公認読手体験記~未公認の部第1話

ここでは、自分がA級公認読手になるまでにやってきた色々な事を書いていきたいと思います。最初は「未公認編」です。

まず、私が読手に憧れを抱いたきっかけから。
私が初めて参加した全国大会というのは、山形県米沢市で開催されていた「上杉杯」でした。何もかもが初めてのことだから見るもの全てが新鮮で、試合前の緊張に加えて、その環境にもドキドキしたものです。開会式では読手紹介がされていたはずですが、あまり開会式を覚えていません。相当緊張していたのでしょう。
1回戦は不戦だったので、控えの場所で体育座りしていたら、私の目に入ってきたのは和装で読唱席に立つA級公認読手の姿でした。その姿を見て「和装!ステキ!」と思い、その和装姿で読唱をする人をず~~~っと見ていました。

読手さんってカッコいいなぁ・・・

と思ったその時が、本格的に読手に興味を持った瞬間だと思います。
「いつかA級公認読手になって読唱席に立つことができる日が来たら、自分もあんな風に和装でこういう場に立ってみたい」
そういう「夢」をほんのりと抱きつつ、かるた活動を続けていくことになったわけです。

私は、小学校と高校の時に放送委員会に所属していました。アナウンスと朗読をやっていたので、人前で声を出すという事については一応の経験があります。そういう意味でも、読手という世界に入りやすい土壌はあったと言えるかもしれません。
昔取った杵柄で、読みをする前には何となく発声練習をしていました。周りからは「練習会の読みでわざわざ発声練習なんてするの?www」という目で見られていましたが「予め出しておかなければ声は出ない」というのは当たり前のことと認識していたので、自分ではそれがおかしい事とは思いませんでした。

やっていた発声練習は以下の通り。

・アイウエオ(母音)のロングトーン
・アエイウエオアオを50音全部回す
・アイウエオ→イウエオア→ウエオアイ→エオアイウ→オアイウエ・・・と入れ替えながら発生していくのを50音全部回す

声を張ること・口を回すことというのをとりあえずやっていたわけです。これは高校時代に毎日練習していた内容の一部でもありました。もう20年も前にやっていた事を今頃になってまたやるとは思っていなかったのですが、何でも経験しておくものですね。

読み方そのものについてはあまり情報が無かったため、まず最初にやったことは「ありあけから流れてくる読みを真似する」でした。真似から始めるというのはよくある形かと思います。
どこで伸ばすとかそういうのもイマイチよく分かっていなかったので、耳で聞いたものを手持ちの百人一首の本にメモするという非常にアナログな事をしていました。
そのうち、県外から来た人が読み方テキストの写しをくれたので、どこが伸ばしの位置なのか、どう読むのかの問題はその時に一瞬で解決しました(笑)

かるたを始めて2年ほど経ち、思い立って読手講習会に参加してみる事にしました。
読手講習会は「未公認の部・B級公認の部・A級公認の部」と部門が分かれているのですが、当然私が出るのは未公認の部です。録音したものを送った方が良さそうなので一応録音をしましたが、実はこの時、自分の環境の問題で試合の場での録音が出来る状況にありませんでした。そのため、とりあえず家で百首読んだものを送っています(出来るだけ、練習会等の場で読んだものを送った方が良いです)

講習会に参加すべく上京した私。会場にはいつもありあけでお世話になっている専任読手の先生方がそろっていらっしゃったので「ありあけの中の人がいる!すごーい!本物だー!」と、一人心の中で興奮していました(笑)
開会式を終えて各部門に分かれ、未公認の部を受講。私がいた方の班は録音を出している人が多くいたので、その時の講習では添削がメインとなっていました。
順番にあてられて、前に出て読みをしている。え、もしかして自分もコレやるの!?と急に緊張してきてしまいました。どうせ緊張するならさっさとやってしまえたら良かったのですが、残念ながら自分の順番がなかなか回って来ないので、プルプルしながら順番待ちをしていました。
結局回ってきたのはほぼ最後の方でしたので、緊張しすぎてその場の読みはあまりうまく出来ず「あれ~?録音の方が上手かったな~緊張した?www」と笑われてしまいました。

読みの内容については「余韻がうまくいかなくて・・・」と言ったら「あぁ、うん、余韻ヘタwwwww」とバッサリ。
でもまぁ全体としてはそこそこちゃんと読めているということで「余韻をちゃんと直したら録音送ってくれれば公認出してもいいよ」と言われました。

そこまで来てたんだから、この時点でもっと真剣に取り組むべきだったと思うのですが、その時に自分は「とりあえずどの程度なのか確認しよう」というくらいにしか思っておらず、そもそもこの時点では段位も持ってなかったりしたため「そのうちに公認目指せるような状態になったらチャレンジすることにしよう」と思ってしまい、その時点ですぐに向かわなかったのは、自分の中で非常に反省している点です。

講習会の後、専任読手の先生が声をかけてくださり、A級公認読手選考会を見学させて頂くことができました。自分よりも全然上のレベルの人たちがテストに臨んでいる様子を見て「こうなれる日は一体いつになるんだろうなぁ~いつの日かここに来れるような人になりたいなぁ~」と思ったものでした。

が、日常に戻り、会の存続のために何とかしなきゃいけないとか、みんなを差し置いて自分だけ自分のための事に取り組んじゃってるのもなんだかな、等々とやってるうちに、気が付けば2年という月日が経っていました。

「公認読手」という言葉が少し遠ざかってしまった私に転機が訪れる事になるのですが、それはまた次回のお話で。

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