お」の5音でロングトーンをやります。これもタイムを測って出来るだけ長く出していけるようになりたい所です。
長く出せるようになれば読む時に息切れしなくなるので、息が続かないという人はぜひやってみてください。目標は30秒くらいです。
読みの1サイクルは「下の句5秒程度+余韻3秒+間1秒+上の句6秒程度」の合計15秒かかります。途中の「間」の1秒の間に息継ぎをするので、連続して出し続けるのは8秒程度あるわけです。しかも声を張って出すわけですから、最低でも倍の秒数は伸ばせるくらいにはなっておきたいですし、全部読み切れるぞというくらいに息が続くという余裕を持っていれば読みに臨む時に怖くなくなるので、長く続けられるよう訓練するのは良い事だと思います。

「大きな声を出すのが困難な時は、ロングブレス(息を長く吐く)だけでもするようにしている」という話を五味専任読手から伺いました。以来、声を出しづらい環境の時は「あ・い・う・え・お」をブレスだけでやる練習をしてみています。

⑤外郎売を読む
次に「発声」と「発音」の両方を兼ねた練習です。これは「歌舞伎十八番」として上演されるものの一つなのですが、現在アナウンサーや声優などをやっている人の定番となっている練習内容です。
その気がある人はぜひ暗唱できるようになると良いでしょう。私はいつも洗濯物を干す時か車の運転をしている時にブツブツつぶやいています。完全に変な人にしか見えませんが、覚えておけばいつでもできるので便利です。

漫画「ちはやふる」に出てくる五十嵐専任読手がこれを呟いているシーンが描かれていましたが、キャラクターのモデルとなっている稲葉専任読手から実際に勧められた練習方法でもあります。

発声はもちろんですが、早口言葉がたくさん出てくるので滑舌の練習にはもってこいです。以下、内容です。

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【外郎売】
拙者親方と申すは、御立会のうちに御存知の御方も御座りましょうが、お江戸を発って二十里上方、相州小田原一色町をお過ぎなされて、青物町を上りへお出でなさるれば、欄干橋虎屋藤右衛門、只今は剃髪致して「圓斎」と名乗りまする。

元朝より大晦日までお手に入れまする此の薬は、昔、珍の国の唐人・外郎という人、我が朝へ来たり。帝へ参内の折から此の薬を深く込め置き、用ゆる時は一粒ずつ冠の隙間より取り出だす。依ってその名を帝より「透頂香」と賜る。
即ち文字には「頂き・透く・香(におい)」と書いて「透頂香」と申す。

只今では此の薬、殊の外、世上に広まり、方々に偽看板を出だし、イヤ小田原の、灰俵の、さん俵の、炭俵のと色々に申せども、平仮名を以って「ういろう」と記せしは親方圓斎ばかり。もしやお立会の内に、熱海か塔ノ沢へ湯治にお出でなさるるか、又は伊勢御参宮の折からは必ず門違いなされまするな。
御上りならば右の方、御下りなれば左側、八方が八つ棟、面が三つ棟、玉堂造、破風には菊に桐の薹の御紋を御赦免あって、系図正しき薬でござる。

イヤ、最前より家名の自慢ばかり申しても、ご存知無い方には正真の胡椒の丸呑み、白河夜船。さらば一粒食べかけて、その気味合いを御目にかけましょう。
先ず此の薬をかように一粒舌の上に乗せまして、腹内へ納めますると、イヤどうも言えぬわ、胃・心・肺・肝が健やかに成りて、薫風喉より来たり、口中微涼を生ずるが如し。魚・鳥・茸・麺類の食い合わせ、その他万病即効在る事神の如し。

さて此の薬、第一の奇妙には、舌の廻る事が銭ごまが裸足で逃げる。ヒョッと舌が廻り出すと矢も盾も堪らぬじゃ。

そりゃそりゃそらそりゃ、廻って来たわ、廻って来るわ。アワヤ喉、サタラナ舌にカ牙サ歯音、ハマの二つは唇の軽重開合爽やかに、アカサタナハマヤラワ、オコソトノホモヨロヲ。一つへぎへぎに、へぎ干し・はじかみ、盆豆・盆米・盆牛蒡、摘蓼・摘豆・摘山椒、書写山の社僧正。小米の生噛み、小米の生噛み、こん小米のこ生噛み。繻子・緋繻子、繻子・繻珍。
親も嘉兵衛、子も嘉兵衛、親嘉兵衛・子嘉兵衛、子嘉兵衛・親嘉兵衛。古栗の木の古切り口。雨合羽か番合羽か。貴様の脚絆も革脚絆、我等が脚絆も革脚絆。尻革袴のしっ綻びを、三針針長にちょと縫うて、縫うてちょとぶん出せ。河原撫子・野石竹。のら如来、のら如来、三のら如来、六のら如来。
一寸のお小仏にお蹴つまずきゃるな、細溝にどじょにょろり。京の生鱈、奈良生真名鰹、ちょと四五貫目。お茶立ちょ、茶立ちょ、ちゃっと立ちょ。茶立ちょ、青竹茶せんでお茶ちゃっと立ちゃ。
来るわ来るわ何が来る、高野の山のおこけら小僧、狸百匹、箸百膳、天目百杯、棒八百本。武具馬具、武具馬具、三武具馬具、合わせて武具馬具、六武具馬具。菊、栗、菊栗、三菊栗、合わせて菊栗、六菊栗。麦ごみ麦ごみ、三麦ごみ、合わせて麦ごみ、六麦ごみ。あの長押の長薙刀は誰が長薙刀ぞ。向こうの胡麻殻は荏の胡麻殻か真胡麻殻か、あれこそ本の真胡麻殻。がらぴぃがらぴぃ風車。起きゃがれ小法師、起きゃがれ小法師、昨夜も溢してまた溢した。たぁぷぽぽ、たぁぷぽぽ、ちりからちりから、つったっぽ、たっぽたっぽ一干蛸。落ちたら煮て食お、煮ても焼いても食われぬ物は、五徳・鉄灸、金熊童子に、石熊・石持・虎熊・虎鱚。中でも東寺の羅生門には、茨木童子が腕栗五合掴んでおむしゃる、彼の頼光の膝元去らず。鮒・金柑・椎茸・定めて後段な、蕎麦切り・素麺、饂飩か愚鈍な小新発知。小棚の小下の小桶に小味噌が小有るぞ、小杓子小持って小掬って小寄こせ。
おっと合点だ、心得田圃の川崎・神奈川・程ヶ谷・戸塚は走って行けば、やいとを擦り剥く。三里ばかりか、藤沢・平塚・大磯がしや、小磯の宿を七つ起きして、早天早々、相州小田原、透頂香。隠れござらぬ貴賎群衆の花の御江戸の花ういろう。アレあの花を見て、お心をおやわらぎやあと言う。産子・這子に至るまで、此の外郎の御評判、ご存じ無いとは申されまいまいつぶり、角出せ棒出せぼうぼう眉に、臼杵すり鉢ばちばちぐゎらぐゎらぐゎらと、羽目を外して今日お出でのいずれも様に、上げねばならぬ、売らねばならぬと息せい引っ張り、東方世界の薬の元締、薬師如来も照覧あれと、ホホ、敬って、外郎はいらっしゃりませぬか。
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長くて覚えるの無理、と思う方もいらっしゃるかとは思います。
私も最初「外郎売を練習してみなさい」と言われた時は「無理wwwそもそも覚えられないwwwww」などと思いましたが、頑張れば案外覚えられるものです。覚えているおかげで、小学校の読み聞かせボランティアなどで時間が余った時にちょっとやってみせると大変ウケが良く、覚えて損はありません。ぜひチャレンジしてみてください。


発声練習には色々なものがありますが、まずはこういった感じのことをやってみてから読みに臨んでみると良いと思います。全部は無理でも、どれかとどれかの組み合わせだけでもいいのでやってみましょう。継続は力です!

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